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第2章「振られた翌日の、悪夢みたいな」

17.ダメというか無理

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「あはは、ごめんね、そんなにムセるとは思わなかった」
 やっと落ち着いた私に、千里が笑う。

「もうさ、ほんとに……やっぱりさ、羽目はずしちゃいけないんだよね」
「んー?」
「慣れないことするとさ……色々と後から襲い掛かってくるんだよね」
「襲い掛かってくるって…… んー、でもさ?」

 笑いながら、千里は私を見つめる。

「もし清水先生が、琴葉を好きになったら?」
「――ないよ」
「琴葉も好きになっちゃえば?」
「ないよ。年からないよ」
「四つ位。年取っちゃえば変わんないよ。さすがに、小六と高一とかの時は、ヤバいけど。二十二と二十六なんて大した事ないよ。これからもっと年取れば、四十二と四十六なんて、一緒だよ」
「二十二と二十六は結構差があるよ? だって、三月まで大学生だよ……?」
「でももう社会人だもん。同じだよ」

「……千里」
「ん?」
「本気で考えてよう、今そういう話じゃないのよう……」

 嘆いていると、千里が苦笑する。

 でも、じゃあどういう話なのって言われても困るけど……。
 もう私、訳が分からな過ぎて、今なら本気で泣けそうなんだけど。そう思いながら、千里を見つめると。

「でも、私は、結構本気なんだけど」
 お茶を一口飲んでから、千里は私をまっすぐ見た。

「だってさ、社会人同士だしさ。職場の同僚との恋愛なんて、別に全然ありでしょ」
「……そう言う風に言えば、有りだけど」
「そうでしょ? でもって、ここの学校は禁止されてないんだよ?」
「――」
「結婚もOK。ただ、恋愛期間に、生徒の前で、イチャイチャ刺激しないこと、みたいな、ゆるーい感じでさ」
「そうだけど……」
「逆に何がダメなの? 清水先生」
「何がって……」

 ダメ……?
 ダメっていうか。

「ダメっていうか、無理なんだと思う」
「無理?」
「四つも若い王子様みたいな人だよ? 同年代の子達からも絶対モテるだろうし、ていうか、誰からでもモテるだろうし。私と付き合ってもらって、満足してもらえる気は全然しない」
「だから、もうその考え、やめなよ」

 千里は、私をまっすぐに見つめて、ちょっと眉を顰める。

「琴葉はいい子なんだからさぁ……付き合ってもらうっていう言い方がそもそもさ。なんかほんと恋愛に自信がないというか。誰でも不安はあると思うけどさ、琴葉ってほんとに恋愛には奥手というか」
「だって……こんな私でもいいって言ってくれた春樹だって、結局、選ぶのはあの子だったわけだし」
「私はそこが全く納得いかないんだけどね」

 また千里が若干キレてるけど。

「ていうか、琴葉、可愛いから。 あー、私が男だったらなー」
「また言ってる…… 千里、それ、いっつも言ってくれて、ありがと」

 なんか、嬉しいよ。
 そう言うと、千里は、だって本当にいつもそう思うし、と笑ってくれる。
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