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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」
41.恥ずかしい。
しおりを挟む「オレね、イタリアで生まれたの。父さんがイタリア人で、母さんが日本人。小学校から日本に来たんだけど」
「うん」
ハーフなんだ。……どうりで、髪の毛と、瞳。顔立ちが王子様っぽいのも、なんか納得。
「髪の毛とかも、こどもの頃はもっと、明るい色で、やたら目立って」
「うん」
「なんか日本で目立つのって色々面倒で」
「……うん」
まあ……なんとなくは分かるかな。琉生はきっと良い意味で目立つ感じだと思うけど。たとえいい意味でも、目立つってことは、色々あるっていうのも、なんとなく想像ができる。やっかむ子も居るかもしれないし。
「高校の頃まで、あんまり目立たないようにっていうのが、なんか身についてたというか」
「――あ、それであんな感じ?」
唐突にあの姿に合点がいって、思わずそう言ってしまうと、琉生は私を見て、ちょっときょとんとしてから、ぷ、と笑い出した。
「そう、あんな感じ。高校は髪も黒く染めてたし」
そのまま、楽しそうに、クックッと笑ってる。
「なんか琴葉の中のオレ、やっぱり忘れてくれていいかも」
笑いをこらえながらそう言って、私を見つめる。
「その時、琴葉がさ、めちゃくちゃ励ましてくれて」
「――」
「最初は、自分がいっぱいいっぱいになって、あそこに来たっぽかったんだよね。……来た瞬間、あーもう!って叫んでたし」
「……そうだっけ」
……はずかしい。
覚えてはないけど。やった気がする……。
「そう。……あれやってこれやって、いや違う、あっちやってから……みたいな、自分で言いながら、スケジュールを組み直してた感じ」
「――」
うう。スケジュール組み直し、よくやってた。しかも、誰もいない時は声にも出してた……。
「最初は、居なくなるまで黙ってようと思ってたんだけど……面白すぎて、オレ、顔出したんだよね。そこらへん、覚えてる?」
「……うん。人が出てきて、びっくりしたのは、覚えてる。だって、あそこで人に会ったの、初めてだったし」
「そうなんだ」
琉生は、クスクス笑いながら「出会った時のこと、覚えててくれて嬉しいけど……見た目は忘れてくれてもいいかも」と言う。
「昔のことだし」
と、笑ってしまいながらも、気になるのは。
「私、琉生に、何言った? あんまり覚えてないかも……」
「多分ね、琴葉は、オレがいじめられてるか何かで、あんなところに隠れてると思ったんだと思うんだよね」
「――」
「何か悩んでる?って聞かれて。さっきまで自分がいっぱいいっぱいだったのにって、オレは可笑しくて……」
「――そう、だよね……」
ほんとそうだな。……記憶ないけど、でも、言いそう、私……。
「……だから、面白いから、ちょっとふざけて、こう聞いたんだよね」
「うん」
「生きる意味って何ですかって」
「……」
……ああ。なんか……思い出してきた。
――話した。そんなようなこと。
よくよく見るとすごく綺麗な瞳の子が、似合わない眼鏡かけて、目立たない感じで。ひっそり、あんなところに居たら。でもって、生きる意味とか言い出しちゃったら……絶対、ものすごく悩んでるのだと思うし。……悩み場所にあそこを選ぶ子に親近感がめちゃくちゃ沸いて……。なんか……語ったような……。
何を語ったか、はっきり思い出せないけど、多分その時思うこと、語った気がする……。
恥ずかしいこと言ったんじゃないかと、聞く前から、恥ずかしくなってきた。
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