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番外編
番外編【夏祭り】8 *奏斗
しおりを挟む何だか今集まった、四ノ宮と潤くんと瑠美さんの顔をふと見回す。
……同じ血、なんだろうな。それぞれ、めちゃくちゃ目立つ。
オレ、今日、この人達とお祭りまわるのかぁ。
注目を浴びすぎてて苦笑が浮かんでしまう。
浴衣がヤバいんだろうな、私服ならまだよかったかもしれない。
基本、潤くんと遊んでようかなぁ。と思ったその時。
「わー、可愛いー」
「ほんとだー、可愛すぎですねー」
子供だと思うのか、オレの抱っこしてる潤くんを見て、周りの女の子たちが、直接話しかけてくる。……ん、でも、分かる。可愛いよね、潤くん。
「何才なの?」
聞かれて、潤くんはまんざらでもないのか、ちゃんと答えてる。しゃべり方が可愛いので、また、可愛い~と更に声が高くなる。
潤くんと居てもこんな感じだとすると、オレ、今日はこの中の誰と居ても、こんな感じかぁ~。まだこれから高くなる日差し。花火まで長いなー。なんて思っていたら。
「超イケメン兄弟ですねーー」
きゃっきゃっと笑う女子達。今度はオレに話しかけてくる。
ん、オレ? と引いた瞬間。肩に手が乗って、四ノ宮に引き寄せられた。
「潤と姉貴、来たし、行こ、奏斗」
「あ、うん」
潤くんを見て寄ってきてたみたいで、その女の子たちは、オレを引き寄せた四ノ宮に気づいて、固まった。さらに姉貴、と呼ばれた瑠美さんを見て、え、何、尊すぎない?? と、大騒ぎしている。
ふ、と微笑む瑠美さんに、彼女たちが言葉も出なくなったところで、オレ達は歩き出した。
「ていうか、もう油断ならないよなー」
「え?」
「潤にかこつけて、奏斗に話しかけるとか」
「え。そんなじゃないよ、潤くんが可愛かったから引き寄せちゃったんだよ」
そう言うと、潤くんが、オレを見上げてにっこり笑った。のだけど、すぐに。
「可愛くないの」
「……あ、カッコいいだよね」
「うんっ」
うふふ、と笑ってる潤くんは、とにかくめゃくちゃ可愛い。
人の流れにそって歩き出すと、すれ違うざまに振り返られることはあっても、そこまで注目浴びたりは無い。こんでるのもいいかも。このまま大人しく進もう、と思ってると。瑠美さんが隣に並んだ。
「ユキくん、ちょっと久しぶり。パーティー以来ね。浴衣、似合うねー、ほんと可愛い」
「ほんとー! 可愛い、ユキくん」
瑠美さんにも潤くんにも褒められて、ふ、と笑ってしまいながら、「瑠美さんも潤くんも、ほんとに素敵です」と言うと、後ろから、四ノ宮。
「なー潤、オレは?」
「……カッコいいけど!」
言いながらも、ぷん、と怒った顔をしてる。
「あれ? どしたの?」
さっきも怒った顔してたようなと思いながら聞くと、瑠美さんが苦笑しながら言うことに。
「大翔がねー、旅行から帰っちゃって寂しすぎたのと、しかも、ユキくんのところに帰ったってのが、ずるいって怒っちゃってたのと。もう忘れてるかと思ったら、覚えてたみたいで」
クスクス笑う瑠美さんに、「はー? そんなことで怒ってんの?」と四ノ宮が言うと。
「しらないもん」
ぷい、と潤くん。
ふ、と四ノ宮は笑って、「奏斗、貸して」と、潤くんをオレから引き取った。
「今日、いっぱい遊んでやるから。お祭り、なんでもやっていいぞ」
四ノ宮が、優しい笑顔で、潤くんに言うと。
潤くんは、む、とほっぺをふくらましながらだったけど。
「……なんでも?」
「ん、なんでも」
「……ボールとるやつは?」
「いいよ」
「……よーよーは?」
「いいよ」
「……てっぽうは?」
「射的? うつやつ?」
「うん」
四ノ宮が、得意だけど? とか笑うと。
潤くんは、キラキラした笑顔で四ノ宮を見つめた。
あ、もういいんだな。
可愛すぎる……。
ふふ、と笑ってしまって、同じように笑った瑠美さんと顔を見合わせた。
(2024/7/26)
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