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番外編

番外編【諦めるか否か】大翔side 21

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 まだ、信じられない。
 ていうのが、今の正直な気持ちかもしれない。

 さっきまで、もう会うこともままならないと、思ってた。
 会わないようにしようと思っていた、のに。

「――――……」

 本当に腕の中にいると確かめるみたいに、奏斗を、ぎゅ、と抱き寄せる。触れるだけの、キスを、何度も重ねる。
 見つめあっていたけれど、奏斗が息を漏らして、きゅ、と瞳を伏せた。

 ――――睫毛が震えてる。可愛い。
 ……けど。もう少し。見つめ合っていたい気がする。

 奏斗の瞳を見ていたい。

「奏斗」

 名を呼ぶ声に、笑みが勝手に交じる。
 奏斗の瞳が開くと、可愛くて、気持ちがめちゃくちゃ、緩む。

「……奏斗」

 雪谷先輩と呼んだ時。痛くて、驚いた。
 ……奏斗、と呼べるのが、嬉しいと思う自分も、正直不思議だけど。

 ゆっくりキスして、舌を深く絡ませた。
 奏斗の、声が漏れるのが可愛くて、しょうがない。

 薄く開いた瞳に、涙が浮かんでるのが見てとれる。
 

「……奏斗」
 
 呼びすぎかな、と自分で思うほど、奏斗の名を呼んでしまう。
 奏斗は、オレをまた見上げる。

「……っ、ん……」

 けれどまた瞳が伏せられて――――……。
 オレも瞳を伏せて、抱き寄せたままキスを重ねた。


「奏斗……」

 しばらくキスしてる間に、どうしても聞きたいことがあって、キスを離した。頬に触れて、名を呼ぶと、奏斗がじっとオレを見つめてくる。


 ――――幸せにしたい、離れたくない、側に居たい。
 そうは、言ってくれた。

 だから、きっと、そういうことなんだと、思う。
 でも、やっぱり、その言葉を奏斗から直接、聞きたくて。

 ……鼓動が、速くなる。


「他の難しいことは全部どうにかするから。家がとか、この先がとか、全部なしで……」

 答えやすいように、前置きしてる自分に、ちょっと苦笑してしまいそう。
 ……だって、どうしても、それを、言ってほしいと、今思ってる。

「今、オレのこと、好き?」

 聞いたオレに、奏斗は、少し瞳を大きくして、パチパチと、瞬きをした。
 それから、ゆっくり、頷いた。

「うん。――――……大好き」

 オレが見つめる先で、言った奏斗は。一瞬。
 笑ってるような。でも少し泣いてしまいそうな。少し複雑な顔をした。

 でも、その後。
 オレをじっと見つめながら、ふわ、と嬉しそうに、微笑んだ。


「――――……」


 多分。
 奏斗が、この言葉をオレに言うのは。

 すごく、大変なんだと思う。

 オレが前置きしたのも、それを分かってるから。

 オレを、好きだと思っても。オレの家のことや家族のことや。オレが元々ゲイじゃないってことがどうしても、きになるんだろうし。オレに普通の幸せはあげられないとか、言ってたし。
 後先考えず、ただ、好きだなんて、言えるタイプじゃないのも、全部分かってる。

 今。
 大好きって、言ってくれたのは。

 奏斗にとって、相当、覚悟が必要なことだったはず。


 まっすぐに見つめてくれる奏斗が、愛しすぎて。
 色んな感情が、溢れて、止まらなくなりそうだった。
 奏斗が泣いてないのに、泣いてしまいそうになって。

 オレは、奏斗の肩に、額をぶつけた。

「……超、嬉しいんだけど」

 声が、震えそう。ゆっくりと、話す。


「……嬉しくて死にそうとか……ほんとに思うんだね」


 オレマジで、今死んでも、いいって、思ってるかも。


 ……あー、でもやっと、大好きって聞けたのに。
 やっぱ、今は、絶対、死ねないか。





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