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第2章
「もうしばらく」
しおりを挟むキスを、ゆっくり離されて。
じ、と見つめられる。
「…………っっ」
「行けるか?」
「…………っ逆、に、行けないよ!!」
なんか、フラフラしそうだっつーの!
もう!!!
笑ってるルカから離れて、悔しいから気合を入れて、登り出す。
離れてやる。ルカなんて、置いてってやるっっ。
どんどん登るけど、全然ルカとの距離は離れない。
……まあそっか。 ルカは、軽々登ってるもんな。
――――……あ。
そこで気づいた。
最初から後ろから、付いてきてくれてたのか。
オレ、遅いのに文句も言わず。
……こういうとこは、優しいな。
落ちた瞬間、抱き止めてくれるし。
安心感、半端ないし。
…………まあ。ていっても。
無理無理連れてこられたの、ルカのせいだけど。
「……あのさあ、ルカ」
「んー?」
登りながら、すぐ下に居るルカを見下ろす。
「何でオレ、連れてきたの? 絶対足手まといじゃん」
「――――……今日帰らねえかもしんねーし」
「……そうなの?」
「見つからなかったりしたら、ありうる」
「うん。……それで??」
「オレが居ない間に、お前がどっか消えたら困る」
「――――……」
どっか消える。
――――……元の世界に、戻る、とか?
「消えるにしても、目の前で消えたら、戻れたんだなって思えるから」
「――――……」
「それに、飛ぶ時光に包まれるなら、オレも一緒に包まれたら、一緒に行けるかもしれねえし」
――――……ん??
振り返ると、面白そうにニヤニヤしてる。
んん?
ルカ、一緒にオレと、戻るつもりなの?
そういえば。
オレも急にどこかに飛ばされるとかあんのか、みたいな事を言ってたっけ。
ん? オレと一緒に飛ばされるつもりなの?
「…………ルカ、オレと、オレの世界に行きたいの?」
「ちょっと面白そうだろ。逆も」
「怖くないの?」
「……お前がこんなにのどかに生きてきた世界だろ? 怖くはねえな」
あ、なるほど。
…………って、なんかオレ、そんなに、のどか?
……まあ、のどかか。
ここの人達に比べたら。
ルカが日本に――――……?
んー。
戸籍とかどーすんのって思うけど。
とりあえず、すごいモテそう。
モデルとか、いけちゃいそうだなあー……。すごい迫力あるし。
「とにかく、あんま離れんなよ。消えるなら、オレの目の前で消えろ」
「――――……どうして?」
「戻ったって分かる感じで消えるなら仕方ないだろ。お前はそっちのが幸せなんだろうし」
「――――……ルカが居ないとこで消えたらどうすんの?」
「さらわれた可能性とか捨てきれないなら、探すかもな」
ルカの言葉に。
…………なんか。
……探して、くれるんだ。
オレが居なくなったら。
ほんの2晩一緒に過ごしただけで。
――――……オレなんか、ここに居ても居なくても。
変わんないだろ、とか。
ちょっと、思うのだけど。
……そうじゃ、ないのかな。ルカ。
「まあ。そんなんで連れてきたら、こんなに急な山だっつーのは誤算だったけど」
苦笑いでルカが隣に立って一歩先に上がると、オレの腕を引いて、持ち上げた。軽々持ち上げられてしまう。
「あり、がと……」
「ん」
なんか。
…………ルカの執着って。
良く分かんない。
――――……分かんないけど。
なんか。
……ここが何か分かんないけど。
もう、しばらく。
……そばに居てもいいかな。なんて。思わされる。かも。
少し開けた所に立つと、先に登っていた3人が居る。
ルカの後について、3人の所に一緒に向かおうとした、瞬間。
ふわ、と突然、体が、浮いた。
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