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第2章
「単純?素直?」
しおりを挟むルカと、ミウと一緒に、歩いて町に戻ると、もう暗くなっていて。
リアとキースとゴウが、ちょうど宿屋から出てきた所だった。
「あれ、ソラ! それって、ミウ??」
「うん。めちゃくちゃ、可愛くて……」
「可愛いわよねえ、でもレアなのよ。高い空を、結界張ってプカプカ浮いてるから、捕まえる事も出来ないし、気に入られない限り、人の近くには来ないし」
「へえ。気に入られたんだな、ソラ。すげえひっついてるし」
ひし、としがみついたままのミウを、3人が覗き込んでくる。
「ほんと。ミウに気に入られるとか、すごいね、ソラ」
キースがそんな風に言うので。
さっきのルカの、「すげえ単純な奴が好きなんだよな」というセリフがよみがえって、キース、それは嫌味なのかな?? でもルカじゃあるまいし、そんな言い方するかなあ?と思ったら。
「ほんとよねー。素直で良い子って事よ、ソラ」
「……ん?」
なんか大分、言い方が違う。
「リア?」
「うん?」
「ミウが懐くのって、どんな人?」
「ミウが喋る訳じゃないから、こういうタイプってしか分かってないけど……大体、素直な優しい人だよ」
「……すげえ単純、じゃなくて?」
「「「ん?」」」
3人とも、同じタイミングで首を傾げて。
すぐにルカを振り返った。ルカが面白そうな顔をして、何も悪びれず、こっちを見て笑ってる。
「すげえ単純って……ルカ……」
「大分言い方が違うな」
「さすがルカだな」
リアとキースとゴウが皆、ぷぷ、と笑いながらそう言って。
リアがクスクス笑いながら、オレをよしよし、と撫でる。
「良い人の証明みたいなものよ、ミウに懐かれるのは。ミウ連れてるってことは、めちゃくちゃ良いイメージだからね。ルカがからかっただけよ」
「むーーーーーーー」
ほんと、ルカむかつく。
「素直も単純も、一緒じゃねえの?」
「……全然違うけど。 しかも言い方も、めっちゃ単純って言ってたじゃんか」
「単純じゃん、お前」
クスクス笑いながら、今度はルカにくしゃくしゃ撫でられる。
「くー……」
ムカつくーー。
――――……けど。
ミウは可愛い。
ミウが居れば、どんなにムカついても平気かも。
一瞬で癒されちゃう。
あー。可愛い……。
撫でてると、ぷ、とルカが笑いながら、オレの頭を離した。
「町長の家行こうぜ」
ルカが言って歩き出す。ルカの隣にゴウとキースが並んで、オレの隣にリアが来た。
「可愛いねー、ミウをこんなに近くで見るの、初めてかも」
「うん。可愛い」
「飼うの? ソラ」
「うん」
「ルカ、良いって?」
「うん」
「へえ。そうなんだ」
リアが、ふふ、と意味ありげに笑う。
「? 何??」
「ルカ、あんまりペット飼うのとか好きじゃないんだけどなーと思って」
「え?」
「前にさ、野生の動物があたし達についてきた事があって。その時は、結局近くの町に飼ってもらえたんだけどね。その時ペットの話になってさ」
「うん」
「ほら、あたし達戦うでしょ? いつ何があるかも分かんないから、いざという時残すのも可哀想だし。ついてくるのも邪魔になるし、みたいな。そんな事前に言ってたからさ。まあミウは結界張れるから、自分の身は守れるかもしれないけど……」
「……邪魔……」
でもたしかに。
戦う皆には、邪魔かもしれない。
オレは、可愛くて、フワフワしてて、ただ飼いたいとか言ってしまったけど。
よく考えたら軽く飼って、オレが居なくなったら、寂しくなっちゃうかな……。
「あ、ごめん、ソラ、気にしないで? ルカが良いって言ったなら良いんだよ」
クスクス笑いながら、リアが言う。
「皆には邪魔にならない?」
「うん。あたしは全然。ていうか、ミウって、危険だったら結界張って、すごい空高く飛ぶしね。ルカが良いって言ったなら良いんだよ。ミウなら1人になっても生きていけるしね」
「……うん。ありがと、リア」
頷くと、リアは、ふふ、と笑った。
「あたしはミウを近くで見れて、すごく嬉しい」
よしよし、とミウを撫でるリア。
……なんか、オレを撫でる時と、完全に一緒だな、なんて、ちょっと苦笑いが浮かんでしまう。
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