上 下
503 / 551
番外編

番外編【諦めるか否か】大翔side 5

しおりを挟む


 今日は潤と姉貴と母さんと一緒にショッピングモールにやってきた。親父と葛城は、何か仕事があるらしい。

 ――これ綺麗だな。青い石のストラップ。
 凝りもせず、奏斗のことを思い出しながら眺めていると。

「わーそれ綺麗ー」
 潤がオレの手元を覗き込んで、笑顔でそう言った。

「ヒロくんの?」
「……おみやげかな」
「誰に―?」
「好きな人」

 ふ、と笑いながらそう答えたら、「誰?」と潤がオレを見上げてくる。

「ユキくん?」

 続けて、当たり前のように聞いてくる潤に苦笑していると、隣にいた姉貴がクスクス笑いだした。

「何でユキくんが最初にくるんだ?」
「潤も、ユキくん、好きだから……」

「でもママが一番なんだろ?」

 そう言うと、姉貴が「あらそうなの?」と笑う。

「うん。ママが一番だけど。ユキくん、好き」
「潤って、友達とかに好きな子は居るのか?」
「えーいるよー! ねー、ママ」

「うん。居るよね」
「居るけど……ユキくんが、にこってするの、好き」

「――――……」

 小さな甥っ子を、ちょっとマジマジと見てしまった。

「お前、見る目、あるな?」
 小さな頭をよしよしと撫でると、「みるめって?」と聞いてくる。

「んー。奏斗は、可愛いよなーってこと」
「うん。大好き」
「潤は、奏斗に、二回しか会ってないのにな?」

 そう言って、じっと見つめると、ふふ、と潤が微笑んだ。

「これからいっぱい会いたいー。あっ潤もユキくんにおみやげ買う―」

 わーいと、綺麗なストラップの商品が並ぶところに、とことこ小走りで寄っていく。その後ろ姿を見送って笑っていると、姉貴がオレを見つめた。

「ちょっと吹っ切れた? とか?」
「……どうだろ。振られたのはもう、振られてるし。迫っていいかも分かんねえけど」
「けど?」

「――――……会いたいから、会いに行く」

 もうその気持ちしかないかも。
 会ってどうするかなんてまだ分からない。

 ……和希と付き合ってるかは、聞くかも。それによって、自分の動きは決まるかもしれない。でも分からない。和希と付き合って無くても、オレとは無いって思うことだって、あるだろう。

 だけど。会いたい。

「ユキくんは……大翔のこと、嫌いだとは思わないよ」
「――――……」

 黙ったまま、姉貴に視線を向ける。

「……もともとゲイじゃない大翔が、お見合いとかの話までしてるいいとこのお坊ちゃんでしょ。いくらお父さんが、認めてもいいなんて言ったって、そんなとこに平気で飛び込んでくるタイプには、絶対見えない」
「――――……」

「振られたって、そういうことなんじゃないの」

 分からない。
 そうかもしれないし、そうじゃないかも。
 ……にしても。

「姉貴だって、奏斗に会ったの、二回じゃんか」
「え?」
「……何でそんな――――……核心ポイとこ、ついてくるわけ」

 そう言うと、姉貴はクスクス笑い出した。

「ほんと怖わ……」
「……失礼な」

 苦笑の姉貴に、ふ、と息をついたその時。

「ねーヒロくん!! これにするー」

 綺麗なオレンジ色の石がついたストラップを、小さい手に握りしめて、潤がオレのところに駆け寄ってくる。

「喜ぶかなあ」
「ん。喜ぶよ」
「ほんとー?」
「絶対喜ぶって」

 ふ、と笑って言うと、潤はニコニコ嬉しそう。
 潤に言ったようで、実は自分に言ってる感覚。

 
 会って、話して、お土産とか渡せるような感じで、話せたらいいけど。
 そんな風に思う。


「わー素敵。ユキくん、喜ぶね」
「うん!」

 無邪気な笑顔に、大分救われる。


 その時。
 スマホが震えた。メールの着信音。


「――――……」

 何気なく見たそれは、椿先生からの連絡だった。

 夏休み、一度集まりませんか、と。
 日程は……早めに帰ればなんとか間に合うかな、という日付だった。

 ここに行けば、とりあえず、変な感じでなく、自然と会えるだろうか。

 ……奏斗は、来るだろうか。


 強制じゃないし、帰省してないなら、という緩い誘いだ。
 オレが来るかもしれないところに、来ないかもしれない。


 でも。
 ……来るかも、しれない。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...