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第2章
「楽しめば良いのに」
しおりを挟むこんな事だったら、転生したら〇〇だった、みたいな。
漫画とか小説で流行ってた話。もっと真剣に色々読んどきゃよかった。
さらっとしか見た事ないから、なんかほんと軽い知識が混ざり合ってて。
何の役にも立たない。
はーもう、今更遅いけどさ。まあ読んでても役に立たなかったかもしれないけど。
と、本当にとりとめのない事を、色々考えていたら、町長の所から、ルカとアランが揃って戻ってくるのが見える。
あ。……ルカ。
……何かあの2人って。
……ちょっと似てるかな。
背格好も、そうなんだけど。
よく分かんない自信に溢れてるとこ、とか。
なんか、人には惑わされない喋り方とか。
……あーいうのが、モテるのか。
………………まあ。分からなくはない、けど。
やっぱ、自信があるって、魅力的なんだろうなあ。
なんかお互い、初めて会ったと思えないような感じで、話してるし。
いいな。もともと同じ世界で生まれて、生きて来てる人達だしな。
「――――……」
…………って、オレの今の、何だ。
同じ世界で生まれてきたかったみたいな事、今普通に思ったような。
ああ、なんか。
さっきから、思考がよく分からない。
正直、今考えても分かんない事だから、
居られる限り、楽しく過ごせばいいんだって、分かってはいるのに。
大好きなRPGの世界。
――――……魔法とか。ワクワクするような事がいっぱいで。
冒険するって、ドキドキするし。
ミウは可愛すぎだし。
そう言うの全部、今だけだと思って、楽しみながら過ごすしか無いって、分かってるのに。
ルカとアランがすぐ近くに戻ってきて、3人と話してる。オレが座ってるベンチから2メートル位の所なので、話は全部聞こえてくる。
「アランが3、4人で良いって言うから、それだけ頼んできた。アラン今日から頼む。もっと人手欲しくなったら増やしてもらうし」
「了解ー。 オレの船の修理、この町の地下でやってるから。そこの端の階段降りたとこね。用があったら、入ってきてよ。とりあえず今から夜までは頑張るわ」
ああ頼む、とルカが頷くと、アランも頷いて、歩き去って行った。
「良かった、船出したくないって言わないのね、アラン。断られたらどうしようかと思ったわ」
リアがそんな風に言って笑ってる。
「まあ、ちょっとは嫌がってたけどな」
ルカがそんな風に言って、笑う。
あれちょっとだったかなあ?と思って、少し可笑しくなってしまう。
「ルカ、押し切ったの?」
キース、鋭い。大当たり。
――――……大体、ルカみたいな人、オレ、初めてだし。
絡む事自体、人生で初。
あんな、強烈な、オレ様キャラの王子なんかに、
可愛いとか。オレのとか。毎日言われまくるのも、当たり前だけど、初。
なんか、オレ男なのにとか、考える隙間もないのが、変だし、さ。
ねーミウ。
なんだかなーだよねー。
膝の上のミウをぐりぐりと撫でていると。
ゴウの声がした。
「で? オレらはどこ行くんだ?」
「……そうだな」
ルカの声が、ちょっと上の空。
不思議に思って、ミウからルカに視線を向けると。
オレを見てたルカと目があった。
?? 何、だろ??
何か言いたげな視線に、更に不思議に思っていたら。
「とりあえず周辺の町に飛んでみる?」
リアが地図のようなものを見ながらルカに言ったけど。
ルカは、返事をせずに、オレの方に歩いてきた。
「ソラ」
「……?」
椅子に座ってるオレを見下ろして、ルカはふ、と息を付いた。
「何変な顔してンだ、ソラ?」
え、と止まってしまう。
そんな変な顔、してないと思うんだけど、オレ。
「どうした?」
頭にでっかい手が乗って、ぐりぐり撫でられる。
「……ぐしゃぐしゃにしないでよ」
髪を乱されて、もうなんだか、笑ってしまいながら言うと。
笑ったオレを見て、ルカもふ、と、笑んだ。
「どこ行くか決めるから、来い」
手首をぐい、と掴まれ、その手の熱さに、
何でだか、ドキ、と、胸が弾む。
オレが何か色々モヤモヤ考えてたから。
心配、してくれたのかな……。
オレの手を引いて前にいるルカの背中を見つめる。
……オレが消えないように、
ずっと、掴んでて、くれないかな……。
なんか。
ルカが、掴んでてくれてたら。
離れずに、居られるような、気がしてしまう。
……そんなの、なんの、根拠もないけど。
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