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第1章
「頼れる人かも?」
しおりを挟む「じゃあ……いただきます」
言って、恥ずかしくてたまらないけど、口を開けた。
意外と、そっと、口に入ってくる。
もっと無理無理詰め込まれるかと思ったら。
……つか、思ったより優しいと、余計に恥ずかしい。
恥ずかしさのあまり、味が全然分かんない。
飲み込むと、また、ルカが口に入れてくる。
無言のまま、しばらくそんな時間が続いて。何の時間なんだろうと思うけど、餌付けの時間なのか、とよく分からない納得をしていると。
「……お前の世界の食べ物とは、違うのか?」
ルカがそう言った。
「んー……違うかな……少し似てるとこもあるけど……」
普通に答えていたら、ルカが、不意にまっすぐに、見つめてきた。
「オレ、お前が違う世界から来たっつーのは、信じてるから」
「え?」
「最初は怪しい奴かと思ったけどな。昨日お前が着てた服の生地も、オレは見た事が無い。それに、お前、昨日は靴も履いてなかっただろ」
「……あ、うん、そうだった」
そういえば。
「移動魔法が使える訳でもなくて、靴を履いてもいねえのに、あそこに居て、足の裏は綺麗だったし。てことは、どっかから、何の用意もしねえで飛ばされてきたとしか思えねえし。現れた時の白い光も、見た事ない位の光で、異様だった」
……そういえば、昨日靴下だったけど……あれ、オレ、靴下で外歩いてたんだっけ??
「――――……」
あ。
……浮いてるみたいな感じで、動かされてたのって。もしかして。
「ルカ、昨日、オレを、持ち上げて動いてたのって……」
「靴履いてねえからだけど。 それ以外何があるんだよ?」
「――――……」
いやがらせだと思ってました……。
優しさ……というには、持ち上げ方が乱暴だったけど……。
あ、それでオレ、昨日、靴下で外を歩くっていう、異様な感覚を味わってないんだ。
……まあ、引きずられるように持ち上げられて移動するという、異様な感覚は味わったけど。
でも、まあ……。
「……あり、がと」
やり方が乱暴だけど。
…………あれ。意外と。良い奴だったりするのかな……?
「とにかくそこら辺を 全部込みで考えると――――…… 違う世界、とかが無いとは言い切れねえし。それに、昨日みたいなあんな時にまで、帰れるまで守れ、とか言ってたし」
「――――……」
「だからお前が、どっか、違うとこから来たっていうのはもう信じた。ほら」
また口に食べ物を運ばれる。
「とりあえず、お前、あの服しかねえんだよな?」
「うん」
「お前に合いそうな服や靴を買いそろえる。魔王倒せなかったし、帰りがてら、色んな町の様子を見ながら帰るから、オレの城に帰るのは少し先だけど。町巡り、付き合え。そこで欲しいものがあるなら買ってやる」
「……うん。あり、がとう」
「違う世界がある、とかいう話は、オレは今迄聞いた事がないから、町を巡ってる間に、そういう話が有ったら情報を回すように、オレから依頼していく。怪しまれるから、お前は他の奴にはそんな話はすんな。リアたちにはもう、隠しとくように話した」
「うん、分かった」
あれれ。
結構、まともに考えてくれてる??
そういえばそっか。
色んな依頼と、お願い事とか聞きながら、助けながら旅してたんだもんな。
……こういうのは、ほんとに頼っていいのかも……。
目の前で、意外とまじめな顔をして話してるルカを、じっと見つめてしまう。
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