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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」
30.罪作り
しおりを挟む千里が変なことばかり言うから考えちゃうけど、ほんとに琉生とどうこうなろうとか、考えてる訳じゃない。
あれは昨日限り、一夜だけのことだと思ったから、出来たこと。普段とは違う特殊な状況だったからこそ、こんな私ですらも飛び込めただけ。
……うん。落ち着いて考えると、琉生と私が、なんて、やっぱり無い。
そんなありえないことを考えなければ、あと問題なのは……あんなことをして、かなり乱れた、あんな自分を見せてしまった人と、一体どうしたら、普通に話せるようになるのかっていう……。
慣れるしかないよね……。
いつ慣れるかな……。思っていたら、宮市先生と話し終えた琉生が、こちらを見て言った。
「中川先生、そろそろ上がりますか?」
「あ。はい。そうしましょうか」
机の上を綺麗に片づけて、二人で席を立つ。
残ってる先生達に、今日は上がります、と伝えて、準備室を後にした。
教職員用の昇降口に向かって歩いている時。
最悪なことに、池田先生に会ってしまった。今度は春樹、一緒に居ないみたい。お疲れ様です、と明るく笑いかけてきた。
千里の話だと、二股期間は無いっていうけど……。
それはただ、「付き合う」とか、そういう事実は無かったってだけで……実際、この子を好きになったから、なんだし。ってことは、気持ちの上では、二股期間、絶対あったよね……。
春樹と私が別れることとか、この二人、いつから話すようになってたのかな。
知らないし、もう今更知っても意味が無いとは思うんだけど。
でもやっぱり……私と春樹が付き合ってること、池田先生は、知ってたのに。
私から春樹を奪ったことはちゃんと認識してるんだろうに、どうしてそんなに平気な顔で居られるんだろう。……とは、どうしても、思ってしまう。
いやだなぁ。こういうマイナスの気持ちって。考えるだけでも疲れる。
こんなこと、感じなきゃいけないのって、ダメージが半端ない。
靴を履き替えて、正門迄の通路を、私と清水先生と池田先生、三人で横に並んで、歩く。
琉生と二人もどうかと思うけど、ここに池田先生とか。
もう、何が何だか分からない……。うーん……。走り出したい気分。
千里のいる保健室から、ここの通路、見えるんだよね……。
見られたら、すごいびっくりされちゃうんだろうな……。
と思いながら、保健室を振り返ってみた。
千里の姿はなくて、ちょっとホッとしていると。
琉生が、「どうしました?」と、 くすっと笑いながら、私を見つめてくる。
優しい、瞳。
……ほんと、なんか、罪作りな人なんだろうなあ、王子様。
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