67 / 299
第2章
「何でだろう」
しおりを挟む「泣き止んで、ソラー、はい、タオル使ってー」
リアが、タオルを差し出してくれるので顔を覆う。
ひし、と何かが腕にしがみつくので、少しだけ顔を上げると、ミウがしがみついてた。
「……大丈夫だよ」
ミウに言って、涙を拭いてると。
「何だ?……どーした?」
3人で少し離れて海の方を見ていたのに、いつの間に近くにきてたのか。ルカの声がして。
かと思ったら、ぐい、と頭を掴んだ手が、オレを、ルカの方に引き寄せて。
胸に頭、押し付けられて。そのまま肩を抱かれた。
「何泣いてンの、お前」
クスクス笑うルカ。
「こいつどーしたんだ、リア?」
「あー……のー……ちょっと、色々話してたら……」
「ふうん……?」
リアの言葉に、よく分からなそうな声を出しながら。
でも、ま、いっかと思ったみたいで。
「リア良いぜ、引き受ける」
ルカの笑みを含んだ声が聞こえて、肩を抱く手に力がこもる。
「うん、ごめんね、よろしく。ミウ、ちょっとおいで~」
リアはもう、ルカに任せる事にしたらしくて、ミウを抱っこして連れたまま、ゴウとキースの所に歩いて行ってしまった。
「つか、ほんと、何泣いてんだ、ソラ。しかもリアの前で」
ふ、と息をつきながらの、声。
ぐい、と顎を掴まれて、上向かされる。
「――――……泣くのは、ベッドの上だけにしろよ?」
「……っ」
「……襲うよ? ここで」
「――――……っっっ」
とんでもない事囁かれて、途端に涙、引っ込んだ。
「はは、泣き止んだ。 面白ぇな、お前」
クックッと笑いながら、よしよし、と頭をぐりぐりされる。
タオルを取られて、顔をめっちゃ拭かれて。
また上げさせられて、泣き顔、しみじみ見られて。
「――――……泣くなよ、馬鹿ソラ」
ふ、と目を細めて、見つめてくる。
綺麗な、青い、瞳。
――――……じっと見つめてると、胸が、痛い。
知らない感覚で、思わず首を傾げた。
「……オレ、ね」
「うん?」
「ルカって、さ」
「ああ?」
「…………偉そうだし、勝手だし、意地悪だし、意味わかんないし、すぐエロいことするし……って、ルカのこと、思ってたんだけど」
「あ?」
じろ、と、睨まれるけど。
でも、それ以上何も言わないので、そのまま、話を続けることにした。
「――――……なんか……良く分かんないけど……ここにいる、間は」
「――――……」
「ルカが、オレと居たいと思ってくれてる間は……」
ルカを見上げて、まっすぐ、見つめて、自分の中の気持ちを整理する。
なんか、よく分かんないけど。
ほんとに偉そうで、Sっぽくて、意地悪で、からかってばっかで、エロくて、なんか……ほんと……ゲームの主人公としては、どーなのって感じなキャラだけど。
でも、年下なのに、なんかすごく、頑張ってて、強くて、逞しくて、たまにちょっと優しくて、ふと気づくといつも、そばに居て、オレに触れてる、この勇者が。
――――……なんか、嫌いじゃなくて。
「……ルカと、ずっと、居るから」
そう言ったら。
ルカは、ふ、と瞳を細めて、微笑んだ。
「何今更。……ずっと居ろって、最初から言ってるだろーが、オレ」
そういえば。
そうだった気もする。
「……そういえば、それって、何で?」
疑問をそのまま口にしたら。
ルカはふと止まって。さあ?と首を傾げた。
「なんでだろうな? よく分かんねえ」
「――――……」
「つかお前のオレの評価って、なんな訳」
「あ。ごめん……つい、正直に……あ」
失言続く自分の口を塞いでいると。
ルカが苦笑い。
「じゃあ、お前は何で、そんなオレの側に居るとか言ってんの?」
「…………さあ。……なんでだろ?」
よく分かんないけど。さっきリアの話を聞いてた時。
……オレを抱いて寝てる時のルカの顔が浮かんで。
――――……ちょっとだけ可愛い、年相応の顔して寝てるルカの顔。
……少し、安心して、寝てくれてたのかなあ。とか。
……ちょっと、浮かんじゃったんだよね。
「?」
なんか急に影が出来て、上を向いたら。
キス、された。
「……っ」
皆、すぐ、そこに居るのに。
キスが離れても、びっくりしたまま、ルカを見つめていたら。
ふ、と笑まれる。
「……行くぞ、ソラ。とりあえず町に行って、船出せるか聞くから」
「あ、うん」
「お前、船酔い――――……しそうだなー」
根拠もないのに、勝手に想像して、笑ってるし。
「しないし!……多分」
「多分かよ……」
クッと笑い出すルカ。
海に船で出た事って、記憶がない。
湖の遊覧船とは違うかな??
……違いそうな気がする。
酔い止め薬とか…… うう。無さそうだけど。
「ほら。来い」
腕を引かれて。
ん、と頷いて、皆の所に向かって、ルカと一緒に歩き出した。
123
お気に入りに追加
4,652
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
総長の彼氏が俺にだけ優しい
桜子あんこ
BL
ビビりな俺が付き合っている彼氏は、
関東で最強の暴走族の総長。
みんなからは恐れられ冷酷で悪魔と噂されるそんな俺の彼氏は何故か俺にだけ甘々で優しい。
そんな日常を描いた話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる