上 下
547 / 553
番外編

番外編【夏祭り】20 *奏斗

しおりを挟む

「にしても、潤が大翔くんと、ライバルみたいになるとかは面白いな。今までは、ヒロくんヒロくんて、大翔くんに夢中だったのに」

 クスクス笑う邦彦さんに、瑠美さんもおかしそうに笑う。

「大翔のことも大好きなのよ。今日だって、結局くっつきまわって一緒に色々してたし。でもねー、ユキくんのことが、可愛いんですってー。おませな三歳児よね」

 ふふ、と笑ってそう言った瑠美さんに、邦彦さんは笑う。

「なるほどね。でもまあ、潤が好きそうだなーとは思う。ユキくん。ていうか、瑠美も好きだろ」
「分かるー?? やだわー、息子と好みが一緒なんて」
「まあ、オレも分かるよ。ユキくん、可愛らしい」
「えーやだ。家族皆、好みが一緒なんて」

 ふふ、と笑う瑠美さんと邦彦さん。四ノ宮は呆れたように二人を見て。

「奏斗はオレのなので」

 そう言って、オレの肩を抱いて、引き寄せる。冗談で言ってる二人に、何ムキになってるんだろうと思いながらも。引き寄せられて背中に触れた四ノ宮の体に、どき、と胸が弾む。

「まあそのうちね。大翔のだってことは、潤に伝えることになるのかなぁ……どうする? 諦めないーとか言い出したら」
「どうしようねぇ」

 ――瑠美さんと邦彦さんて。こんな感じなんだ。
 ゴージャスな二人が、クスクス笑いながらずっと冗談を言ってるのが、面白い。楽しそうで、いいな。

「とにかく、今日は会えて良かったなぁ。ほんと、近々会いたいって思ってたから。今度、家に遊びにおいでね」

 にっこり笑う邦彦さんと、その隣で頷いてい瑠美さん。二人と目を合わせて、オレは自然と微笑んで頷いた。

「ほんと今日はお祭りデートの邪魔しちゃってごめんね。その代わりと言ってはなんなんだけど……」

 瑠美さんが少し離れて、四ノ宮をちょいちょい、と手招きしてる。
 何? と首を傾げながら、四ノ宮が瑠美さんに近づいて、何かを二人で話してる。
 必然的に、潤くんを抱っこしてる邦彦さんと、二人になると。

「こう言ったら何なんだけど……なんか大翔くん、別人みたいだね」
「そう、ですか?」

「――気を遣ってくれるいい子だし。潤のこと、ほんとに可愛がってくれてて、楽しそうにはしてたし。でもなんだか……」

 邦彦さんは、そうだなぁ、と少し考えてから。

「ああ。……なんとなく、自然体、て感じなのかも」
 そう言って、ふ、と微笑んだ。
 
「今、すごく良い感じだよね」
「――そう、ですね」

 ふ、と笑いなから頷くと、邦彦さんはクスクス笑った。

「大翔くんは、君に会えて 良かったね。――自然体でいられる相手って、大事だと思う」
 瑠美さんと同じこと、言うんだなぁと思ったら、なんだか、すごく嬉しくなってしまった。

「――オレの方が、四ノ宮に会えてよかったなって……すごく思ってるので」

 そう言って、ふ、と微笑むと。
 邦彦さんも。「そっか」と頷いて、なんだかとっても、ふんわりと優しく笑った。

 そこに、戻ってきた四ノ宮と瑠美さん。
 何だったのかなと思ったけど、とくに、何も言わないので、オレもそのままそれには触れず。オレと目が合った四ノ宮が、優しく瞳を緩める。
 ……それだけで、嬉しくなるから、ほんと不思議。

「ふたりとも、また今度、ゆっくり話そうね」
「連絡するから。良かったら泊まりに来て」

 邦彦さんと瑠美さんに、頷いて、そこで別れた。
 お祭りの方に戻りながら、「潤くん起きなかったね」と四ノ宮を見上げる。

「どうせすぐ、ユキくんと遊びたいーって言うんだろうから」
「四ノ宮とも会いたいよ、絶対」
「オレに会いたいのはそうだろうけど、ユキくん、は可愛いそうだから。見る目はあるけど……」
「なんでオレ、三歳の子に可愛いって言われるのかな」

 改めてちょっと不思議になって、首を傾げると。

「潤に向けてる奏斗の笑顔は、めちゃくちゃ可愛いよ」

 そんなことを言って、四ノ宮は笑う。

「潤のこと、可愛いって思ってるんだろうけど。その気持ちがめちゃくちゃ顔に出てるから、見てるこっちも、奏斗が可愛いって思うし。それを向けられてる潤もそう思うんじゃないかなぁ……」
「――まあ……めちゃくちゃ可愛いもんね、潤くん」

 ただでさえ、目くりくりしてて、表情も生き生きしてて、もうただただ、可愛いのだけど。
 それになんか、四ノ宮に似てるし。ちっちゃい頃の四ノ宮ってこんなかなぁって思うと、余計に可愛く見える。なんて言えないけど。


「オレに似てて可愛いんだっけ?」
「――」
「言ってたじゃん。潤、オレに似てて可愛いって」
「――」

「ていうか。奏斗が可愛すぎだけどね」

 ふ、と流し目で見つめられて。
 顔が熱くなるのは……こんなのやっぱり、オレのせいじゃない。浴衣着てそんな風な瞳を向けないでほしい。

 花火を見れる河原に、少しずつ近づいてるから、ものすごい人でうるさい筈なのに。なんか四ノ宮と二人きりみたいな感覚になるのは。ほんとなんなんだろう。
 
 



しおりを挟む
感想 327

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

泣くなといい聞かせて

mahiro
BL
付き合っている人と今日別れようと思っている。 それがきっとお前のためだと信じて。 ※完結いたしました。 閲覧、ブックマークを本当にありがとうございました。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【キスの意味なんて、知らない】

悠里
BL
大学生 同居中。 一緒に居ると穏やかで、幸せ。 友達だけど、何故か触れるだけのキスを何度もする。

処理中です...