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第2章

「ルカのバカ」

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「まあ何か海に居るなら、退治してくれたら、漁も行けるようになるしさ。協力はしたいんだけど……つか、今オレの船、修理中でさ」
「修理?」

「しばらく漁に出れなそうだから、色々部品外してメンテナンスしててさ。かなり分解してるんだよね」

「……それ、どれくらいかかる?」
「どうせ漁にも出れないし、ゆっくりやろうと思ってて。7日位を見てたけけど」
「7日? 長すぎるな」
「それ位経てば、波を起こしてる何かも、どっかいかねえかなーと期待してたんだけど。女の子達と遊びながら、ゆっくり直そうかなーと」

「その7日間、1人でやるつもりだったって事だろ? 他の奴らに手伝わせるとして、どんだけ縮められる?」

「――――……2日縮めて、5日間、かなあ」
「たいして縮まねえな」

「手伝って貰える事はあるけど、オレの船は基本、オレが全部やりたいから」
「――――……」

 拘りもって仕事してる人、なんだな。
 ルカも、そう思ったのか、それ以上は言わなかった。


「分かった、じゃあ5日間はここ拠点にして、周辺の町見回りながら、お前の船を待つ。でいいか」

 ルカがそう言うと。
 アランは少しの間黙って。

「――――……あのさ」

 と言った。

「何だ?」
「オレ、まだ、船出すとは言ってないんだけど」

「は? 出さねえの?」
「――――……」


「お前の船でしか出れないって、言われてんのに、出さねえって選択肢あんのか?」



 ルカっぽいせりふだなあ……。


 ルカのまっすぐな言葉は。
 なんか。

 強い。


 アランは、しばし黙って、ルカを見つめていたけれど。
 ふと、苦笑いを浮かべた。



「……分かった、出すよ。 転覆しても、文句言うなよ」
「転覆したら、そこは魔法で海岸まで戻るから大丈夫」

「魔法で海に飛んできゃいいじゃん」
「5人魔法で飛ばして、どんな相手かも分かんねえ奴と、魔力無しでとか、そんなリスク負えない」
「オレの船のリスクは?」
「最大限回避しろよ」

「……もし転覆したら、オレの船、どーしてくれんの」
「作り直す金と人手は出してやるよ」

 ふ、とルカが笑って言う。

 アランは、ふかーくため息をつきながら、不意にオレを見た。


「……この王子、いつもこんな?」
「……多分」

 まだそんなに長く一緒に居る訳じゃないから、いつもと聞かれると、微妙なんだけど……。

「多分て?」
「まだ数日しか一緒に居ないから」

「へえ、そうなんだ……でも、大体こんな感じなんだろうな」
「うん。大体そうだと……」

 なんか顔を見合わせている内に、可笑しくなってきて、アランと、ぷ、と笑いあった瞬間。

 ぐい、と首に回ってきた手に引き寄せられて、ルカに背中を密着させられる。


「お前は、誘われた相手に、近づくな、馬鹿ソラ」


 言い放たれる一言。
 一瞬にしてムカムカが湧きおこる。


「――――……っ」


 別に今は、何もあやしい話してないじゃんかっ!

 ……つか、自分はほんとに女の子とし放題だったみたいだし!!
 ……っ分かってたけど!!

 ルカのバカ……!


 ルカに抱きかかえられたまま、
 むー、と怒ってるオレを見て、アランは、クッと笑い出す。



「ソラ、お前、なんか大変そうだな」


 クスクス笑い続ける。


 どういう意味で言ってるんだか、分かんないけど。
 確かに、なんか、オレって大変な気がするような。



「大丈夫、オレ、女の子の方が好きだから。王子、安心してよ」


 安心ってなんだよ、もうっ。
 初めて会った人に何いわれてんの、これ。

 ルカは一体何を心配してんだよ、


 ルカがいつもいつもこんな風に隣に居る状況で。

 オレが、初めて会った、ルカ以外の人と。


 ほんとにそんなこと、すると思ってんの??



 ルカのバカ、ルカのバカ。




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