【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
520 / 557
番外編

番外編【諦めるか否か】大翔side 22

しおりを挟む


 感極まって泣きそうで顔があげられないとか、そんなことが自分の人生に起こるとは思わなかった。
 情けないとも思うけど――――こんなに好きになれたことが嬉しい気もする。

 奏斗の肩に、額を押し付けたままでいると。

「……四ノ宮?」

  小さく、呼ぶ声。可愛い。
 オレを、呼んでくれるってことだけで、こんなに嬉しいとか。

「……ん?」
 一応返事はするけれど、まだ感極まってて、とにかく、堪えてると。
 少し、奏斗が笑った雰囲気。

「……あのさ」
「ん」

 奏斗が話し始める。オレが顔を上げなくても続けるみたいなので、聞くことにした。

「オレと付き合って。……ずっと一緒に居たいって思ってくれるように……頑張るから」
「――――」

 付き合ってって。

 ……今、オレと付き合ってって。
 奏斗、今オレに、そう言った?

 びっくりしたおかげで、なんか、泣きそうなのは引っ込んだ。
 ぱ、と顔を上げて、オレは、奏斗をじっと見つめた。

「いまのもう一回。オレの顔見て言って?」
「え? あ、うん。分かった」

 奏斗はオレの顔を見つめて、なんだかやわらかく、ふわ、と笑った。

「オレと、付き合って? ……ずっと一緒に居たいって思ってくれるように、頑張るから」

 もう、マジで。
 ……感動してる。

「頑張んなくていいよ。そのまま、居てよ。……つか、今オレ、奏斗に、付き合ってって、言われたの?」
「……何その質問……言ったよ?」

 苦笑いの奏斗。
 ……確かに変な質問だって、自分でも思うけど。

 だって。
 ……奏斗が、オレに、付き合ってって言うとか。
 まだなんか、現実味がなさ過ぎて。

「すげー嬉しいんだけど。付き合うに決まってるし」

 現実味は感じられないけど、でもそれでも、嬉しすぎて。
 そう答えると、奏斗も、ふ、と嬉しそうに微笑んだ。

 可愛くて。
 ……愛しすぎて。

 奏斗の頬に手を触れさせた。

「今からもう、オレので、いい? 奏斗は色々心配してるけど……オレ、今更無理なことなんかないと思うし。離さないよ?」
「……うん」
「オレ、嫌ってくらい側に居るよ?」
「嫌って、言わないし。オレ、四ノ宮が側にいるの、嫌って思ったこと、ないよ」
「んな可愛いこと言ってると、離さないからね」
「うん。それが、いい」

 ちゃんと頷いてくれた。
 まだ、信じられないような気持ちは、あるけど。
 奏斗が、ちゃんとオレを見つめて、頷いてくれてる。

「後悔しないでね?」
 ついつい、そんな風に言ってしまった。

「後悔って?」
「オレ、初めてだから」
「なにが?」
「こんなに、人を欲しいと思うのも、好きだって、思うのも」

 そう言うと、奏斗は、オレをじっと見つめた後で、小さく首を振った。

「――しないよ。後悔なんて」

 奏斗の、キラキラした、綺麗な瞳。

 ――――今まで、こういう話をする時はいつも、諦めたみたいなことばかり言っていた。恋なんかしないって。一人で生きるって。
 オレが好きだと言っても、いつも迷うみたいな表情だったのに。

 今は、なんだかすごく吹っ切れた顔をしている。

 離れている間、自分で色々クリアしてた奏斗が、今、ちゃんとオレといる覚悟、してくれたんだってことが分かる感じ。

 ――――奏斗は、決めたら、まっすぐな人なんだと思う。 

 迷いがない、瞳が綺麗で―――見惚れる。
 ……こんな風な表情を、奏斗がしてるのが、マジで、嬉しい。


「……そっか。ん。分かった」

 ――――オレを見つめてる奏斗を見つめ返してから、ぎゅ、と奏斗を抱きしめる。脇に手を入れて、ひょいと抱き上げたら、「え?」と見上げられた。

「いますぐオレのにする」

 オレがそう言うと、びっくりした顔の奏斗に、靴がとか鍵がとか、ワタワタ暴れられたので仕方なく一度降ろすと。鍵をかけてから、オレを振り返る。


「ん」

 腕を開いて、待ってると。
 奏斗が、靴を脱いでから、ちゃんとオレの腕の中に、入ってきた。


 こうして開いた腕の中に、入ってくれるとか。
 一気に、愛しいって感情が、あふれるみたいで。

 きつく抱き締めていた。


「オレに奏斗、ちょーだい」

 そう言ったら、奏斗は、照れたみたいに、ふ、と笑った。


「……四ノ宮も、くれるなら。いいよ」

 そんな返事が返ってくる、なんて。
 ――――もう、なんか、もう。



 嬉しいの極地。

 全部、あげるに決まってる。






しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

諦めようとした話。

みつば
BL
もう限界だった。僕がどうしても君に与えられない幸せに目を背けているのは。 どうか幸せになって 溺愛攻め(微執着)×ネガティブ受け(めんどくさい)

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

処理中です...