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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」

22.頭を撫でるのは。

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「あの、清水先生」
「はい」
 
 えっと……頭を撫でられるって、あり? ……じゃないよね?
 
 たしかにたまにポンポンしてくる人っている気がするけど……。
 意識してない人にされるのは、もう普通にスルーだけど。
 
 琉生にされるのは……スルーするのは、絶対無理……。
 なんて言えば……と、短い間に頭の中で、たくさん考える。結果。もう、そのまま言うしか思いつかず。
 
「あの、頭を撫でたりするのは――だめだと思います」
「……だめですか?」
 
 辛うじて言ったセリフを聞いて、琉生は、苦笑い。
 
 そういえば昨日も、よく頭、触られたような。
 この人、こんな風に、よしよしするの、くせなのかなと思って。
 
「生徒にもしない方が…… 勘違いされますよ」
 
 そう言ったら、琉生は、え、という顔で私を見てから、口元を押さえて、クスクス笑い出した。
 
「生徒になんて、絶対しませんよ」
「――」
 
「というか。――中川先生にしか、しませんけど」
 
 …………。
 ――そんな言葉に、思考が止まってしまう。
 目の前の、何だかキラキラしてる瞳を、ただ、ぼうっと見つめてしまう。
 
「……そういうのも。だめ、だと思います」
「はは。だめですか?」
 
 琉生は楽しそうに笑うと。
 
「でも、無理して笑わなくていいっていうのは、ほんとです。嫌なことあったら、いくらでも、聞きますよ」
「――――」
 
 やっぱり琉生って。
 私の、付き合ってたのが春樹だって、知ってるのかな。
 水道の所でも。今も。春樹との会話を、遮ってくれたような気がするし。昨日、同じ学校の先生とは言ったけど。……詳しく説明、してないけどな。
 朝、最初に春樹に会った所を見られたとしても、会話が聞かれるような所には誰も居なかったし。……知る訳ないと思いはするんだけど。でもなんだか分かってるような気もする。
 
「とりあえず、授業、続けますね」
「あ。……はい」
 
 琉生の笑顔に、頷いて、気を取り直して。また生徒の席に座る。
 
 琉生の授業は、分かりやすくて、はっきり話すから聞きやすい。
 あまり注意しなきゃいけない所も無い。
 
 そんなに教える事もなさそうな気がしてしまう。
 
 
 私、新任の時なんて、まあ、勢いだけで空回りして大変だったけどなあ。
 一緒に入った先生達と、すごい励まし合って乗り切ったけど。
 
 なんか琉生は、そんな必要もなさそう。落ち着いてるなあ。
 ――千里に色々聞いておいでと言われたけど。正直、何から聞けばいいのか、よく分からないし。
 聞いて、どうなるかも。全然わからないけど。とにかく明日からの学校生活を、なるべく私の心の混乱なく、過ごせるようにしないと、だよね。 
 
 話す目的は、まず一番がそれだね。
 よし。なんとか、頑張ろっと。


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