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番外編
番外編【諦めるか否か】大翔side 5
しおりを挟む今日は潤と姉貴と母さんと一緒にショッピングモールにやってきた。親父と葛城は、何か仕事があるらしい。
――これ綺麗だな。青い石のストラップ。
凝りもせず、奏斗のことを思い出しながら眺めていると。
「わーそれ綺麗ー」
潤がオレの手元を覗き込んで、笑顔でそう言った。
「ヒロくんの?」
「……おみやげかな」
「誰に―?」
「好きな人」
ふ、と笑いながらそう答えたら、「誰?」と潤がオレを見上げてくる。
「ユキくん?」
続けて、当たり前のように聞いてくる潤に苦笑していると、隣にいた姉貴がクスクス笑いだした。
「何でユキくんが最初にくるんだ?」
「潤も、ユキくん、好きだから……」
「でもママが一番なんだろ?」
そう言うと、姉貴が「あらそうなの?」と笑う。
「うん。ママが一番だけど。ユキくん、好き」
「潤って、友達とかに好きな子は居るのか?」
「えーいるよー! ねー、ママ」
「うん。居るよね」
「居るけど……ユキくんが、にこってするの、好き」
「――――……」
小さな甥っ子を、ちょっとマジマジと見てしまった。
「お前、見る目、あるな?」
小さな頭をよしよしと撫でると、「みるめって?」と聞いてくる。
「んー。奏斗は、可愛いよなーってこと」
「うん。大好き」
「潤は、奏斗に、二回しか会ってないのにな?」
そう言って、じっと見つめると、ふふ、と潤が微笑んだ。
「これからいっぱい会いたいー。あっ潤もユキくんにおみやげ買う―」
わーいと、綺麗なストラップの商品が並ぶところに、とことこ小走りで寄っていく。その後ろ姿を見送って笑っていると、姉貴がオレを見つめた。
「ちょっと吹っ切れた? とか?」
「……どうだろ。振られたのはもう、振られてるし。迫っていいかも分かんねえけど」
「けど?」
「――――……会いたいから、会いに行く」
もうその気持ちしかないかも。
会ってどうするかなんてまだ分からない。
……和希と付き合ってるかは、聞くかも。それによって、自分の動きは決まるかもしれない。でも分からない。和希と付き合って無くても、オレとは無いって思うことだって、あるだろう。
だけど。会いたい。
「ユキくんは……大翔のこと、嫌いだとは思わないよ」
「――――……」
黙ったまま、姉貴に視線を向ける。
「……もともとゲイじゃない大翔が、お見合いとかの話までしてるいいとこのお坊ちゃんでしょ。いくらお父さんが、認めてもいいなんて言ったって、そんなとこに平気で飛び込んでくるタイプには、絶対見えない」
「――――……」
「振られたって、そういうことなんじゃないの」
分からない。
そうかもしれないし、そうじゃないかも。
……にしても。
「姉貴だって、奏斗に会ったの、二回じゃんか」
「え?」
「……何でそんな――――……核心ポイとこ、ついてくるわけ」
そう言うと、姉貴はクスクス笑い出した。
「ほんと怖わ……」
「……失礼な」
苦笑の姉貴に、ふ、と息をついたその時。
「ねーヒロくん!! これにするー」
綺麗なオレンジ色の石がついたストラップを、小さい手に握りしめて、潤がオレのところに駆け寄ってくる。
「喜ぶかなあ」
「ん。喜ぶよ」
「ほんとー?」
「絶対喜ぶって」
ふ、と笑って言うと、潤はニコニコ嬉しそう。
潤に言ったようで、実は自分に言ってる感覚。
会って、話して、お土産とか渡せるような感じで、話せたらいいけど。
そんな風に思う。
「わー素敵。ユキくん、喜ぶね」
「うん!」
無邪気な笑顔に、大分救われる。
その時。
スマホが震えた。メールの着信音。
「――――……」
何気なく見たそれは、椿先生からの連絡だった。
夏休み、一度集まりませんか、と。
日程は……早めに帰ればなんとか間に合うかな、という日付だった。
ここに行けば、とりあえず、変な感じでなく、自然と会えるだろうか。
……奏斗は、来るだろうか。
強制じゃないし、帰省してないなら、という緩い誘いだ。
オレが来るかもしれないところに、来ないかもしれない。
でも。
……来るかも、しれない。
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