【ドS勇者vsオレ】オレ様勇者に執着&溺愛されてるけど、ドSだから大変✨奨励賞受賞

悠里

文字の大きさ
上 下
30 / 299
第2章

「ルカが良い……」

しおりを挟む
 
 
 ルカの情報収集がてら、いくつか店に寄った。

 靴屋で、靴や靴下をゲットして、歩きやすくなって、めっちゃ気分が上がった。
 それから、お菓子屋さんみたいな店に入って、飴玉のお菓子を一袋買ってもらう。

 何種類かの色の内、オレンジ色の飴を、ぱく、と口に入れてみると。ちゃんとオレンジっぽい味がした。


 リアの激マズジュースが、オレンジ色をしてたから、ものすごい警戒してたんだけど。

 この感じだと、オレンジっぽい果物もなってるのもかなあ。


 あー、なんか、畑とかも行ってみたいなあ。
 ちょっと違う作物がなってるのかなあ。


「1個食べさせて」

 店を出た所で、ルカが言うので、ぱく、と口に入れてやってると。

 少し離れた所から、ゴウがやってきた。



「人がまじめに情報収集してんのに、何、イチャついてんだ?」

 近寄ってきて、そんな風に言う。


 別に、イチャついてた訳じゃない。ルカも特に何も言い返さず、飴玉を味わっている。


「食べる? あげるよ?」

「おお、じゃあ、もらう」

「ちょっと待ってね」

 1個出して、ゴウに食べさせてあげようとしたら。ルカに手首掴まれて。



「ん?」

 と見上げると。ルカがその飴を持ってゴウの口に乱暴に詰め込んだ。



「つーかお前……ルカ……」

 乱暴に詰め込まれたゴウが、じろりとルカを見てる。



 ……そうそう、これこれ。

 餌付けとか言って、オレにご飯食べさせる時、こんな感じで詰め込まれると思ったんだよね…。

 まさに、これがルカのイメージ。ぷぷ。

 なんかオレは、意外にも優しく食べさせられて、恥ずかしかったけど。


 面白くて笑っていたら、ルカがオレをちらりと見下ろした。



「つか、お前、そういうの、オレ以外にはすんな」

「――――……ん?」

 あ。「餌付け」??  


「……うん? 分かった」

 頷いてた所にちょうどキースも合流してきた。



 キースとルカが話してる背後で、ゴウがオレを見下ろした。


「? 何?」


 じっと見つめられて、首を傾げると。


「お前って、そんなに良いの?」
「……? 何が?」


「抱き心地。そんなに良いのか?」
「――――……っ?!」


 抱き心地って。

 抱き心地って、どーいうこと。と思ったけど。


 もう、それ以外の意味なんかありえなそうで。

 一気に顔に熱が集まった。


 何、言ってんの、この人!


「ルカのあの感じ、珍しくてさ」
「あ、の感じって……?」


「そんなに良いのかなあ、お前。そういや声はエロかったけど。なあ、ソラ、1回、オレともやってみないか?」

「…………っっ??」


 な、何言ってんの、ほんとに。


 がつ、と肩を組まれて、ルカとはまた違う感じのイケメンの圧に、めっちゃ引く。
 でも、これをルカに助けてっていうのも、なんか……。

 なんか、プライドが……。


 と、思うのだけど。


 ルカのもの宣言されてるし、冗談だよねと思っているうちに、どんどん顔が近づいてきて。 え、嘘でしょ。と思ってたら。


「――――……っ!!!」


 ゴウの唇が、オレの唇に、重なった。


「っる……!」


 ルカ、と呼び掛けた唇をまた、塞がれて、持ってた飴の袋を落とした瞬間。

 ルカが気付いてくれたみたいで。


 どか、と激しい音と、衝撃が伝わってきて、その瞬間、ゴウが、膝の後ろ辺りを押さえてうずくまった。


 その隙に、ルカがオレを小脇に抱えるみたいに、自分の近くに引き寄せた。



「……痛ってーな!!」


「ソラに触んな」


 抱えられて、低い声でゴウに言うルカに、少しほっとするのは、何故か。

 なんか。少し、ルカに慣れてる気がする。


「…………つーか、こういうの、お前が決める事じゃねえだろ。当人同士がよけりゃ、別にいい事だし、今までだって、やった女かぶった事だって、いくらだってあんじゃんか」


 ゴウのセリフに、どん引き。でも、少し納得する。

 …………なるほど。

 貞操観念、ゆるすぎる世界だってことは分かった気がする。
 世界、なのか、この人達が、なのか、分かんないけど。


 …………そういえばルカ、言ってたっけ。

 こういうのに、遠慮も我慢もいらないとか何とか……。




「――――……ソラ」

「……っえ?」

「お前、オレとゴウとどっちが良い?」

「………………っ」


 どっちも、いやだ。

 オレ、男とは、寝たくない。なんなら、キスだって嫌だ。



 どっちも、ほんとに、嫌だ。



 でも。オレ、ルカのものだって頷いてるし。いっぱいなんか色々買ってもらって、意外とよくしてくれてるし。

 …………ここで、絶対2人とも嫌だとか言ったら。


 後が怖いのは、ルカだ。



「ルカが、いい……」



 言うと、ルカは、にや、と笑って。 ゴウはちょっとため息。



「まあいいや。ルカに飽きたら、オレとしような?」

「飽きさせねーし」

「んなの、わかんねえだろ」



 目の前の会話の意味が、わかんない。


 しかもオレ。

 …………ルカが良いとか、言わされちゃったよ…………。


 ルカが良いとか。

 はー。


 ため息をついてたら。
 キースが、苦笑いで、オレを見た。


「――――……嫌な時は、嫌って言っていいんだよ?」

「――――……」


「ほんとに助けてほしい時は、言っておいで? 別にオレでも、ここに居られる手伝いはしてあげられるから」


「……ありがと」


 何となくありがたくて、キースの静かな笑みを見ながら、頷いた。




しおりを挟む
感想 270

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

何も知らない人間兄は、竜弟の執愛に気付かない

てんつぶ
BL
 連峰の最も高い山の上、竜人ばかりの住む村。  その村の長である家で長男として育てられたノアだったが、肌の色や顔立ちも、体つきまで周囲とはまるで違い、華奢で儚げだ。自分はひょっとして拾われた子なのではないかと悩んでいたが、それを口に出すことすら躊躇っていた。  弟のコネハはノアを村の長にするべく奮闘しているが、ノアは竜体にもなれないし、人を癒す力しかもっていない。ひ弱な自分はその器ではないというのに、日々プレッシャーだけが重くのしかかる。  むしろ身体も大きく力も強く、雄々しく美しい弟ならば何の問題もなく長になれる。長男である自分さえいなければ……そんな感情が膨らみながらも、村から出たことのないノアは今日も一人山の麓を眺めていた。  だがある日、両親の会話を聞き、ノアは竜人ですらなく人間だった事を知ってしまう。人間の自分が長になれる訳もなく、またなって良いはずもない。周囲の竜人に人間だとバレてしまっては、家族の立場が悪くなる――そう自分に言い訳をして、ノアは村をこっそり飛び出して、人間の国へと旅立った。探さないでください、そう書置きをした、はずなのに。  人間嫌いの弟が、まさか自分を追って人間の国へ来てしまい――

処理中です...