【ドS勇者vsオレ】オレ様勇者に執着&溺愛されてるけど、ドSだから大変✨奨励賞受賞

悠里

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第1章

「ソラと名乗る」

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「お前、名前は?」
「……水森蒼空」

「ミズモリソラ? それ、全部名前か?」

 勇者の繰り返すイントネーションが、おかしい。
 繋げないで……。

「水森が名字で、蒼空が名前……」
「みょうじ?」


 騎士が不思議そうにそう言った。



 …………ないよね。名字。
 分かってたのに、言っちゃった……。


 全部デフォルトのままでゲームしたから、勇者はルカ。魔法使いはリア。剣士はゴウ。騎士はキース。
 皆カタカナで、短い……。

 蒼空、じゃないな。
 もう、ここでは、「ソラ」でいこう……。

 ほんと、リアルな変な夢……。自己紹介するって。


「……名前、ソラです」

「ソラ、だな。 お前、 何であそこに落ちてきた?」
「――――……全然分かんない」

「自分の意志じゃないって事? あ、あたしはリアね? よろしく、ソラ」

 魔法使いのリアの言葉に頷く。


「こことは違う世界で生きてて――――…… 急に、さっきの所に、落ちた感じで……」

「ふーん?? オレは、ゴウ、な。剣士だ。 こことは違う世界って?」


「日本っていう国の、東京っていう町に居たんだけど……白い光に包まれて……」

 ゴウの言葉にそう返したら、今度は騎士のキースが、頷いた。


「確かにソラが出てきた時、白い光が急に……見た事がない位、まぶしく光ったよね……」



 んー、と首を傾げながら。



「あ、オレはキース。戦いは剣を使うけど――――……白魔法も使うよ」



 そう言ったキースが、ふと、オレの手首に触れて、少し持ち上げた。

 さっき落ちた時に血が出た肘に、何かの呪文。

 ふんわりした光に包まれたと思ったら。


「うわ。――――……治った??」



 すごいすごい。

 ゲームでは当たり前のように、魔法使ってたけど。

 実際使われると、すごすぎる。



「何でこれ治るの? 不思議すぎなんだけど! ていうか、治してくれて、ありがと!」


 マジで、すっごい、不思議。肘を何度も触ってしまう。
 すごいなー、日本に居たら、神様として崇められそうな能力だなー。

 はて、能力なの? 魔法って。
 何だかは分かんないけど、すごい。


「どういたしまして」

 くす、と優しく笑われる。やっぱりキースは、すごい優しくてカッコいい騎士だなーと改めて思っていると。


 それまで黙って酒を飲んでた勇者が、不意にオレの顎を掴んだ。



「――――……なんか、普通に話してるけど。お前、ほんとに何?」

「――――……」



 やっぱ、この人が一番、ていうか、この人だけが、怖い。



「お前のせいで、オレ、今日魔王、倒せなかったんだよ、分かってるか?」
「……」

 オレのせい、という所にひっかかるけど、一応、頷く。
 まあ確かに。ど真ん中に落ちたオレに気を取られなかったら、多分、倒せてた、はずとは思うけど……。



「すげえ、今、鬱憤たまってる訳」
「……」

 まあ。それは……うん。分かる。

 オレだって。
 あそこまで追い詰めた魔王に逃げられて、ちょっと悔しい。



 ルカを、ここまで超頑張らせてきたから、ほんと、不憫だと思う。


 …………でも、ちょっと待って……。

 こんな訳の分からない世界に入ってしまった、オレの方が不憫じゃない……?

 帰れたら、いくらでも、やりなおして、ゲームクリアするから、許して。

 

 そう言いたいけど。

 ……オレがやってたゲームのキャラクターなんだよ、と、この人たちに言うのは、躊躇われる。



 多分、ゲームなんて知らないだろうし。

 自分たちが作り物、なんていう、そんな話――――…… どうしたって信じないよね……。



 なんか、RPG自体がもう、アニメっぽくなくて、もう、リアルな実写みたいな画像だったから、全然違和感なかったけど……。

 この人達、今オレの目の前では、完全に普通の人間みたいに、生きてる、もんな……。



 夢というには、あまりにリアル。



 …………ていうか、お前のせいで倒せなかったって……
 オレのせいなのかー……。えー……そうなのかなー……。



 ていうか、顎掴むとか、マジ、この人、何なの。
 離してほしいんだけど……。



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