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第2章
「ミウ大人気」
しおりを挟むルカと一緒に宿屋の前に出ると、ほんとに子供達をいっぱい引き連れて、ミウがフワフワ浮いていた。子供たちが、頭上で浮いてるミウを、一生懸命見上げている感じ。
「ミウ」
なんか可愛くて、そう呼びかけると、ミウは「みゃ?」とこっちを見て、オレと目が合うと、ふわふわーと近づいてきて、オレの腕の中に、ほわん、と入り込んできた。
「何それー! すっげー可愛いー!」
「いいなーお兄ちゃんのミウなの?」
「どうやったら懐いたの?? えさあげたとか??」
オレの腕にひっついてるミウを撫でながら、子供達がめちゃくちゃ迫ってくる。
「え。どうやって??」
……どうやってって。
外でルカに、……とんでもないことされてたら。上を飛んでて。
終わって、キスされながら、探してたら、ふわふわと、降りてきて……。
――――……とてもじゃないけど、こんな、キラキラした瞳の子供達に、こんな事、言えない。
「どうやってとか、ない、かなあ…… ふわふわ、腕の中に入ってきたんだよ」
うん。嘘は言ってない。
そうだったよね。
特に何もしてないんだよな――――……。
そう言うと、リアがクスクス笑いながら、子供達に笑顔で言った。
「ミウは、優しい人に懐くから、君たちも、良い子で優しい子に育てば、いつか、懐いてもらえるかもよ?」
そんな風に言われると、ちょっと恥ずかしいけど。
「へーーーーー!」
「そうなんだー!」
「お兄ちゃん優しい人なんだねー!」
「あたしも優しい人になるー!」
……ああ、子供って。
素直だなあ。
「ねえ、お兄ちゃん、このミウの名前はなあに?」
元気な男の子がそう聞いてくる。
「まだ名前は決めてないんだ」
そう答えると、子供達、これから決めるんだね、とウキウキしてる。
名前やっぱりあった方がいいのかな……とオレが思ってると。
「お兄ちゃんもミウもこれから朝ごはんだから、皆おうちに帰って」
リアがそう言うと、子供達、はーいと、良い子な返事をして、帰って行った。
リア、子供の扱い、うますぎる。
「ありがと、リア」
「いえいえ~。ゴウたち、先に食べてるとか言ってたから、宿引き払ってきて。食べ終わったら町長に挨拶して、そのまま次の町に行こうって」
「うん。分かったー」
リアが先に歩いて行くのを見送ってから、くるっと振り返った。
「――――……思ってた以上に引き連れてきてたな」
宿屋のドアの横に背中を預けたまま、オレ達の様子を見ていたルカが、クスクス笑った。
「うん。ミウって。大人気なんだね」
「――――……まあ。可愛いからな」
そんなルカの言葉に、おや?と思わず見つめてしまう。
「ルカも、ミウの事、可愛いって思うの??」
「まあ。そのフォルムは、可愛いと思うだろうって事だけど」
「ルカはどう思ってるの?」
「まあ……可愛いんじゃねえの」
ふ、と笑いながらルカがそう言う。
「わー、意外。ルカも、可愛いって思うんだー、へー」
ルカみたいな奴でも、可愛いって思うんだー、へー、へー、
意外ー。
まあ。……めちゃくちゃ可愛いもんね、うんうん、分かる。
腕の中のにひっついてるミウを、よしよしと撫でていたら。
ふと思いついて。
「抱っこしたかったらいつでも言って、撫でてもいいよ、可愛がっていいよー? ……似合わないけど。ぷぷ」
なんて言って、クスクス笑っていると。
ルカにぐい、と引かれて。とん、と壁に背を押し付けられた。
え、と見上げたら。
「――――……っ……っ?」
そのまま、キスされて。驚いてる間に、舌が、ゆっくり絡んで。
びっくりして、ルカを見つめていると。
そっと唇が離れた。
「――――……オレは、お前抱く方が良い」
「…………っミウの真上で何するんだよっ」
「……ん? どーいう意味?」
「こんな可愛い、純粋な子の真上で、こんな……」
「……ミウって超長生きらしいし、こういう事知ってるだろうし大丈夫だろ。まあそいつが何才かは分かんねえけど。大体、最初にミウ見つけた時だって、オレ達――――……」
「わーわーわー!! ルカのバカ―!! デカい声で話すなー!」
ミウの耳を塞ぎながら叫ぶと。
ルカが、クックッと体を揺らして笑い出した。
「お前、ほんと面白……ちょっとオレ荷物取ってくるから、待ってろ」
オレの頭をぐりぐり撫でながら。
クックッとまだしつこく笑いながら、宿屋の中に、ルカが入っていく。
もう。
ルカのバカ!
……にしても、超長生き、なんだ。
こんな感じでのどかに長生きするのかーと思うと、それだけで可愛い。
……でも分かんないよね、このミウは、子供かもしれないし。
「ミウ」でも良いけど… 可愛いんだけど。
「……お前の名前、どうしようか? オレが決めてもいいのかな??」
そう話しかけると、ミウは、みゃ?とオレを見上げる。
ああ、もう、可愛いなぁ。
ルカが来るまでの少しの間、2人で見つめ合ったまま、過ごしてしまった。
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