上 下
17 / 296
第1章

「頼れる人かも?」

しおりを挟む


「じゃあ……いただきます」

 言って、恥ずかしくてたまらないけど、口を開けた。


 意外と、そっと、口に入ってくる。

 もっと無理無理詰め込まれるかと思ったら。


 ……つか、思ったより優しいと、余計に恥ずかしい。

 恥ずかしさのあまり、味が全然分かんない。


 飲み込むと、また、ルカが口に入れてくる。

 無言のまま、しばらくそんな時間が続いて。何の時間なんだろうと思うけど、餌付けの時間なのか、とよく分からない納得をしていると。


「……お前の世界の食べ物とは、違うのか?」

 ルカがそう言った。



「んー……違うかな……少し似てるとこもあるけど……」


 普通に答えていたら、ルカが、不意にまっすぐに、見つめてきた。


「オレ、お前が違う世界から来たっつーのは、信じてるから」

「え?」

「最初は怪しい奴かと思ったけどな。昨日お前が着てた服の生地も、オレは見た事が無い。それに、お前、昨日は靴も履いてなかっただろ」

「……あ、うん、そうだった」

 そういえば。


「移動魔法が使える訳でもなくて、靴を履いてもいねえのに、あそこに居て、足の裏は綺麗だったし。てことは、どっかから、何の用意もしねえで飛ばされてきたとしか思えねえし。現れた時の白い光も、見た事ない位の光で、異様だった」

 ……そういえば、昨日靴下だったけど……あれ、オレ、靴下で外歩いてたんだっけ??


「――――……」


 あ。

 ……浮いてるみたいな感じで、動かされてたのって。もしかして。



「ルカ、昨日、オレを、持ち上げて動いてたのって……」

「靴履いてねえからだけど。 それ以外何があるんだよ?」

「――――……」


 いやがらせだと思ってました……。


 優しさ……というには、持ち上げ方が乱暴だったけど……。

 あ、それでオレ、昨日、靴下で外を歩くっていう、異様な感覚を味わってないんだ。

 ……まあ、引きずられるように持ち上げられて移動するという、異様な感覚は味わったけど。

 でも、まあ……。


「……あり、がと」


 やり方が乱暴だけど。

 …………あれ。意外と。良い奴だったりするのかな……?


「とにかくそこら辺を 全部込みで考えると――――…… 違う世界、とかが無いとは言い切れねえし。それに、昨日みたいなあんな時にまで、帰れるまで守れ、とか言ってたし」

「――――……」


「だからお前が、どっか、違うとこから来たっていうのはもう信じた。ほら」


 また口に食べ物を運ばれる。


「とりあえず、お前、あの服しかねえんだよな?」

「うん」

「お前に合いそうな服や靴を買いそろえる。魔王倒せなかったし、帰りがてら、色んな町の様子を見ながら帰るから、オレの城に帰るのは少し先だけど。町巡り、付き合え。そこで欲しいものがあるなら買ってやる」

「……うん。あり、がとう」


「違う世界がある、とかいう話は、オレは今迄聞いた事がないから、町を巡ってる間に、そういう話が有ったら情報を回すように、オレから依頼していく。怪しまれるから、お前は他の奴にはそんな話はすんな。リアたちにはもう、隠しとくように話した」

「うん、分かった」

 あれれ。
 結構、まともに考えてくれてる??


 そういえばそっか。
 色んな依頼と、お願い事とか聞きながら、助けながら旅してたんだもんな。



 ……こういうのは、ほんとに頼っていいのかも……。


 目の前で、意外とまじめな顔をして話してるルカを、じっと見つめてしまう。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?

み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました! 志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

処理中です...