「王子と恋する物語」-婚約解消されて一夜限りと甘えた彼と、再会しました-✨奨励賞受賞✨

星井 悠里

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第3章「一人で実家帰りと思ったら」

23.やすらぐ

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  一応舗装されてる二車線の道路。歩道があって、そこから階段を下りると河原。家は河原と反対方向に建ってるけど、そんなに密集はしてない。畑とかも多い。たまに車が通るけど、ほとんど、二人きりみたいな空間。
 
「すごく静かだね」
「うん。……田舎だからね」
「星が綺麗」
「うん」
「月も綺麗」
「うん」
 
 ふふ、と笑ってしまう。
 
「清水先生、酔ってないです? あの後は飲まされなかったですか?」
「……琉生でいいよ。誰も居ないし」
 
 ふ、と琉生の方を見上げて見つめ合ってしまって、ちょっとドキ、とする。
 うん、と頷いて、前方に視線を戻した。
 
「琴葉が出て行ってしばらくしたら、お酒じゃなくて、お茶が出始めて」
  クスクス琉生が笑う。なんとなく、前方、下の方を見ながら、のんびり隣を歩く。
 
「そろそろ酔い覚まししてくださーいって、琴葉のお母さんとおばあちゃんたちが、お茶とかアイスとか持ってきてくれて」
「あ、なるほど。それね、いつもなの」
  そっか、お客さんが来ててもいつも通りしたんだ。
 
「アイス食べた?」
「うん。食べたよ。バニラアイス」
 
 クスクス笑って、琉生が私を見つめてくる。
 
「琴葉の家族、賑やかだし、楽しいね。オレ達、初対面なのにそんな感じ全然しないし」
「うん。賑やかではあるよね」
  ふふと、笑ってしまう。
 
「琴葉がそんな感じなのが、なんか分かる。……あれだよね、おばあちゃんに似てない? 琴葉」
「うわー」
「……? うわーって?」
「おばあちゃんに似てるって、良く言われるの。でも何がって言ってくれなくて。琉生は、何が似てると思ったの?」
「何が……」
 
 うーん、と琉生が笑ってる。
 
「だって、おじいちゃんとかお母さんに言われるのはまだ感覚的なものかなって思うけど、琉生にまで言われるってなったら、何だろうって思って」
「えー……なんだろ。笑った感じ……かなあ。話したイメージ……?」
「えー。おばあちゃんは、大好きなんだけど……私、おばあちゃんみたいな話し方するってこと?」
「いや、なんか違う……」
 
 言いながら、琉生は、クスクス笑い始める。
 
「えーと……どうしようかな。オレ、別に、おばあちゃんみたいとは言ってないんだよ。琴葉のおばあちゃんもなんか、可愛らしいし」
「……確かにおばあちゃんはちょっと可愛い感じではあるけど……私、似てる……??」
 
 どこが似てるんだろう。ずっと似てるねーって言われてきたけど。おばあちゃん好きだから、そっか、って聞いてたけど。初めて会った琉生にまで言われるとは思わなかった。
 
「優しい感じ。可愛い感じと、もうなんだろ……話してる波長……?」
「……おばあちゃんの波長……」
 
 のんびりってことかなあ……。
 う、うーん。
 
 私が悩んでいると、琉生はクッと笑い出して、口元を手でかくして、めちゃくちゃ楽しそうだし。
 
 そんなに笑われるとますます……うーん。
 そう思ってると、ふ、と私を見てにっこり笑うと、「琴葉」と言って、私の腕を引いた。
 
「あそこ、座ろう? ゆっくり星、見たい」
「え……あ。うん」
 
 川へ降りる階段に引っ張って行かれて、琉生が先に、その一番上に腰かけた。
 少し離れて、隣に腰かける。
 
 クスクス笑ってた琉生は、「変な意味じゃないよ。好きな感じ、て言いたかっただけ」と言う。
 ……それにはまた、答えに困るけど。
 
 なんとなく、答えなくてもいい雰囲気を、琉生から感じる。
 琉生は上を向いて夜空を見上げて、ふ、と息をつく。
 
「なんかずっとここに居たいかも……」
 
 綺麗な夜空と、川の風景。私はいつもここに来ると、すごくほっとするけど。
 
「琉生でもそう思うんだ……」
「……ん? どういう意味?」
 
 不思議そうに顔を見られて、ちょっと困ってから、思ったことを、そのまま言うことにした。
 
「なんとなく都会の方が、似合いそうだなーと思って」
 
 そしたら琉生は、そう?と笑ってから、また空を見上げる。
 
「都会は便利だけど、絶対ここの方が、安らぐと思う」
「そっか……。私もそう。安らぐよね……」
 
 少しの間、黙って、景色を眺める。
 
 ……ほんとなら。春樹と、ここに居たんだろうな。
  と、またふっとよぎってしまう。
 吹っ切ったつもりなのに、ふとした時によみがえる。
 
 あんなことが無ければ、春樹と二人で帰ってきて、皆に婚約の話をして、きっと結婚式のこととかも、色々話したんだろうな。別れてから、五日、かぁ。なんだかもっと、すごく時がたったみたいな気がする。
 
 そういえば、昨日も、何か話したそうだったけど、避けちゃったなあ。ちょうどその時、琉生も居たし。話すことなんて、何もないって、思って……。
 先週までは、春樹と実家に帰って、いよいよ結婚って思ってたのに。

 春樹のバカ。もう。最低。ほんと。……もう、なんなのかなぁ、ほんと。
 こんなこと、思う日が来るなんて、思わなかった。
 私は、付き合ったことがあるのが、春樹だけだから、初めてだけど。
 世の中の、何度も恋してる人達は、別れる度に、色んな種類はあるだろうけど、こんな風な想いを、皆、毎回するのかなあ。
 
 なんだか、そう思うと、恋って大変なんだなぁ……。
 うん。やっぱり私、向いてないのかも。
 そんな風に思って、ふと、隣を見ると。
 なんだか月明かりで、とても綺麗に見える、素敵な人。
 
 
 ――好き。て、言ってくれてるけど。
 世の中には不思議な出来事もあるなあ。なんて。……しみじみ思ってるなんて、ちょっと言えない。
 
 
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