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第2章
「ルカが良い……」
しおりを挟むルカの情報収集がてら、いくつか店に寄った。
靴屋で、靴や靴下をゲットして、歩きやすくなって、めっちゃ気分が上がった。
それから、お菓子屋さんみたいな店に入って、飴玉のお菓子を一袋買ってもらう。
何種類かの色の内、オレンジ色の飴を、ぱく、と口に入れてみると。ちゃんとオレンジっぽい味がした。
リアの激マズジュースが、オレンジ色をしてたから、ものすごい警戒してたんだけど。
この感じだと、オレンジっぽい果物もなってるのもかなあ。
あー、なんか、畑とかも行ってみたいなあ。
ちょっと違う作物がなってるのかなあ。
「1個食べさせて」
店を出た所で、ルカが言うので、ぱく、と口に入れてやってると。
少し離れた所から、ゴウがやってきた。
「人がまじめに情報収集してんのに、何、イチャついてんだ?」
近寄ってきて、そんな風に言う。
別に、イチャついてた訳じゃない。ルカも特に何も言い返さず、飴玉を味わっている。
「食べる? あげるよ?」
「おお、じゃあ、もらう」
「ちょっと待ってね」
1個出して、ゴウに食べさせてあげようとしたら。ルカに手首掴まれて。
「ん?」
と見上げると。ルカがその飴を持ってゴウの口に乱暴に詰め込んだ。
「つーかお前……ルカ……」
乱暴に詰め込まれたゴウが、じろりとルカを見てる。
……そうそう、これこれ。
餌付けとか言って、オレにご飯食べさせる時、こんな感じで詰め込まれると思ったんだよね…。
まさに、これがルカのイメージ。ぷぷ。
なんかオレは、意外にも優しく食べさせられて、恥ずかしかったけど。
面白くて笑っていたら、ルカがオレをちらりと見下ろした。
「つか、お前、そういうの、オレ以外にはすんな」
「――――……ん?」
あ。「餌付け」??
「……うん? 分かった」
頷いてた所にちょうどキースも合流してきた。
キースとルカが話してる背後で、ゴウがオレを見下ろした。
「? 何?」
じっと見つめられて、首を傾げると。
「お前って、そんなに良いの?」
「……? 何が?」
「抱き心地。そんなに良いのか?」
「――――……っ?!」
抱き心地って。
抱き心地って、どーいうこと。と思ったけど。
もう、それ以外の意味なんかありえなそうで。
一気に顔に熱が集まった。
何、言ってんの、この人!
「ルカのあの感じ、珍しくてさ」
「あ、の感じって……?」
「そんなに良いのかなあ、お前。そういや声はエロかったけど。なあ、ソラ、1回、オレともやってみないか?」
「…………っっ??」
な、何言ってんの、ほんとに。
がつ、と肩を組まれて、ルカとはまた違う感じのイケメンの圧に、めっちゃ引く。
でも、これをルカに助けてっていうのも、なんか……。
なんか、プライドが……。
と、思うのだけど。
ルカのもの宣言されてるし、冗談だよねと思っているうちに、どんどん顔が近づいてきて。 え、嘘でしょ。と思ってたら。
「――――……っ!!!」
ゴウの唇が、オレの唇に、重なった。
「っる……!」
ルカ、と呼び掛けた唇をまた、塞がれて、持ってた飴の袋を落とした瞬間。
ルカが気付いてくれたみたいで。
どか、と激しい音と、衝撃が伝わってきて、その瞬間、ゴウが、膝の後ろ辺りを押さえてうずくまった。
その隙に、ルカがオレを小脇に抱えるみたいに、自分の近くに引き寄せた。
「……痛ってーな!!」
「ソラに触んな」
抱えられて、低い声でゴウに言うルカに、少しほっとするのは、何故か。
なんか。少し、ルカに慣れてる気がする。
「…………つーか、こういうの、お前が決める事じゃねえだろ。当人同士がよけりゃ、別にいい事だし、今までだって、やった女かぶった事だって、いくらだってあんじゃんか」
ゴウのセリフに、どん引き。でも、少し納得する。
…………なるほど。
貞操観念、ゆるすぎる世界だってことは分かった気がする。
世界、なのか、この人達が、なのか、分かんないけど。
…………そういえばルカ、言ってたっけ。
こういうのに、遠慮も我慢もいらないとか何とか……。
「――――……ソラ」
「……っえ?」
「お前、オレとゴウとどっちが良い?」
「………………っ」
どっちも、いやだ。
オレ、男とは、寝たくない。なんなら、キスだって嫌だ。
どっちも、ほんとに、嫌だ。
でも。オレ、ルカのものだって頷いてるし。いっぱいなんか色々買ってもらって、意外とよくしてくれてるし。
…………ここで、絶対2人とも嫌だとか言ったら。
後が怖いのは、ルカだ。
「ルカが、いい……」
言うと、ルカは、にや、と笑って。 ゴウはちょっとため息。
「まあいいや。ルカに飽きたら、オレとしような?」
「飽きさせねーし」
「んなの、わかんねえだろ」
目の前の会話の意味が、わかんない。
しかもオレ。
…………ルカが良いとか、言わされちゃったよ…………。
ルカが良いとか。
はー。
ため息をついてたら。
キースが、苦笑いで、オレを見た。
「――――……嫌な時は、嫌って言っていいんだよ?」
「――――……」
「ほんとに助けてほしい時は、言っておいで? 別にオレでも、ここに居られる手伝いはしてあげられるから」
「……ありがと」
何となくありがたくて、キースの静かな笑みを見ながら、頷いた。
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