64 / 299
第2章
「皆で朝食」
しおりを挟む店に着くと、ゴウがオレとミウを見て、可笑しそうに笑った。
「おー、ソラ。ガキどもすげーいっぱい居たな」
「あは。ミウ、大人気みたいだね」
オレがそう言いながら、ゴウの隣に座ると、オレの隣にルカが座った。
「ミウは、この世界で一番人気がある魔物じゃないかな。普通魔物って怖がられるけど、ミウだけはね」
キースも、ふ、と笑いながらそう教えてくれる。
「見てると癒されるもんね」
リアもクスクス笑いながら、オレの膝に居るミウを見てる。
「ね、リア、この子も、リアの魔法で飛べるの?」
「飛べるよ。ただ、あたしの魔法の範囲内に居てくれないと飛べないから、ソラが抱っこしてるなら大丈夫。あんまり高い所を浮かばれてたら、無理だからね」
「分かった」
なるほどー、と納得してると、ルカが「ソラ、ほら」と、オレの口に何かを近づけてくる。
「ちょっと辛いけど、うまい」
自然と口を開けて、もぐ、と口に入れる。
「……わ。辛い! 何これ」
「そこまでじゃねえよ」
クッと笑ってるルカ。
「……っそこまでだよっ」
何これ何これ。
「辛……っっ」
辛すぎて咳まで出てくる。
けほけほしてたら、ルカはぷ、と笑って、水を差し出してきた。
「弱いのか? 辛いの。そこまで辛くねえけど」
「辛さによるけど……これはすごい辛い……」
「そうか? うまいけど」
言いながら、それを平気な顔でモグモグ食べてる。
意地悪したのかと思ったら、辛さに強いだけか。
ルカの鈍感……。
あ、涙出てきた。もう。
その瞬間。オレの膝に座ってたミウが、ふわと浮いて。
ぺろ、とオレの涙を舐めた。
「――――……」
驚いてミウを見つめると。
「みゃ」
と、めっちゃ可愛い顔してオレを見つめる。
ずきゅーーーん。
もう、心臓撃ち抜かれた感じ。
「可愛すぎー! ミウー」
むぎゅ、と抱き締めてると。
――――……ルカがオレの頬を摘まんだ。
「お前あんまりミウミウ言ってると」
「え」
「……ミウ置いてくぞ」
「えっ」
ルカのその言葉に、他3人はぷっと笑ってる。
「ミウに妬いてるみたいだね」
「マジか、ルカ」
「絶対マジよね、やばいわね、あれ」
キースとゴウとリアの声が聞こえて、ルカが少しキツめの視線を向けてる。
「ミウ置いてくとか言わないでよ」
そう言ったら、ちら、と振り返られた。
「……置いてったらどーする?」
「…………オレも置いてって」
「――――……無理」
はー、とため息をついて、ルカがオレを見下ろす。
「離れたら守れねーだろ」
「――――……」
守れないから、離れない。
咄嗟にそんな事言う位は、守ってくれる気、あるんだなーと。
ルカをじっと見つめてしまう。
「もういいからお前もミウも、飯食え」
「うん」
自分も食べながら、ミウにも食べさせつつ。
「なんかさ、ミウの名前つけた方がいいのかなと思ってたんだけど……」
「ん」
「ミウ、が一番似合うから、もうミウでいいのかなあ? 呼ぶと返事してる気がするし。 良い? ミウ?」
「みゃ」
返事してるんだかは分からないけど、みゃ、と言ってしがみついてくる。
「それでいいかなあ?」
ルカ達の方を見て、聞いてみると、皆、いいんじゃない?と笑んでる。
「もうお前ずーっとミウミウ言ってるしな」
ルカもそう言って笑ってる。
「じゃあ、ミウで」
よしよし、とミウを撫でると。
嬉しそうにしてる。めっちゃ可愛い。
「ルカ、今日はどこに行く?」
キースがそう言うと、ルカは少し考えてから。
「ああ――――……今日は海の側の町」
そう言った。
「シャオの町?」
リアが聞くと、ルカは頷きながら、食事を進める。
「あぁ。なんか、話聞いてる時、魚の獲れる量が激減してるって話も聞いたから。海に何か居るんじゃねーのか?」
「なるほど」
「海の魔物かー。船出すことになるかな」
「ちょっと面倒だね」
「まあ、町で船借りて――――……」
皆のそんな会話を聞きつつ、オレはミウとほのぼの食事をしていたのだけれど。ふと気になって。皆の会話が一通り終了してから、ルカを見上げた。
「あのー……」
「ん?」
「オレは今回は……?」
「――――……」
恐る恐る聞いたのだけれど。
「連れてくに決まってるだろ」
ルカがニヤ、と笑って言いきる。
ちーん……。
……まあ。薄々は気付いてました。うん。
落ち込んでるオレを見て、皆は、苦笑いしてる。
「またソラを奪ってくれたら、ルカが一太刀で終わらせてくれるかもな」
ゴウが面白そうに笑う。
「やだよ。 一回死んだみたいな気持ちになるもん。無理」
そう言うと、皆、可笑しそうに笑ってる。
なんか、このメンバーでの食事風景も、なんだか当たり前のみたいに、見慣れてきたなあ、なんて思う。
はー。
海の魔物かー。
…………タコとか? イカとか??
くじらとかみたいなのだったらどうしよう。
……うぅ。ドキドキしてきた。
112
お気に入りに追加
4,632
あなたにおすすめの小説
俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
ある日、人気俳優の弟になりました。
樹 ゆき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?
麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる