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第2章
「何だかな」1 *ルカside
しおりを挟む魔王の居場所を突き止めるのに苦労した。
たどり着くのにも苦労した。
そして、魔王をいざ倒そうという時。
急に真っ白になった世界。
一瞬、魔王が何か攻撃を仕掛けたのかと思って、身構えて。
けれど何の衝撃も無く。
かろうじて、目を開けた瞬間。
目の前に、どしゃ、と何かが落ちてきた。
そう。
落ちてきた。
結構長い時間、戦っていた。
その空間には、何も無かった。
洞窟なので、上を見上げても、岩しかない。
隠れられるような場所じゃない、光は、時間にしたら、ほんの一瞬だった。
白い光とともに、空中に現れて、落ちた。
――――……そうとしか、思えなかった。
そんなのに気を取られて。
――――……しかも、涙に、更に気を取られるという大失態。
意味の分からない、そいつにもムカついたし、そんな事に気を取られて、魔王を逃がすという大失態を犯した自分には、もっとムカついた。
……絶対に、ありえない。あってはならない事だった。
せっかく、世の中、魔物が消えて、少しは皆が暮らしやすくなると、思っていたのに。
キース達は、逃げる余力が残ってたって事は、まだ、倒せる時じゃなかった、とか言うが。やっぱり、あの時、気を取られず、攻め続けていたら倒せたんじゃないかとも思う。
いくら、あの瞬間、静止の魔法をかけていたとしても、油断すべきじゃなかった。
生きてきて一番という位、内心落ち込んだし、自分にも、ソラと名乗った男にも、腹が立って。
憂さ晴らしに付き合わせようと思って。
ついでに、決戦に備えてて、最近たまってたしとか、そんな安易な理由で、ソラをベッドに連れ込んだ。
涙だけは良かったし。めちゃくちゃに泣かせてやろうと思った。
――――……のだけれど。
何だろう。
泣かせるのは、まあ、良いのだけれど。
涙も、そそられるし。
……見た目は、全然普通の感じの奴だと思ったのに。
抱くと、やたらエロい。
嫌がるくせに、ものすごい感じて。
薬だと伝えたら、全部薬のせいにしたらしく、素直に甘えてきて。
それが、めちゃくちゃ、かわい――――……かった。
あんまり、感じた事が無い。
抱いてる間に、可愛いとか。
もうとっくに薬が切れる頃になってても、変わらず、感じまくるから、ものすごい長い事、しつこく抱いていた気がする。あんなに夢中になるとか、そんなに無い。
気を失ったソラをようやく離して、清めて。
隣に横になって顔を見つめる。
もう、ピクリとも動かず、スヤスヤ寝ていた。
城に帰ったら、住めるようにしてやればいいかとか思って、そのかわりオレのものになれ、と言ったら。 帰れるまでは、絶対守って、と言った。
守る、か。
――――……分かった。 守ってやる。
そのかわり、ずっと側においとこう。
と、何でだか、会ったその晩に、そう思った。
朝、ようやく目を覚ましたソラに。
ふと、思いついて、餌付け、とか言いながら食べさせた。
チョコの実を食べさせた時に、ふわふわ、と笑った。
話が本当だとするなら。……まあ、今の所、信じてはいるけれど。
いきなり知らない世界に来て、いきなり、初めて男に抱かれるとか経験をさせられた翌朝にだ。その相手の男の手から、普通に食べ物を食べさせられて、笑うとか。
……警戒心、ねえなー、と思って。
よっぽど幸せな世界で、警戒することなく、のんびり生きてきたんだろうなあ、こいつ。
そんな風に思って。
そしたら、ますます守らないとと、なんだか、すごく思ってしまった。
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