【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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番外編

番外編【諦めるか否か】大翔side 19

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「オレ、奏斗が居ないと、幸せじゃないけどね。……分かんない、かな……」

 何かを話しながら、呼吸が震える――――とか、人生初な気がする。
 体の。心の奥が、痛すぎて。

「奏斗と居たのは、ほんと短い間だったけど……一生居たいと思うくらい、好きだし。オレが幸せにしたいのは、奏斗だし」
「――――」

「……奏斗が居ないと、幸せじゃないのに、幸せでとか……言わないでよ」

 言ってしまった。
 全部。隠さず。

 すげー、情けない、こと。
 しかもなんか。
 ……涙声、になってて。
 なるべくバレないように声を落として、言ったけど。


「……は。カッコわる……」


 熱いものが、こみあげてきて。
 奏斗みたいに、素直に涙をこぼすとか、そんなこと、オレには無いと思っていたのに。

 奏斗に、最後に、笑顔を残そうなんて決めたくせに。
 
 ……ヤバい。
 オレがマジで泣く前に、帰ってもらわないと。


「……ごめん、奏斗。帰っていいよ」


 それだけ言うのに、精一杯、とか。
 ……ありえない。
 

 精一杯で、こらえて伝えたのに、奏斗は、帰らない。
 黙ったまま。なんか固まってるけど、そっちは見れない。


 涙目なんて――――絶対、見せたくない。


「しのみや……」

 奏斗が、オレの名前を呼んだ。
 ……あぁ、困ってるよな。
 オレが泣くとか……きっと奏斗にとってもありえないだろうし。

 ……帰れないか。
 いやでも――――早く帰って、と言おうとした時。奏斗が、抱き締めていた二号と紙袋を玄関に置いたのが分かった。そのまま空いた手で、オレの腕を掴んで、ぐい、と自分の方に引いた。

 え。
 とっさに、涙目のまま、奏斗を見てしまった。
 奏斗は、眉根を寄せて、なんだかすごく、一生懸命な顔でオレを見上げてくる。逸らせなくて。

「奏斗、どうし――」

 言いかけたオレの肩に、奏斗の手が触れて。さらに不思議に思った瞬間。


「――――」


 奏斗の顔が、近づいて。
 そっと、唇が……触れた。


 ――――は……?
 
 目を、見開くしかできない。


 ……は? 何、今の。 

 キス、された? ――――何で? 


 こんな気持ちで……別れの、キスとかだったら……。
 冗談、じゃないんだけど――――……。
 一瞬は、そう、思ったのだけれど。

 オレを見つめている奏斗が。
 今にも泣きだしそうな顔で。
 ……縋るように、見つめてくるから。

 キスの意味が、分からなくなった。


「かなと……?」

 名を呼ぶと、奏斗が、何度か、パチパチと、瞬きをした。
 オレは……涙なんか、拭きとんだ気がする。


「……あの」

 ためらいがちに、漏れる言葉。


「オレ、四ノ宮と、ずっと居てもいい?」


 ――――ずっと、居ても、いい?


 ただ驚いて、奏斗を見下ろす。

 聞かれた言葉の意味は分かるけど。
 ……何それ。どういう意味。
 ――――キスしたのと、その言葉を重ねて受け取って、いいなら。

 都合がよすぎる気がして……違う意味の可能性があるかを、考えてしまう。


 すると、奏斗は、少し俯いた。
 目を逸らされたことに、ますます違う意味を、探していると。


「……いっぱい、気になることあるけど、オレ、この世で一番、四ノ宮に泣いてほしくない。……笑っててほしい」

 奏斗の、言葉。

 ――――……泣いてほしくないって。

 笑っててほしいって。


「四ノ宮が幸せになれないなら、離れたくない。……四ノ宮が、オレと居て幸せなら、オレ、お前と居たい」


 オレに顔を見せないまま、そう言った奏斗。

 こんな風に言われたら。 
 都合のよすぎる言葉の意味にしか取れないけど。

 つい今さっきまで、もう完全に、離れる決意を、してたのに。


「――――……ちょっと……」

 声が、掠れる。


 微かに、浮かんでる、都合のよすぎる期待と。
 ――――……まだ、期待するなという、臆病な、オレが居る。



「……顔、見せて」


 奏斗の頬に触れる。
 ぴく、と奏斗が震えたけど。
 嫌がられはしなくて。

 オレをまっすぐに見つめてくる瞳は。
 オレが、ずっと、欲しかった、瞳。な気が、した。




 さっき、蓋をしようとしていた、愛しいって気持ちが。
 溢れてくる、そんな感覚。


 奏斗に触れてる指が――――……震えそうだった。





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