どうしても、君と恋がしたかった

悠里

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2.恋がしたい

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「そういえば詩、今日、実行委員会の説明会でしょ」
「あ、うん。とにかくどんな感じか、行ってくるね」

 そう。今日は、秋にある、大学祭の実行委員の募集説明会。
 楽しそう、と思って、とりあえず説明を聞きに行くことにしてる。

「バイト無かったら行くんだけど」
「でも始はサークルで出店するから無理だよね? 僕はサークル入ってないし」
「まあそっか……詩、αに気を付けなよ? 実行委員、α、多そうじゃん」
「でも、飲みサークルみたいなとこよりは、ちゃんとした人がいる……と思ってるんだけど。居てほしい……」

 大学に入って、いくつか、サークルの集まりに試しに行ってみたけど。
 ……最悪だった。

 この大学は、いいとこのαとΩを集めてる高校、しかも各地にある分校から、この大学にエスカレーターで入ってくるので、αはいたるところに居る。

 迫られるわ、いじられるわ。お持ち帰りされそうになるわ。
 思い出すと、つい、チョーカーに触れてしまう。
 もうほんと、これ、ついててくれてありがとう。最悪、何が起こっても、番にさえならなければ、なんとかなる、という気持ちで生きている。

「まあ確かに、遊びサークルよりは、真面目な人多そうだもんね」
「そう、思いたい……」

 せっかく大学入ったんだから、交友関係広めたいし。楽しい友達も欲しいし。
 始は高校から一緒なので、そういう気持ちは知ってるからか、クスクス笑って、僕の背中をバシバシ叩いた。

「まあ、気楽にいきなよ。チョーカーあるし!」
「……うん」
「ていうか、そんなに警戒してると、もう、あれだよ、恋しないでおじいちゃんになっちゃうよ?」
「――」
「せっかく可愛いのにもったいないし」

 別におじいちゃんでもいいな。αと番になるくらいなら。
 始は完全に友達だけど、僕、βと付き合いたいとしたら、男女どっち?

 女の子は可愛いと思う。
 さすがに僕、いくら可愛いって言われても、一応男だし、華奢な女の子よりは、男だし。
 だから、別に、女の子と恋してもいいと思うんだけど。男が好きとか嫌いも、特にない。

 バイ……というやつ?
 でも、なんかそれとも違う。だって、バイって、どっちも性的に好きになれる人だもんね。僕は、別にどっちでもいいかなぁ……と言う感じで、「好き」の方に感情がいってないんだよね。それをバイと呼んでいいのか。

 まあ、Ωなので。
 Ω男子を好む、αたちから見れば、僕は、男側の立場ではない。
 ……抱かれる方、なんだと思うけど。
 ――ヒートになると、思うのは、触ってほしい、という感情。結局ヒートとか本能になると、僕のΩは、受ける方になっちゃうみたいなんだけど。

 でも正常な思考の時は、抱かれたいとかは全然思わない。
 いや、ていうか、断固拒否。大嫌いなαのモノになんか、なりたくない。

 優しいβと恋をして、フェロモンなんて関係なく、触れ合って、ほのぼのと、幸せに。
 やっぱり、これだな。うんうん。それは別に、男女どっちでもいいような感覚。

 まあ僕まだ、恋したことないから。
 初恋が、男女どっちになるか、楽しみ。それで、僕自身も、どっちが好きか分かるだろうし。

 てことでね。
 僕は、出来るだけ、交友関係増やして、色んな人に会って、誰かに恋したい!

 祈ってるように、僕自身がベータになれたら嬉しいけど、変性って、ものすごい低い可能性らしいから。
 仕方ない、Ωのままでも、なんとかしなきゃ。

 恋って。
 友達を見てると、すっごくニコニコして、嬉しそうで、楽しそうで、なんか、ピンクのオーラにあふれている。
 何か喧嘩したりすると、また別の暗いオーラに満ちてるけど。

 なんか僕は、それが、羨ましい。

 フェロモンに左右されるんじゃなくて、自分の感情で。
 好き、嫌い、嬉しい、ムカつく、悲しい、笑ったり泣いたり。
 そんな風に誰かのこと、真剣に、考えてみたことが、ないから。


 僕の周りには、顔とか、体とか、匂いとかで、軽々しく近づいてくるαがたくさん居て、そいつらとどうにかなったって、きっと、あんな風に一生懸命には、なれない。


 僕は、一生懸命、恋したいんだー!
 できれば優しいβと! ドキドキするようなβと会うまで頑張るんだ!


 その為なら、多少へんなαがいる可能性があるところでも、顔は出す。
 あんまり変なのがいるところには、継続しては、顔は出さない。


 実行委員と聞いた時、真面目で頑張ってる人達がぱっと浮かんで、すぐ、説明会の申し込みをした。
 放課後……楽しみだなぁ~。



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