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第2章

「空に浮いて」

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「とりあえず、町に戻るぞ。皆、アランを探してるから」
「ええ? そうなのか?」

 何かちょっと嫌だなと呟きながら、アランが町に向けて歩き出す。
 ルカとアランが並んで話してるので、オレは、その少し後ろを歩き始めた。

「ミウ、おいで」

 こっそり呼ぶと、ミウが腕の中にふわふわしがみついてきた。
 ああ、可愛い。モフモフ。

 ルカがどんなにむかつく時でも、ミウは可愛い。

 でもよく考えたら、ミウって、羽があるとかもなくて、ふわふわ飛んでるけど、それ魔法だって。……結構すごい子なんじゃ?


「ミウって、オレも連れて飛べるの?」
「みゃ」

 無理だよね。と思った瞬間。
 ミウがふわとオレの後ろに回ったと思ったら。

 オレの体が、突然、ふわっと、浮いた。


「ひえ」

 お尻の辺りからぞわっとする感覚。
 だ、だって急に、ふわっと浮いて。
 ミウ、オレに触ってないのに、浮いてて、正直、めっちゃ怖い。

 オレの声にばっと振り返ったルカとアランが、あー、という顔をしてる。

「……こ、こわ……」

 かなり高い所に居る。
 足も付かず、何にも触らず、浮いてるって。

 すごい恐怖。

 
「大丈夫だ、ソラ、お前位なら平気で」

「ミウ、怖い、離してっ」
「みゃ」

 オレが言った瞬間。
 浮いてた力がふと消えて、ひゅっと真っ逆さまに落ち――――……。

 う、わ。終わった。


「――――……っ……」



 ――――……。





「――――……あれ……?」



 衝撃はあったけど。
 ………痛くない。


 ………あれ??


 恐る恐る、目を開けると。
 オレはルカの上に乗っかってて。抱き止められていた。


「ルカ……?」
「――――……」

 受け止めてくれたの? あんなに高い所から落ちたのに?
 え、ルカ、大丈夫?


「……る、か?」
「――――……痛ってー……」

 ルカの声がして、オレと目が合うと、はー、とため息をつかれた。



「…………お前、ほんと馬鹿、ソラ……」

 グシャグシャ髪を撫でられる。


「離せとか言うから、ミウが離したんだろ。言わなきゃお前位全然浮いてられたのに……あー、驚いた……」

「ルカ、今、魔法、使った?」
「……ギリギリ、一番下で浮かせてから抱きとめた。間に合わねえかと思った」

「…………」

「間に合わなかったら、オレ、つぶれてたからな、馬鹿ソラ」


「………………っ……ごめん」


 うううー。でもよかった。つぶれてなくて。

 安心したら、
 ボロボロ涙が溢れ落ちてくる。

 
 ――――……間に合わないかもしれないのに、下に入ってくれたんだ、ルカ。
 



「泣くなよ。何だよ?」
「……びっくりした。ルカ、つぶれちゃったかと」

「だからあと一歩でぺちゃんこだっつの」
「………………っっ」


 ううぅ。
 泣いてると、ぐい、と頬を挟まれて、あーん、と口が開けさせられて。


「ん、ぅっ……」


 ただでさえ泣いてて呼吸が足りてないのに、めちゃくちゃ深くキスされて。
 明らかに酸素不足。

 もう起き上がってるルカに抱き締められてキスされて。
 離されても、ぐったりしてると。


「ほんとあんたら、ずっとイチャついてんなあ」

 くっくっ、とアランが笑う。

 ……居るの忘れてた。
 ぁ、と、ルカにもたれたままアランを見上げると。


「かーわいい、顔して。ソラ」

 オレの頬に、ぷに、とアランが触れる。



「ソラに触んな」


 ぴし、とルカがその手を弾いて、オレを腕の中に引き込んだ。



「あ。ミウは?」

 空を探すけど、ふと、後ろに浮いてる事に気付いた。


「あ、ミウ」

 ミウは、なんだかしょんぼりしてる。



「お前が離せとか言うから離したんだからな」
「ごめんね、ミウ、大丈夫だから……」


 ぎゅう、と腕の中に抱き締める。



「ソラは飛べないからな。次から離すなよ?」


 ルカが笑いながらミウをぐりぐり撫でた。







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