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第2章

「風で飛ぶ」

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「下降りるぞ。あんなのそのまま落としとけねえから」

 皆が頷いてる。

 ルカが呪文を唱えた瞬間。
 さっき、ルカがオレを助けてくれた時みたいな、ふんわりした風に包まれて。

 全員が空中に浮かび上がって。
 魔物が落ちて行った崖下に向かって、運ばれた。


 うわわ。こわ。
 ルカが飛ばせてくれてるから大丈夫だと思いながらも、怖い。

「は。怖ぇの?」

 思わずルカの腕に捕まったら、笑われた。

 ……だって、下、透けてるし!
 ていうか、風で飛ぶって、どーいうことだよって、思うし!

 怖いんだよっ!!


「お前ほんと、軟弱……」

 言いながら、ルカの手がオレの肩に回された、と思ったら。
 ぐい、と、抱き込まれた。

「……っ」

 皆が居るのになにすんだよっ、と思ったけど。
 その瞬間、落ちてく様子が視界に入らない事に気付いて。

 あ、隠して、くれてるのか。
 と理解して、口を閉ざした。


 ……だったら、軟弱とか、意地悪言わないで、
 優しく、こっち来てれば見えないから、とか、言ってくれたらいいのに。


 ……って、ルカがそんな事言ったら、ちょっと気持ち悪いか……。
 

 そんな事を考えながら、ルカの胸元だけ見てる内に、下に到着して、足が、地面に着いた。


 はー、良かった。
 はー、フワフワしてて怖かった。

 そう思いながらも、思わず。


「これ、登る時に使ってほしかった」

 そう言ったら。
 ルカは、クッと笑い出した。

「だから……戦いに使うかもしれねえから、無理だって言ったろ」

 クスクス笑ってオレを見下ろすルカ。


「魔法なんていっこも使わなかったけどな」

 ルカがそう言うと。
 まわりで3人が苦笑い。

「ソラを取られてめっちゃキレたからでしょ。あいつ、ステータス見たけど、結構強かったわよ? 結界は魔法を跳ね返すタイプだったし」

 リアがそんな風に言って肩を竦めると。

「じゃあぶった切って、正解だったな」

 ルカが笑う。

「まあでも――――……魔王が遠いか、やっぱり、こないだの戦いで、弱ってんのかもな」

 と、ルカが言う。

「どう言う意味?」
「魔王が出現してから魔物が現れたって伝わってるし。よく分かんねえけど、魔王の力と、他の魔物の能力って関連がある気がする。距離が近いほど、魔物が強くなる。今回も、そういう強い魔物が居るって情報から、魔王の居場所を見つけたんだ」

「なるほど……」

 そんな話、あったっけ??
 いまいち、記憶にないけど。


「こないだまでこの近くに魔王が居たからな。それでさっきの奴もあんなに巨大化して力をもって――――…… 今は逃げて、ここから相当遠い場所にいるのかもな。じゃなきゃ、いくらオレでも、あのサイズを一太刀ってなー?」

 ルカがそう言うと。ゴウが、いやいや、と笑った。


「ソラ取られて、ブチ切れたんだろ」
「――――……まー。ちょっとは切れたけど」

「絶対ぇちょっとじゃねえから。ルカが飛んだ瞬間、あいつ終わったなと、オレは思ったぞ」
「オレも思った」
「あたしも思った」

 ゴウとキースとリアが、可笑しそうに笑いながら、そんな事を言ってる。

「……つーか、お前、容易く捕まり過ぎなんだよ」

 ルカが、ちら、とオレを見て、はー、とため息をつく。


「……だって、後ろから急に、だったし……」

 オレのせいなの???

 だって、急にふわっと浮いたんだからさ。
 ルカだって、一瞬気づかなかったじゃん……。


 と、ルカ、怖いから言わないけど。




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