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第3章「一人で実家帰りと思ったら」
18.かれち
しおりを挟むたくさん作った料理をテーブルにこれでもかと並べて、お酒とともに宴会開始。
なんとなく、私と琉生が隣で、目の前に千里と健司さん。私たちは三つのテーブルの真ん中に座って、なんとなく家族ごとに固まって座った。
「清水先生、さっきからずいぶん飲まされてますか?」
「んー……そうかもですね」
クスクス笑って、私を見つめてくる琉生は、そこまで酔ってそうではないけど。
「もしかして、酔っても顔に出ないタイプですか?」
「そうですね、出ないですね」
「じゃあ適度に、断ってくれていいですからね? お父さんとか、お酒死ぬほど強いので、付き合わなくていいですよ?」
「はは。分かりました」
頷いた琉生に、でもすぐよこから、はいはいどうぞと注ぎに来てるし。
「ねえねえ、こっちゃん」
可愛い声で私を呼んで、膝に乗ってくるのは、結音の娘のあかりちゃん。妹のひかりちゃんは背中に抱き付いてきた。
あんまり会えないんだけど、会えた時はずっと仲良しで遊んでるので、帰るとすぐにくっついてくるんだけど。今日は琉生にくっついてて、私も食事を作ってたから、久しぶりの触れ合い。ふふ。可愛い。
「元気だった? おっきくなったね」
「うん、元気だよ」
「ひかりもー」
「そっか、良かった」
ふふ、と笑って、二人を見つめると。
「ねえ、こっちゃんこっちゃん」
「ん?」
「るいくんは、かれち?」
「ん?」
こそこそと、内緒話みたいに話すから、よく聞こえなくて、あかりちゃんに耳を寄せる。
「るいくんがなに?」
ていうかるいくんって呼んでるんだ。……可愛い。
クスクス笑ってしまうと。
「るいくんは、こっちゃんのかれちなの?」
「かれち……あ。」
彼氏?
ぱ、と琉生を見上げると、私と同じく、何て言ってるんだろうと聞いていた琉生が、私と目が合ってすぐ、ぷっと笑い出した。
「可愛すぎですねー」
「かれちって……」
思わず、クスクス笑ってしまう。
「んーん、違うよー? かれちじゃなくてね、一緒に先生してるの」
「そうなの?」
あかりちゃんが、なんだか嬉しそうにキラキラ笑い出して、ん? と不思議に思って見つめると。
くいくい、と私の腕を引っ張って、琉生から少し離れると、琉生とは反対側の耳に向けて。
「じゃあ、あかりが、るいくん、かれちにしていい?」
「……」
可愛すぎて、うんうん、と頷いてしまう。そしたらあかりちゃん、とっても嬉しそうにわーいわーい、と喜んでる。
「なんですって?」
琉生が、あかりちゃんを見ながら、私に聞いてくるけど。
「ないしょね、こっちゃん!」
そうなんだ、内緒なんだ。そこは、なんだかいっちょまえに、隠すんだ!
と、もうほんとに可愛くてしょうがない。
ひかりちゃんはまだちっちゃいから、そんなことは言わないけど、隣の琉生がにこ、と笑うと、すごく嬉しそうにニコニコしてるのは。
……うーん、これは、ちびっこたちにも、カッコいいってことは、すごく分かるってことなんだろうか。
ちっちゃくても、ちゃんと女子なんだなあ~……。
「清水先生って、ほんとに、モテるんですね」
「はい??」
なんか、お父さんやおじいちゃんたちも楽しそうだし、お姉ちゃんたちの旦那様たちともだし、果てはこんなちびちゃん達にまで。
「なんか、もう、感心しちゃいます」
「………?」
良く分かってないみたいだけど、私がクスクス笑ってると、つられたように、琉生も笑う。
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