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第3章「一人で実家帰りと思ったら」
16.実家到着
しおりを挟む地元の駅に到着。
もうすぐ着くよーと入れていたので、駅から外に出たら、お父さんの車が来ていた。
「琴葉ー」
「お父さん、来てくれたの? バス待とうと思ってたよー」
「なかなかバス来ないからさ」
「うん……ありがと」
久しぶりに会えて、嬉しい。
一緒に車に近づいた皆をお父さんに紹介。お父さんは運転席のドアを開けながら、乗ってください、と言った。立ち位置から自然と、助手席に琉生、運転席の後ろに私、千里、健司さんが乗る。
運転し始めてすぐ、お父さんてば、「モデルさんか何か??」と琉生に聞いてる。今さっき私、清水先生だよって言ったのに、と苦笑い。
「いえ。数学教師になったばかりです。中川先生に指導受けてます」
「ああそうなんだね。いや、なんか……芸能人みたいだなあと思って」
ははっと可笑しそうに笑うお父さんに、琉生もクスクス笑ってる。
「詩織と結音が騒ぎそうだな~あと子供たちも」
お父さんの言葉に、琉生がちら、と斜め後ろの私を振り返る。
「詩織がお姉ちゃんで、結音が妹。結婚してて、それぞれ娘たちが居るよ」
そう説明すると、琉生は「なるほど」と頷いた。千里が横から、「どんな漢字?」と聞いてきた。
「詩を織るっていう詩織と、音を結ぶで、ゆいね。私が言の葉だから。お母さんがこだわってつけたんだよね?」
「そうそう。でも孫たちには、全然関係ない名前がついてるけどな」
お父さんはクスクス笑ってる。
「中川先生の名前、言の葉から来てるのかなーって思ってはいたんです。良いですね」
「お母さんに言ってあげて。喜ぶから」
「はい」
何だか前二人、琉生とお父さんが、仲良しで喋ってる。
まあ、お父さんも確かに社交的な人ではあるんだけど。ずいぶん楽しそう。会ったばかりとは思えない。
琉生ってやっぱり。人に好かれるなぁ。あんなに顔、整いすぎてたら、ちょっと引かれそうな気がするのに、なんだか人懐こく笑ったりするからかなあ?
それに優しいもんね、言葉が。
人が欲しい言葉をくれちゃう感じ……?
うーん。モテそう。ほんとに。 ていうか千里もだし、健司さんもだし、皆、ものすごく社交的な人達だもんね。
なんか……うちの家族たち、めちゃくちゃ盛り上がりそうで、ちょっと……心配。
なんて、そう思った予感は的中で。
実家にたどり着いた途端、めちゃくちゃ大勢で私を出迎えてくれた家族たちは、簡単に紹介した三人にめちゃくちゃ群がってる。
うわわ。おそろしいほど盛り上がってる。
思ってちょっと引いていたら、私の隣におばあちゃんとお母さんがやってきた。
「ただいま」
そう言うと、二人は優しく笑って、お帰りと言ってくれる
「楽しそうな人達、連れてきたんだね」
お母さんがクスクス笑う。
「うん。……すごく、優しい人達、だよ」
初めて会ったと思えない位、なんだかんだ楽しそうな雰囲気に、なんだかもう、クスクス笑ってしまう。
「琴葉、落ち込んで、ないの? 大丈夫?」
お母さんが、そっとそう言うので、顔を見つめる。おばあちゃんも何も言わず、にこにこしながら私を見ていた。
「うん。そうなった時は少しはショックだったけど……今は、もう大丈夫」
普通の笑顔で、普通にそう言えたと思う。
無理してないのを、分かってくれたのか、二人はほっとしたように見えた。
「私の同期その旦那さまと、後輩の先生なんだけど……良い人達だから」
ふふ、と笑うと。
「うん、そんな気がする」
「ほんとにね」
お母さんとおばあちゃんも、目の前で盛り上がってる皆を見ながら、クスクス笑った。
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