67 / 296
第2章
「何でだろう」
しおりを挟む「泣き止んで、ソラー、はい、タオル使ってー」
リアが、タオルを差し出してくれるので顔を覆う。
ひし、と何かが腕にしがみつくので、少しだけ顔を上げると、ミウがしがみついてた。
「……大丈夫だよ」
ミウに言って、涙を拭いてると。
「何だ?……どーした?」
3人で少し離れて海の方を見ていたのに、いつの間に近くにきてたのか。ルカの声がして。
かと思ったら、ぐい、と頭を掴んだ手が、オレを、ルカの方に引き寄せて。
胸に頭、押し付けられて。そのまま肩を抱かれた。
「何泣いてンの、お前」
クスクス笑うルカ。
「こいつどーしたんだ、リア?」
「あー……のー……ちょっと、色々話してたら……」
「ふうん……?」
リアの言葉に、よく分からなそうな声を出しながら。
でも、ま、いっかと思ったみたいで。
「リア良いぜ、引き受ける」
ルカの笑みを含んだ声が聞こえて、肩を抱く手に力がこもる。
「うん、ごめんね、よろしく。ミウ、ちょっとおいで~」
リアはもう、ルカに任せる事にしたらしくて、ミウを抱っこして連れたまま、ゴウとキースの所に歩いて行ってしまった。
「つか、ほんと、何泣いてんだ、ソラ。しかもリアの前で」
ふ、と息をつきながらの、声。
ぐい、と顎を掴まれて、上向かされる。
「――――……泣くのは、ベッドの上だけにしろよ?」
「……っ」
「……襲うよ? ここで」
「――――……っっっ」
とんでもない事囁かれて、途端に涙、引っ込んだ。
「はは、泣き止んだ。 面白ぇな、お前」
クックッと笑いながら、よしよし、と頭をぐりぐりされる。
タオルを取られて、顔をめっちゃ拭かれて。
また上げさせられて、泣き顔、しみじみ見られて。
「――――……泣くなよ、馬鹿ソラ」
ふ、と目を細めて、見つめてくる。
綺麗な、青い、瞳。
――――……じっと見つめてると、胸が、痛い。
知らない感覚で、思わず首を傾げた。
「……オレ、ね」
「うん?」
「ルカって、さ」
「ああ?」
「…………偉そうだし、勝手だし、意地悪だし、意味わかんないし、すぐエロいことするし……って、ルカのこと、思ってたんだけど」
「あ?」
じろ、と、睨まれるけど。
でも、それ以上何も言わないので、そのまま、話を続けることにした。
「――――……なんか……良く分かんないけど……ここにいる、間は」
「――――……」
「ルカが、オレと居たいと思ってくれてる間は……」
ルカを見上げて、まっすぐ、見つめて、自分の中の気持ちを整理する。
なんか、よく分かんないけど。
ほんとに偉そうで、Sっぽくて、意地悪で、からかってばっかで、エロくて、なんか……ほんと……ゲームの主人公としては、どーなのって感じなキャラだけど。
でも、年下なのに、なんかすごく、頑張ってて、強くて、逞しくて、たまにちょっと優しくて、ふと気づくといつも、そばに居て、オレに触れてる、この勇者が。
――――……なんか、嫌いじゃなくて。
「……ルカと、ずっと、居るから」
そう言ったら。
ルカは、ふ、と瞳を細めて、微笑んだ。
「何今更。……ずっと居ろって、最初から言ってるだろーが、オレ」
そういえば。
そうだった気もする。
「……そういえば、それって、何で?」
疑問をそのまま口にしたら。
ルカはふと止まって。さあ?と首を傾げた。
「なんでだろうな? よく分かんねえ」
「――――……」
「つかお前のオレの評価って、なんな訳」
「あ。ごめん……つい、正直に……あ」
失言続く自分の口を塞いでいると。
ルカが苦笑い。
「じゃあ、お前は何で、そんなオレの側に居るとか言ってんの?」
「…………さあ。……なんでだろ?」
よく分かんないけど。さっきリアの話を聞いてた時。
……オレを抱いて寝てる時のルカの顔が浮かんで。
――――……ちょっとだけ可愛い、年相応の顔して寝てるルカの顔。
……少し、安心して、寝てくれてたのかなあ。とか。
……ちょっと、浮かんじゃったんだよね。
「?」
なんか急に影が出来て、上を向いたら。
キス、された。
「……っ」
皆、すぐ、そこに居るのに。
キスが離れても、びっくりしたまま、ルカを見つめていたら。
ふ、と笑まれる。
「……行くぞ、ソラ。とりあえず町に行って、船出せるか聞くから」
「あ、うん」
「お前、船酔い――――……しそうだなー」
根拠もないのに、勝手に想像して、笑ってるし。
「しないし!……多分」
「多分かよ……」
クッと笑い出すルカ。
海に船で出た事って、記憶がない。
湖の遊覧船とは違うかな??
……違いそうな気がする。
酔い止め薬とか…… うう。無さそうだけど。
「ほら。来い」
腕を引かれて。
ん、と頷いて、皆の所に向かって、ルカと一緒に歩き出した。
83
お気に入りに追加
4,600
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
身代わりになって推しの思い出の中で永遠になりたいんです!
冨士原のもち
BL
桜舞う王立学院の入学式、ヤマトはカイユー王子を見てここが前世でやったゲームの世界だと気付く。ヤマトが一番好きなキャラであるカイユー王子は、ゲーム内では非業の死を遂げる。
「そうだ!カイユーを助けて死んだら、忘れられない恩人として永遠になれるんじゃないか?」
前世の死に際のせいで人間不信と恋愛不信を拗らせていたヤマトは、推しの心の中で永遠になるために身代わりになろうと決意した。しかし、カイユー王子はゲームの時の印象と違っていて……
演技チャラ男攻め×美人人間不信受け
※最終的にはハッピーエンドです
※何かしら地雷のある方にはお勧めしません
※ムーンライトノベルズにも投稿しています
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる