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第2章
「独占欲??」
しおりを挟む意地悪なルカの、子供みたいな意地悪を回避しながら、色々つまんで、食べてみる。
……味が素朴なんだよねー。しょうがないのかな。
まずくはないんだけど。ていうか、美味しいは美味しいんだけど……。
ハーブみたいなのとか。
ニンニクとか、唐辛子っぽいのとか。それくらいならありそうな気がするんだけどな。
塩としょうゆっぽい味はするけど……酒はあるし。
バターとかは? あるのかな?
「ルカ」
「ん?」
「もしさ、ルカの城につくまで、オレがここに居たら、さ?」
「……ん」
「オレ、料理、したい」
言ったら、意外そうな顔で、ルカがオレを見つめた。
「料理? できんの?」
「うん。母さんがパティシェでさ。料理もすごく上手な人でね」
「ぱてぃしぇ?」
「あーと……お菓子を作る職業の人。オレ、いっぱい教えられたからさ。作るの好きなんだ」
「へえ……」
「まあでも――――……料理するのが好きとか、人に初めて言ったんだけど」
「ふうん? 何で?」
「何となく……? 無難にゲームとか言ってた方が、楽だったし……」
「ゲーム?」
「あー……んーと、ゲーム」
テレビゲームは無いから……。
「……カジノ、あるでしょ? ここ」
「ああ」
「色んなゲームとか……」
「カジノ好きか? 今度行くか?」
「え。うん、行きたい!」
やったー、行く行くー。
喜んでると。ルカはふ、と笑いながら。
「んで? ――――……お前は、料理がしてえの?」
「うん。 ただ、材料とか、どんなのがあるのか色々揃えてみてから……」
「いーよ、揃えてやる」
「ほんと?」
「オレに作ってくれるんだろ?」
「――――……」
……まあそっか。今オレが作って、食べてくれるのは、ルカとここに居る皆だな、と思って。うんうん、と頷くと。
「城にも料理人が居るから。色々相談していーよ」
「うん」
――――……なんか。
ちょっと楽しみになってきた。
この世界の材料で、茶色以外のキレイな食べ物を作ってみたい。
……できるのかな、なんておかしくなってしまうけれど。
もう少し、とか、買い物終わるまでとか、明日までと言わず。
1か月くらい、ここに滞在してもいいような気がして、ワクワクしてしまう。
「ソラの父親は?」
「え?」
「母親の職業がそれなんだろ? 父親は?」
「えーと……整体師」
……整体師なんて居るのかなと思いながら、口にすると。
「せいたいし?」
ルカの反応で、居ないんだな、と分かる。
「……体を整えるっていうか…… あ、疲れた所をね、揉んだりして、楽にするっていうか。分かる?」
「キースが、白魔法で、体の痛みを取ったりできるけど。それか?」
「んー、キースの魔法は分かんないけど……整体は体に触ってやるんだよ」
「触って?」
いまいち分かってもらえない。
「手、貸して?」
「――――……」
差し出された手に、そっと触れる。
「ゆっくり深呼吸しててね?」
整体とかまではいかないけど、父さんに習ったマッサージ。
母さんの手が疲れた時にやってあげてたように、指をほぐしたり、親指や小指の付け根をほぐして。指をマッサージしてから、手の甲を揉んで。そのまま、肘までゆっくり擦る。
「こんな感じなんだけど。どうだった?」
「――――……」
「今右手だけだから、左手と比べると大分違うと思うんだけどな?」
「……なんか、楽になってるかも」
右手を振って、ルカが不思議そうに自分の右手を見てる。
あ、なんか、不思議そうにしてるの、ちょっと可愛い。
思わずクスっと笑いながら。
「左手もやる?」
と手を差し出したら、素直に左手も差し出してくる。
あ、素直。
――――……なんか、ちょっと、初めて、年下っぽく思ったかも。
「オレのこれはマッサージだから、父さんがやってた整体とは違うけど……でも、基本は一緒。 力が入ってるとこを解して、動きが硬くなってる所を柔らかくして……楽にするって感じ……。あ、ルカ、深呼吸、してて」
「――――……」
「息、止めないでね」
「……ああ」
しばらく無言のまま。
マッサージをして。右手と同じように左手を終えた。
ルカが軽く、両手を振ってる。
「キースの魔法の感じとは大分違う」
「――――……魔法だと一瞬?」
「ああ」
そっか。
魔法が有ったら、整体とかいう職業いらないのかな。
でも皆がキースみたいな魔法使える訳じゃないよね?
「何してたんだ? 今、ソラ」
ゴウに聞かれて。
「マッサージっていって……疲れとか取って楽になるんだけど」
答えてから、キースを見つめた。
「キースが魔法で出来ることみたい」
「ああ。疲れや痛みを取る魔法?」
「うん」
「でも、魔力を使わなくても出来るなら、いいかも」
ふ、とキースが微笑む。
「ソラ、オレにもやって」
ゴウがそう言うので、頷いて。
「うん、いー……っ」
いいよ、と立ち上がろう腰を上げた所を、後ろから腕を掴まれて、再び着席。
「えっ???」
振り返ると、ルカが、なんかすごく、苛ついた顔でオレを見てる。
「な、な、なに?? 何なの?」
何でそんな、急に怒ってんの??
「お前――――……」
「……っっ??」
「さっきキスされたんだから、警戒しろよ」
「け……」
警戒?
ゴウを??
た、たしかにキスはびっくりはしたけど…… 別に男だし……。
そう思ったけど、とても言える雰囲気じゃない。
「つか、こんなの、オレ以外にやるな」
こんなのって。
……マッサージなんだけど……。
こんなのって、どういう意味……??
よく分かんないけど、イライラしてるのは分かるから……。
「……ゴウ――――……無理」
ゴウに、ぷるぷると首を振って見せると、ゴウと、この様子を見てたリアとキースも、めちゃくちゃ苦笑いしてる。
ゴウに断った所で、ルカは掴んでいた手を離してくれた。
「――――……???」
……んんんんんん……??
ルカって…………。
「ソラ」
ルカに呼ばれて、悩みまくったまま、顔を上げると。
「ん」
ぱく、と口に何かが入ってくる。
噛んですぐ分かる。
「あ、チョコの実……」
悩んでても、これは美味しい。
ふ、と笑って、味わってると。
さっきまでめちゃくちゃ苛ついてたルカは、もう全然怒ってないみたいに、クスクス笑った。
――――……ルカって。
この町に着いた辺りから、ずっと思ってたけど。
…………独占欲なのかな? よくわかんないけど。そういうの、すごい??
んでもって、何故か、オレにそれを発動してる??
会ったばっかで、過ごしたほとんどがベッドの上だったし。
独占欲抱かれる程、気に入られる理由も何もないと思うから、そんな訳ないよねって、さっきからずっと思おうとしてたんだけど……。
…………?
そうとしか思えない感じだけど……なんだろ。
――――……変なの。
思いながらも。
なんか、楽しそうに、チョコの実をせっせとむいてる勇者が、なんか。
……ちょっと可愛くて。
大きな手が小さな実を剥いてるのを見守ってると、なんか、微笑んでしまう。
……オレも、変なの。
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