550 / 553
番外編
番外編【夏祭り】23 *奏斗
しおりを挟む「――行こ、奏斗」
暗い夜道、四ノ宮がオレの手を握る。
「奏斗、今日明日、オレと居られる?」
ん??
ちょっとよく分からなくて、首を傾げながら、考える。
「え? どういう意味? 居られるよ? 何もないけど……」
一緒に居るつもりだったけど……。
なんだろ、改めて、確認?
「居れないの? 四ノ宮は」
「居るに決まってるじゃん」
「オレもおんなじだけど?」
「――そっか」
くす、と笑った四ノ宮が、ふと振り返って、ちょっと周りをきょろきょろした後。オレの頬に触れながら、少し背をかがめて、ちゅ、と短いキスをした。
「――これ、聞いた意味があってさ」
「……?」
「ついてきてね」
「……ん」
て、言われなくても、ついてくけど。
隣に並んでゆっくりと歩く。
「――なー四ノ宮、なんか……今日さ」
「うん?」
「浴衣のお店に行ってからさぁ」
何となく、今日のことが、ぱーっと頭に浮かんでくる。
「――なんか今の今までさ」
「うん」
隣を歩く四ノ宮を見上げると、ふ、と四ノ宮が優しく笑う。
「今日ずーっと、すごく楽しかったなぁ、て、思う」
「――うん」
クス、と笑う四ノ宮が、オレの手を繋いでくる。
――人も居ないし、まぁ、いっか、と思いながら。
「浴衣選んだりしたのも、二人で着たのも――二人きりも良かったかもだけど、瑠美さんと潤くんとお祭り行けてさ。ただの友達、とかじゃなくて、四ノ宮の家族、だし……潤くん、可愛かったし、最後、邦彦さんにも会えたし。なんか……」
「うん。なんか?」
「大事な想い出とかさ――大事な人が増えてくって」
「――」
「楽しいね」
しみじみ言うと、四ノ宮はオレを見つめて、ふ、と愛おしそうに、瞳を細めた。たまに、そんな顔をするけど。そのたび、すごくドキドキ、するんだよな、オレ。――ほんと少し前までは、四ノ宮を見て、ドキドキするなんて、思いもしなかったのに。
「――人生って分かんない」
思わず漏れた言葉に、四ノ宮は、首を傾げた。
「何、それ……」
クスクス笑いながらオレを見る。
「んー。なんかほんとにそう思って」
「――まあオレも。奏斗とこんな風になるとか、思いもしなかったけど。……そういう意味?」
「ん。まあ、なんとなくそういう感じ」
二人でクスクス笑い合って、目の前の空を見上げながら、四ノ宮が口を開く。
「花火――綺麗だったよね。なんかオレさ」
「うん?」
「――今までみた中で、一番綺麗だった」
そんな風に言われて、オレもちょっと考えてみて。
「うん。そうだね――オレも、そう思う」
そう言ったら、なんか、四ノ宮、オレを見つめて、キラキラした瞳で見つめてくる。ふは、と笑ってしまう。
「四ノ宮と居るからだよって。言ってほしいの?」
「――別に。んなことないけど」
「可愛いなー、四ノ宮」
クスクス笑ってしまうと。四ノ宮はちょっとムッとした顔で、オレを見るけど。すぐに、ふ、と微笑んで、オレの頬に触れる。
「――――オレは、奏斗が居るから、綺麗に見えるんだからね」
めちゃくちゃ真剣な瞳で見つめられて。
笑いが引っ込んでしまった。ぐ、と言葉に詰まってしまう。
……無駄に顔。よすぎ。
むむ、と見上げると、四ノ宮は、ふ、と笑って、オレの手を引いて、歩き出す。
「早く行こ。いいとこ、連れてってあげるから。とりあえずロッカーから荷物取らないと」
「あ、うん」
急にすたすた歩きだした四ノ宮と並びながら、いいとこ? と首を傾げた。
(2024/11/2)
432
お気に入りに追加
1,639
あなたにおすすめの小説
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
どうせ全部、知ってるくせに。
楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】
親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。
飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。
※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。
目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる