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第2章
「オレも行くの?」
しおりを挟む朝食。
いつも通りのご飯だ。
うん。
美味しいけど。うん。
モグモグひたすら食べてると。
横で、ルカがクスクス笑った。
「お前って、いつも、一瞬、固まってから食べ始めるよな? 何で?」
「……いや、色がね」
「色?」
「……オレが作ったご飯、楽しみにしてて? 上手くできたら、分かってくれると思うから」
「ふうん? まあ、楽しみにしとく」
「うん」
返事をして、続き、食べてると、皆が今日の話をし始めた。
「とりあえず、食べたら出発して、探しながら、登るか」
「そうだね。途中に居なかったら最悪山頂までのぼるしかないかな」
ルカの言葉にキースが答える。
ふむふむ。山頂か。大変そう。
「結構高いんだろ、あの山」
「らしいよー。あたしこのヒールはやめよ。可愛くないけど、登山用の靴にしてくわ」
なるほど。
――――……あれ、魔法って、使えないの?
「移動魔法って、使えないの?」
「あたしが行った所しか使えないから。山頂までのぼっちゃえば、帰りは使えるわよ?」
あ、そういえばそうだった。気がする。うん。
そっかー、じゃあルカ達は今日は登山かー。
「どんな山なの? なだらか?」
「結構急らしいのよー、あー、魔物より登山が嫌」
リアの声に、うんうん、と頷く。
「皆、頑張ってね」
そう言ったら。
不意に。
「お前も頑張るんだけど?」
ルカが、そう言った。
「――――……」
今、何と?
ぱ、とルカを振り返る。
オレの顔を見て、クっと笑い出して。
「お前も登山頑張れって、言ってんだけど」
「え?? オレ?」
リアたちが、周りでクスクス笑いだした。
「何、ソラ連れてくつもりなの?」
「オレも置いてくんだと思ってた」
「ソラ、聞いて無かったみたいだね……」
リアとゴウとキースがそれぞれ言って、笑ってる、けど。
笑い事じゃない。
……え。嘘でしょ?
「……オレ、何で行くの? 役に立たないよ? てか、邪魔だよ?」
「お前置いてくと、ろくなことになんなそうだから、連れてく」
「何、ろくなことって。 オレ、何もしないよ」
「変な奴に連れてかれても困るし」
「誰もオレの事なんか連れてかないよっ。 あ、オレ、部屋に閉じこもってるから」
「ダメ。オレの側に居ろよ」
「えええー……嘘でしょ?」
全然行く気なかったんだけど。
皆の無事の帰りを、ここで祈ってる気満々だったんだけど!
「え、邪魔だと思うんだけど……オレ……」
「邪魔じゃねえから」
「……役立たずだと……」
「ごちゃごちゃうるせーな、来いっていってんだよ」
「――――……」
頬に触れられて、睨むみたいな瞳で見据えられる。
「分かった? ソラ?」
うう。
「……分かった」
頷くと、ルカは満足そうに笑って。
皆は苦笑いだった。
な、なんで??
あれだな、RPGのゲームやってるとたまにある、ゲストみたいな。
パーティの一番後ろにくっついて、歩いてて付いてまわるだけの、あれになる訳ね、オレ。
ゲームは、ただ後ろにくっついて、ピロピロ歩いてるだけだけど。
――――……ここで、オレは。
自分の足で、山登り、するんだよね……。
「ソラ、帰りは、魔法で降りてこれるからね。行きだけ頑張って」
リアが、励ましてくれてるのか、そんな風に言ってくる。
「戦いで魔法使い切らなきゃ、だろ」
可笑しそうにゴウが言う。
はあ。とため息。
隣で楽しそうに、まだ何かの実を剥いてるルカを、じと目で見つめていると。
ぱく、と食べさせられた。
「この実はどうだ?」
「――――……これ、何?」
「ミルの実」
「……ん、甘くて美味しい」
「これとチョコの実、あと、さっきのお菓子も、そのバッグに入れて持ってっていいから。頑張れよ?」
クスクス笑うルカに。
オレは、はー、とため息をついて、頷いた。
……て言っても、山登り位、した事あるし、何とかなるか、位の気持ちで。
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