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第4章「先生としてって言ったけど」
6.らしい
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結局どっちが勝つかもわからないまま、とにかくどっちも、たくさんピンが倒れるとただ嬉しくて。
私の残したピンを琉生がストライクで決めてくれると、もうほんと楽しい。
「そういえば私、ストライクとかスペアとかとったことほとんどないから、こんな風なスコア追うの初めてかも」
「楽しい?」
「うん、すごく」
上のスコアと下のスコア、わりといい勝負で、最後まで二人で真剣に投げてた。
結局は下が勝って、さっきしまった紙を開くと。
「私が下、だから……勝ちでいいの?」
「うん、そだね。じゃあ琴葉の勝ち。夜、何食べたいか考えといてね」
「うん」
ふふ、と笑って頷く。
「なんかすごい必死でやっちゃった。……ていうか、琉生、上手だね」
「大学の駅前にあったから、しょっちゅうやってた。最初はすっごい下手で、笑われてたよ。やったことなかったし」
苦笑しながら言う琉生に、そうなんだ、と頷く。
「すごいね。それから四年で、こんな上手になるんだ」
「なんかすごく、負けず嫌いなのかも。色々やり始めたら、そう思った」
「私も練習したらいけるのかな」
「いけるよ」
ふふ、と楽しそうに笑う琉生。
キラキラしてるなあ……。
そっか。学校に居る時と、少し髪型も違うんだ。
エレベーターのボタンを押して、待っている間、ふと琉生が私を見つめた。
「琴葉、学校だとキレイな恰好だからさ」
「ん?」
「ブラウスにスカート、とかが多いでしょ」
「うん」
「ニットとパンツ、とか、新鮮」
「……いい意味?」
「当然」
ふ、と目を細める。
……よかった。
なんか、学校に行くような服も違うと思ったし、でもあんまり気合入れてオシャレするのもどうかと思ったし、でもなんかあまりに気合抜けてても……と、出る前すごく考えたから。このくらいでちょうどよかったみたい。
「すごく可愛く見える」
「――――」
返事、出来ず。
あまりに固まって、琉生を見つめていると。
「えっと……」
琉生は、口元に手を持っていって、けほ、とせき込む仕草で、なんだか苦笑い。
「そんなに見られると、超照れる……」
視線を逸らされて、え、とさらに固まる。
可愛いとか、平気で言うのに、見つめてるとそんな照れるとか。
……ますます何も言えないでいる私の前で、エレベーターのドアが開いた。
「乗ろ」
背中をとん、と押されて、中に入る。
人が居たので、奥まで入って、外の景色が下がっているのを見ていると。
琉生が、ふ、と短く息をつきながら、ちょっと頭を掻いている。
……なんだかもう。
なんだろう、この人。この人のほうが、よっぽど可愛いと思う……。
静かな空間で何も言えないけれど、何だか、顔が熱い。
先生として、とか、私、言ったけど。……言ったのに。
結局こんなところで二人で会って、すごく楽しんじゃってるし。こんなこと言われて、もうどうしていいか分からなくなっているし。
一階に着いて外に出ると、琉生はふと、私を見て苦笑した。
「なんか難しい顔してる」
「え?」
「何考えてる?」
……なんだかなあ。
「正直に言う、ね?」
「うん」
「……琉生と居ると、楽しいんだけど…… いいのかなーて」
「ん?」
「……別れたばかりなのに。年下なのに、後輩なのにとか、先生なのにとか……?」
「ああ。そういうの」
なるほど、と言ってから、琉生は、ふわ、と笑った。
……こんなこと言ってるのに、そんな風に笑うんだ、と思った時。
「そういうの思ってても、楽しいって思ってくれてるなら、オレは嬉しいかな」
「……そうなの?」
「うん。そうだね」
「……ポジティブですね」
「ですね」
敬語で言ったら敬語で返してきて、クスクス笑っている。
「そういうの考える琴葉も、らしいなぁと思うし」
「――――らしいですか……?」
「ですね。いいなと思います」
また敬語で返して、楽しそうに微笑む。
このもやもや考えるとこを、らしくていいな、って言ってくれるんだなぁ、と思った時。
鞄の中でスマホが震動した。
私の残したピンを琉生がストライクで決めてくれると、もうほんと楽しい。
「そういえば私、ストライクとかスペアとかとったことほとんどないから、こんな風なスコア追うの初めてかも」
「楽しい?」
「うん、すごく」
上のスコアと下のスコア、わりといい勝負で、最後まで二人で真剣に投げてた。
結局は下が勝って、さっきしまった紙を開くと。
「私が下、だから……勝ちでいいの?」
「うん、そだね。じゃあ琴葉の勝ち。夜、何食べたいか考えといてね」
「うん」
ふふ、と笑って頷く。
「なんかすごい必死でやっちゃった。……ていうか、琉生、上手だね」
「大学の駅前にあったから、しょっちゅうやってた。最初はすっごい下手で、笑われてたよ。やったことなかったし」
苦笑しながら言う琉生に、そうなんだ、と頷く。
「すごいね。それから四年で、こんな上手になるんだ」
「なんかすごく、負けず嫌いなのかも。色々やり始めたら、そう思った」
「私も練習したらいけるのかな」
「いけるよ」
ふふ、と楽しそうに笑う琉生。
キラキラしてるなあ……。
そっか。学校に居る時と、少し髪型も違うんだ。
エレベーターのボタンを押して、待っている間、ふと琉生が私を見つめた。
「琴葉、学校だとキレイな恰好だからさ」
「ん?」
「ブラウスにスカート、とかが多いでしょ」
「うん」
「ニットとパンツ、とか、新鮮」
「……いい意味?」
「当然」
ふ、と目を細める。
……よかった。
なんか、学校に行くような服も違うと思ったし、でもあんまり気合入れてオシャレするのもどうかと思ったし、でもなんかあまりに気合抜けてても……と、出る前すごく考えたから。このくらいでちょうどよかったみたい。
「すごく可愛く見える」
「――――」
返事、出来ず。
あまりに固まって、琉生を見つめていると。
「えっと……」
琉生は、口元に手を持っていって、けほ、とせき込む仕草で、なんだか苦笑い。
「そんなに見られると、超照れる……」
視線を逸らされて、え、とさらに固まる。
可愛いとか、平気で言うのに、見つめてるとそんな照れるとか。
……ますます何も言えないでいる私の前で、エレベーターのドアが開いた。
「乗ろ」
背中をとん、と押されて、中に入る。
人が居たので、奥まで入って、外の景色が下がっているのを見ていると。
琉生が、ふ、と短く息をつきながら、ちょっと頭を掻いている。
……なんだかもう。
なんだろう、この人。この人のほうが、よっぽど可愛いと思う……。
静かな空間で何も言えないけれど、何だか、顔が熱い。
先生として、とか、私、言ったけど。……言ったのに。
結局こんなところで二人で会って、すごく楽しんじゃってるし。こんなこと言われて、もうどうしていいか分からなくなっているし。
一階に着いて外に出ると、琉生はふと、私を見て苦笑した。
「なんか難しい顔してる」
「え?」
「何考えてる?」
……なんだかなあ。
「正直に言う、ね?」
「うん」
「……琉生と居ると、楽しいんだけど…… いいのかなーて」
「ん?」
「……別れたばかりなのに。年下なのに、後輩なのにとか、先生なのにとか……?」
「ああ。そういうの」
なるほど、と言ってから、琉生は、ふわ、と笑った。
……こんなこと言ってるのに、そんな風に笑うんだ、と思った時。
「そういうの思ってても、楽しいって思ってくれてるなら、オレは嬉しいかな」
「……そうなの?」
「うん。そうだね」
「……ポジティブですね」
「ですね」
敬語で言ったら敬語で返してきて、クスクス笑っている。
「そういうの考える琴葉も、らしいなぁと思うし」
「――――らしいですか……?」
「ですね。いいなと思います」
また敬語で返して、楽しそうに微笑む。
このもやもや考えるとこを、らしくていいな、って言ってくれるんだなぁ、と思った時。
鞄の中でスマホが震動した。
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