23 / 296
第2章
「だから、デリカシー」
しおりを挟む着慣れない服を着て、足元スースーしながら、階段をルカと一緒に下りて行くと、昨日食事をした店に、3人が立っていた。
「あれ、ソラも行くの?」
リアが微笑む。頷くと。くす、と笑われた。
「ルカ、激しすぎだよね? 体、平気?」
「――――……っ」
「お前の声、ずーっと聞こえてたからなあ。なんかムラムラして、酒場に繰り出したわ」
ゴウが笑いながら言う。
……ふー。ほんとにさ。どーなの……。
「あたし早々に、聞こえないように結界張って寝ちゃったから。ほとんど聞いて無いから安心してね」
リアが言うけど。
安心って……。
「大丈夫だった? 絶対初めてなんだからって最初に言っといたのにね」
キースも、涼しい顔して、触れられたくないとこに、突っ込んでくる。
「まあでも、悲鳴とか叫び声だったら、やめさせに行ったんだけどさ。オレも結界張ったから、そこらへんだけ確認して、寝ちゃった」
……悲鳴とか叫び声だったら、やめさせに行ったけど。
…………来なかったってことは。
「気持ちよさそうな喘ぎ声だったから来なかったんだろ?」
まるで普通の事のように、ルカが答えた。
「オレが抱いてて、そんな訳ねーだろーが」
3人は、はーやだやだ、という顔をして、ルカを見やる。
…………っっこ、こういう話って。
こんなに大勢で、店のど真ん中で、結構大きい声で、普通にするもの……?
……な訳あるかー!!
何なんだ、この世界。
性関係に、デリカシーってものは、ないのか???
それとも、この人たちに、無いのか?
わーん、こんなのが、勇者御一行様、なんてー!!
そんな馬鹿な―!!
清廉潔白な勇者像は、どこ行ったー!
……っても、そもそもこのドS勇者に、そんなものは求めてはいなかったけど。
そもそも、セクシーでエロいって、女子達が泣いて喜んでたんだし。そういうキャラなんだよな。でもゲームの世界ではそんなこと……??
…………いやいや、もう、何考えてんだか、自分でも全然分かんない。
今すぐ、日本に帰りたいよう……。
オレから、返答する気力をすべて奪い取った、デリカシーのない方達は、全然気にせず、行き先の相談を始めてる。
「どこから行く?」
「さっきは南に行ったから、西か?」
「あ。オレさっき気になる事聞いたんだった。東の町の外に、結構強い魔物が出てて被害が出てるって」
「じゃあそっち、先に行こうぜ」
ルカの一言で、行き先が決まった。
リアの周りがまた光って、周囲に居たオレ達を包み込む。
ふわ、と軽くなって。
目を開けたら、もう違う町の外にいた。
「うわ……」
2度目だけど。
すごいよー!!
あ、日本に帰るの、もう少し先でもいいかも。とりあえず町巡りしたい。
まわりを見回しながら、ものすごく上がった気持ちに、ワクワクしていると。
リアがまた、おかしそうに笑った。
「可愛いんだけど、ソラ」
よしよし、と撫でられる。
「もう、魔力が続く限り、移動魔法使ってあげたいわー」
そんな風に言われる。
え。いいの? それは楽しすぎる……。
ウキウキしてると。横でゴウが、笑い出した。
「リア、移動魔法嫌いだろうが。いっつも、疲れる疲れる言うじゃんか」
ゴウのセリフに、リアは、分かってないなー、とため息を吐いた。
「あんたたち連れて飛ぶの、結構魔力も使うし、疲れるのよ。しかも運んでもらって当然みたいな感じだし? でも、ソラ、こんなに楽しそうにしてくれると、滅茶苦茶可愛いし。 それに、ソラとあたしだけなら、軽いからそんなに疲れないし」
リアが、くす、と笑って、オレを見つめてくる。
「今度2人で色んなとこ行こっか。綺麗なとことか連れていってあげるよ」
わーほんとに?
めちゃくちゃ嬉しい。
しかもこんな綺麗な人と。
と思った瞬間。
「ダメ」
ぐい、と引かれて、ルカの腕の中に収まる。
「行くならオレも行く」
「やあよ! ルカが居たら、重いのよ」
「じゃあその話は無し」
思い切り、バッサリと切られて、オレは、逆らう気力も無くなった。
104
お気に入りに追加
4,605
あなたにおすすめの小説
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
子育てゲーだと思ってプレイしていたBLゲー世界に転生してしまったおっさんの話
野良猫のらん
BL
『魔導学園教師の子育てダイアリィ』、略して"まどアリィ"。
本来BLゲームであるそれを子育てゲームだと勘違いしたまま死んでしまったおっさん蘭堂健治は、まどアリィの世界に転生させられる。
異様に局所的なやり込みによりパラメーターMAXの完璧人間な息子や、すでに全員が好感度最大の攻略対象(もちろん全員男)を無意識にタラシこみおっさんのハーレム(?)人生がスタートする……!
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。
【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが
咲
BL
俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。
ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。
「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」
モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?
重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。
※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。
※第三者×兄(弟)描写があります。
※ヤンデレの闇属性でビッチです。
※兄の方が優位です。
※男性向けの表現を含みます。
※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。
お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる