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第3章「一人で実家帰りと思ったら」
21.四つ下
しおりを挟む「そういえば、いつのことなの、別れたの」
そう聞かれて、少し間を置いてから。
「ん……今週の月曜日」
そう答えたら、皆が目を丸くした。
「え、すっごい最近。それで吹っ切れてるの?」
「ん。完全に吹っ切れてるとは思わないけど。まだ考えちゃうことはあるし」
「そうだよね」
佐那の言葉に、うん、と頷く。
「でも、ほんとに、大丈夫だから心配しないでね」
ふふ、と笑うと、皆、仕方なさそうにではあるけど、ん、と頷いてくれる。
「それよりさ、葵と毅はいつ結婚するの?」
「結婚式はあげたいから……今度式場、見に行ってくる。空いてるとこ、だよねぇ」
「わー、呼んでね、絶対帰ってくるから」
「もちろん」
ふふ、と笑って、葵が頷く。
それからしばらく、結婚したらどうする、とかそんな話を色々聞いた。
楽しそうでいいなあ、二人。
そんな風に思ってた。ちょっと、羨ましいなと思ってしまうけど。まあ、それは、仕方ないよねと思いながら。
「同じ年って良いなあ。幼馴染なら、もう色々知ってるし」
そう言ったら、「知りすぎてるっていうのもあるけどね」と葵が笑う。
「ねね、同じ年が良いって何? 元カレは離れてたんだっけ?」
「あ。ううん。同じ年だったよ」
あ、ちょっと口が滑ったかも。と思っていると、佐那がふうん?と不思議そうに。
「年離れた人と何かあるの?」
「うーん……」
「あるんでしょ。言ってみ?」
少し戸惑いつつも、ここで少し話しても、何の問題もないだろうからと、気が緩む。
「四つ下、とかどう思う……?」
そう聞くと、葵と佐那は、うーん? と考えてから、「四つって結構下だよね」と苦笑する。
「いま四つ下とか……大学卒業したあたりでしょ? 話もあわないことありそうかな」
葵の言葉にうなずくと、佐那が私をまっすぐ見つめた。
「なんか、良い人でもいるの?」
「あ、ううん。婚約解消したばかりだし、そんな、つきあってるとかじゃないんだけど」
「んー。まあでも、気が合えば、良い気もするけど……」
「どうだろうねー? 私は微妙だな」
と、葵が言うと、佐那が苦笑い。。
「そっか、佐那は年上が好きって言ってたもんね」
そういえばそうだった、と思いだしてそう言ったら、佐那は、やっぱり包容力だよね!と笑う。
包容力かぁ……。琉生は年下だけど、それは結構あるかな。うーんでもどうだろ。考えていると、克己が私に視線を向けた。
「オレが二十二と付き合うって言ったら何て言う?」
と克己が笑う。
「彼女わっか!って言う。若さに走ったかーって思うかな」
佐那がけたけた笑いながら言う。克己は苦笑い。
「そんな感じなんじゃね?」
克己が私を見て、そんな風に言う。
なるほど、と私は頷いた。まあ、分からなくはないなぁ。
そんなことを微妙に色々考えたりもしつつ。
皆の近況を聞いたり、会社のちょっとした愚痴を聞いたり、久しぶりの幼馴染たちとの時間は瞬く間に過ぎて行って、ふと気付くと一時間をゆうに過ぎていた。
「あ……ごめんね、やっぱり少し早めに帰るから、もう迎え頼んじゃうね?」
そう言うと、皆も、そうだね、と頷く。
お姉ちゃんにお迎えをお願いすると、了解ーと返ってきた。
「十五分位でお迎え来ちゃうと思う。また、帰って来るから」
皆の顔を見つめる。そこで、ふっと、話したくなってしまった。
「あのね、やっぱりちょっと……話してもいい?」
「ん?」
「いいよ?」
皆の返事に、一呼吸置いてから。
「あのね……四つ年下の子に、好きって言われたの」
そう言うと、ああ、それでさっきのかーと、皆、頷く。
「でもやっぱり若いなって思うし。……元カノとかも、きっと若いんだろうし……って思うと、なんかね。まだ全然、好き、とか思ってる訳じゃないんだけど……考えるだけでも、ちょっと大変で」
そう言うと、皆、うーん、と考えて。
「琴葉が大変ならやめた方が良い気もするけどな」
毅はこう言った。
「でも、好きって言ってるの向こうなんだから、気にしないんじゃない? もともと若い人が好きなら、四つも年上のとこには来ないだろうし」
と、葵。
「でもなんか、いつか飽きられて、若い子に行ったらやだなあとは思ったりするかも……」
と佐那。
「うーん……なんか皆が言うの、全部分かる気がする」
私がそう言うと、克己が、苦笑い。
「まあオレも分かるけど、琴葉が後で嫌になりそうならやめといたら?」
「うん。そう、だね……」
「んで、なんならオレが貰ってやるから」
笑いながら言う克己に、「だからもう、その冗談やめてってば」と、笑ってしまう。
「まあ、年だけじゃなくて、どんな人かにもよるけどねー」
葵と佐那がクスクス笑う。
「年下の男で姉さん女房っていうのも、悪くない気もするけど。愛されてるなら」
葵の言葉に、愛されてるなら、かぁ……と、心の中で繰り返した。
「ありがと、皆。……考えてみるね」
そう言うと、皆、頑張れー、と笑ってくれた。
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