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第2章
「涙が」
しおりを挟む「この世界、いつからあるのか知らないけど。あたしが物心つく頃には、もう魔王は居て、魔物も居て、今よりずっと危険で、町も、今みたいに暮らしてはいられなかった。いつ誰が死ぬか分かんなかったし」
「――――……」
「ルカが成長して、広く結界を張れるようになって……とにかく町だけでも、多少の魔物なら入れなくしてくれた。それで町が、少しずつ整って、人も育って、戦う武器も使える人が増えて、町の外を行き来できる人も少し増えて――――……町同士のやり取りもできるようになったり」
「――――……」
「ルカを、助けようと思ってる人はいっぱい居るの。ひいては、自分の故郷とかを守ろうって、皆頑張ってて」
「――――……」
…………ゲームで、知ってはいた、気がするけど。
さらっとした説明を読んだり、さらっとしたセリフで別に実感もなく、通り過ぎて。
なんだか。
――――……リアにこうして聞くと、全然違った。
「ルカは、いっつもあんな感じだけど――――……でも、いつも、広く、皆を見てるし。助けてくれようとしてる。だから、皆、ルカについてくし。協力しようとする。 まあ、だから、モテるのは当たり前でさ」
「――――……うん」
「……今から話すこの話、内緒にしてくれる?」
「?……うん」
少し間を置いて、リアが静かに話す。
「モテるんだけど。どんな女の子を相手にする時も、完全に気を許しては無かったと思うんだよね。そう言うことする時って無防備でしょ、やっぱりさ。……魔王に協力する人間も居るし、人間に変身できる魔女とかも居る。 ルカが、もし死んじゃったら――――…… 結界も弱まるし、きっと元どおりの世界になっちゃうから、いつでも、ルカは気を張ってるし」
「――――……」
「……ソラはさ。この世界の人じゃないんでしょ?」
「――――……うん」
「それもいいのかも。 気を許せるんじゃないかなあ。 ルカを狙う事はないって。ルカ、思えるんじゃないかな」
「――――……」
「あと。 ミウに懐かれてる、こんなポワポワした子、疑う必要もなくて、きっと、すごく安心してるんだと思うよ?」
「……リアたちの事は信頼してるよね?」
「まあ、そこはね。 信頼はしてくれてるけど、安らげるかとか。そことはまた別の話でしょ?」
「――――……」
「……最初は気まぐれでちょっと気に入ったってだけだったのかもしれないけど、ソラと居て、楽しそうなルカを見てると。ちょっとよかったなあって、思っちゃう。まだ18なのにさ。大人に混ざって、大人よりも偉くて。最終判断は、全部ルカだしさ。 背負ってるものが大きすぎて、可哀想だなって思ってたから。……まあ、ソラにとっては、大変かもしれないけ……っ???」
「――――…………」
あ。もうだめだ。
ぼたぼたぼたぼた。
さっきからずっと耐えていたのだけれど。
涙が、勝手にあふれ出してきて。
次々、零れ落ちて行った。
「きゃ、何、ソラ」
リアがあわあわしだした。
「――――……っ……」
いっつも偉そうで。
……強気な発言ばっかで。
でも。疲れないはずないのに。
オレ18の時なんて、受験なんとなくクリアして、何となくサークル入って、バイトして、なんとなく彼女居て、ただなんとなくゲームとかしながら、何となく、生きてた。
…………ルカはいま、強そうだけど。逞しいけど。
……努力して、ああなってるんだと。思って。
――――……よく分かんないけど。
涙が止まらない。
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