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第2章

「魔法わくわく」

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 しばらく、降りた付近を捜索していると。


「ルカ、こっちだ」

 ゴウの声がする方に行くと、木を大量に薙ぎ倒して、魔物が息絶えていた。


 オレは怖いから少し離れて見ていたけど……めちゃくちゃ、デカイ。


 オレ、あれに、一瞬捕まってたんだなと思うと、震えが走る。

 あーこわい……。
 ほんとこわい……。

 よくあんなのと、戦えるな。
 皆、すごい。

 何なら、山登り中に会った、ゲームの中なら雑魚っぽい魔物だって、正直、対峙したらめちゃくちゃこわいし。

 ほんと。すごいなあ……。
 皆、尊敬。


 離れて眺めてるオレ以外の皆は、魔物の近くで見上げてる。


「これ燃やし尽くすの結構大変……」

 リアが嫌そうに言ってる。
 さっきの足だけなら一瞬だったけど。やっぱり大きいと違うのかな。


「まあ、頑張れよ」

 ルカが笑ってそう言って。その後、ふ、と気付いたように。


「リアの魔法に風を合わせてみるか」
「できるの? そんな事」

「やってみようぜ――――……キース、ゴウ。そこで隠れてるソラ連れて、もっと下がってろよ」

 ちら、とからかうみたいな視線を送られる。

 キースとゴウが笑いながら近づいてきて、一緒にもっと後ろに下がった。


「リア、少しの間、最大で炎出して」
「うん」

 ものすごい炎が巻き起こった。

 次の瞬間。それに風が吹き込んで、ものすごい勢いで、炎が魔物を包んだと思ったら。――――……さっきと同じ。一瞬で、灰になった。


「うっわぁ、ルカすっごい! これ、戦いの時も使えるんじゃない? 一瞬で消し去れるよ」
「――――……結構魔力使うだろ、特にお前」
「まあそうだけど…… 数が多い時は、使えるかも」

 そんな事を楽しそうに話している2人の側にある魔物の灰みたいのに近付いて、思わずしゃがんで、じーっと見つめる。

 うーん。
 ……すごい。


「ねーリア、どこから火が出るの?」
「ん?」

  灰のまえにしゃがみこんだまま、後ろのリアを、見上げる。

「手の中?」
「手の中……じゃないなあ」

 リアが面白そうに笑う。オレを見下ろして、どこだと思う?と聞いてくる。

「呪文唱える時、手を出すから、手からなのかなあって思ったんだけど」
「手からは出ないよ。 何て言うんだろ。空間、から?かな」
「空間?」
「手を出すのは、なんとなく気合入れるためだから、いつも出しちゃうけど、手を出さなくても、出来るのよ」

 へええ。そうなんだー。
 何だかちょっとワクワクしながら立ち上がった。

「魔法ってさ、特訓すると、誰でもできるの?」
「どうだろ。 もともと魔力を持ってないと、そもそも特訓が出来ないかなあ……」

「オレ、ここの世界では魔力あるのかな??」
「んー、今は感じない、けど……」

「特訓したい、オレも、火、出したいー」

 せっかく、こんな魔法のある世界に居るんだから、使ってみたい。
 リアみたいに、大きな炎じゃなくて、まあなんなら、タバコの火が付くくらいのちっちゃいやつでも全然良いから、出してみたいなー。

「いいよ、じゃあ、今度やってみようか」
「うん」

「精神集中するとこからだけど、大丈夫?」
「……精神集中から???」

「すっごい集中して、念じるの」
「なるほど……」

 出来るかな。
 今までの人生、そんなに集中せずに、のほほんと生きてきてしまったけど。

「じゃああたしと特訓する前に、他の事が何にも考えられなくなる位、何かに集中して、無になる位の感じになれるように、ちょっと、意識してみて」

「相当難しいこと言われてる気がする、けど……うん、頑張って、みる」

 うんうん頷いてると、リアがふふ、と笑う。

 その間、隣でずーっと黙ってたルカに気がついて、ふと見上げると、何だかとってもニヤニヤ笑ってる。


「ルカ、なに??」
「いや、別に」

 
 ぷ、と笑うルカに、何でだか、頭をぐりぐり撫でられた。


 ……力、強いんだから。優しく撫でてよ。

 と一瞬思って。
 いやいや、優しくなら撫でてほしいのか。

 と、すぐ自分に突っ込んだ。








 


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