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第2章

「湖綺麗」

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 無事に魔物を倒した報告をしに、町に戻る事になった。
 リアの魔法で飛んでくれたから、帰りは楽ちん。

 魔法って便利だなあ。
 ほんとオレも使いたいなあ。
 特訓すれば、使えるようになるかなあ。


 町長の家を訪ねて、皆で報告をした。オレは、なんとなくくっついて横に居ただけだけど。

 ものすごい感謝されてて。
 夜、宴席を設けさせてほしい、と町長が言った。

 最初は次の町にと言ってたルカ達だったけど、ぜひと言われて、まあ今日は登山疲れたし、休むか、という事になった。

「あたし疲れたから、宿に行って、夕方まで寝てくる」

 リアがそう言うと、ゴウもキースもそうすることにしたらしく。

「ルカとソラはどうする?」

 聞かれて、オレがルカを見上げると。
 ルカはオレを見下ろして、じっと見つめた。

「――――……お前、寝たい?」
「ううん、眠くはないけど」

 まあ。疲れたけど。
 ていうかベッド行ったら寝るより、ルカに何かされそうな……。
 

「じゃあ――――……付き合え」
「ん、どこに?」

「少し歩いたとこ」
「? うん」

 3人と別れて、町を出て、しばらくルカと一緒に歩く。

 たまに魔物は出るけれど、ルカが一瞬で切り伏せる。

 ほんとに強いよなー……。

 オレがめっちゃイベントさせて、鍛えたから??
 どうなんだろう、このルカは、オレが鍛えたルカなんだろうか??

 もう、どこまで行っても確信は得られない問いなので、
 考えない事にして、ルカの隣を歩く。


「どこ行くの、ルカ」
「つくまで秘密」

「――――……」

 何だか楽しそうなので、黙ってついてく事にする。
 
 しばらく歩いて、木々の下を進んだ先に。
 ぱっと開けたのは。

「うわー! すっごい、綺麗! 何ここ」
「湖」


 キラキラと光る水面。

 眩しくて少し目を細める。めちゃくちゃ綺麗で、驚く位。


「湖? でっかー! 海みたい」

 水際まで近づく。


「すっごい、水、綺麗!」

 結構深いのに、下まで透き通って見える。


「結構有名な湖」

「そうなんだ、そうだよねー、ほんとすっごい綺麗だもん」


 うわー。ほんと、なんか、最高に、綺麗。
 

 思わず、水際にしゃがみこむ。
 すると、ルカも一緒にしゃがんだ。


「ちっちゃい魚が居る。青いのと、ピンクのと……すごい可愛いなー…」


 水際まで魚が居る。中まで行かなくても、いっぱい泳いでるのが見える。


「――――……」


 黙ってたルカが、ふ、と笑う気配。


「?」


 隣のルカを見上げると。
 なんかニヤニヤしてて。からかうように眉が上がる。

「お前、ほんとに年上?」
「……そもそも年上と思ってるような喋り方じゃないけど」

「ソラに敬語使えっての?」
「……ていうか、敬語、使えるの? ルカ」

 そもそも「敬語」を知ってた事に驚いてる位ですけどね、オレ。


「……使わねえかも」
「王子様だもんね、ルカ」

 あれ、そういえば、今も「王子」?


「王様にはならないの?」
「ん?」
「王子ってリアが言ってた。 お城があるのに、王様にはなってないの?」

「――――……なんとなく。魔王を倒したら、即位式すっかって、話してた」
「――――……」


 ……そうなんだ。

 …………オレが邪魔してなかったら、今頃、王様になってたんだ。
 そしたら、魔物も居なくなってて。


 ……ルカ達が倒して歩く事も無くて。
 むむ。


 オレをあんな戦いのど真ん中に落とした何者かは、一体、何のために…。

 ……つか、居るの? 何者か。
 …………これは、夢なの?


「オレに敬語でしゃべって欲しい?」
「――――……」

 トリップしてたら、ルカが面白そうに笑いながら、そう聞いてくる。


「ソラさん、とか?」
「――――……」

 ぞわ。


「ごめん、寒気がしちゃった」

 本気で身を震わせながら言うと、ルカが、ぷ、と面白そうに笑ってる。



「寒気、ねえ……」
「……っ??」


 ルカの手が、する、と耳に触れて、そのまま、首筋をなぞった。


「ひゃ……」

「寒気よりも、気持ち良くて震えたいだろ?」



 ななななな、何言ってんの、この人。

 ぶるぶる首を振る。




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