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番外編
【当たり前に】奏斗side 10 終
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「……ん」
「あ。目、覚めた?」
「うん……」
なかなか開かない目を、一度ぎゅ、と閉じてからゆっくりと開き、起き上がる。散々乱れたところは綺麗に拭かれていて、肌がサラサラしてる。
ちょうどオレにTシャツを着せようとしてた所みたいで、自分で腕を通して着てから、四ノ宮を見上げた。
「ごめん。ありがと」
「ごめんて言わなくていいよ」
優しい笑いを含んだ声でそう言って、四ノ宮はオレの隣に座ると、ちゅと頬にキスしてきた。
「きつかったよね。こっちがごめん」
こっちこそ。謝んなくていいのにと、首を振ると、四ノ宮はクスッと笑った。
「ていうかさ。ああいう時に名前で呼ぶの、逆効果だよ……」
「……」
早く終わらせてほしくて、聞いてくれるかなと、ちらっと思ったんだけど。
……確かに激しくなっちゃっただけな気は、していた。
「それとも、その方が良かった?」
「……っ違うし」
なんか顔が熱くなりそうで、むっとして眉を顰めたまま、オレは、四ノ宮に近づいてその胸に埋まった。顔を隠したまま、すり、と前髪で四ノ宮の顎を擦る。
「――――」
むぎゅ、と抱き締められて、何だかやたら顎で、頭にすりすりし返される。
「……かわいい」
むぎゅ。と抱き締めてくる。
「んー……な、喉乾いた……」
「あ、はいはい」
用意されてたみたいで、少し動いた四ノ宮に、水のペットボトルを渡される。水を飲んで、ふ、と息をついて、四ノ宮を見上げると、四ノ宮がオレを見つめて微笑んだ。
「なんか感動する」
「……?」
感動? と、不思議に思って見上げると、すり、と頬を撫でられる。
「奏斗がここに居るってことがね。感動」
返す言葉がとっさに浮かばない。
そんな、感動するほどの奴じゃないけどな……と、またちょっとそんな言葉も浮かぶし。一方で、そんなのオレだって、四ノ宮がここに居ることに感動するって思う気もするし。
なんて返そうかなと考えてから、ふと思いついた。
「四ノ宮がさ」
「ん」
「オレと居て、幸せなら」
「うん」
「オレの時間を、全部、あげてもいいよ」
「――――……」
あれ、返事がない。
……変なこと言ったかな? 時間全部とかありえないかな?
「まあさ、勉強したり、その内仕事したり、他の人にも会うだろうし、付き合いとかもあるだろうから、本当に二十四時間全部、とかは無理だと思うけどさ」
「……」
「必要なのを除いた、オレの時間は、全部……欲しいなら貰ってって思ったんだけど。へんなこと言った?」
何とも言えない顔をしてオレを見つめているので、思わず、最後の方は不安になりながら聞くと、途端にぎゅっと抱き締められた。
「つか。幸せに決まってるし、欲しいに決まってるじゃん。もし、みたいな言い方しないで」
四ノ宮は、クスクス笑いながら、オレを抱き締めたまま、オレの頭を、よしよしと撫でた。
「あ。うん。だからとにかくね……感動とか、もいいけど。当たり前、って思ってていいからね」
そう言うと、きつく抱き締められたまま、少し時間が経って。
四ノ宮がクスッと笑った。
「――つかさ。その、当たり前にいられるのが、感動なんだけどね……」
笑みを含んだ優しい声がして。頬に手が触れる。
そのまま、上向かされたと思ったら、唇が触れてきた。
「……愛してるよ。奏斗」
そんな風に囁く四ノ宮に、深くキスされる。
優しい瞳、優しい声、優しい触れ方。
でも、いつも、熱い。
四ノ宮とこうなるまで。今が幸せなら、それでいいって。思ってたけど。
……このままずっと、一緒に幸せがいいなって。
先のことを願うのも悪くないなと、思う時がある。
「……大翔」
ちゅ、とキスし返したら。
「あ、それもうだめだ、奏斗」
「え? あ」
手首を取られて、ころん、とベッドに押し倒された。
「――――……」
顔を見ると。なんかもうすっかりその気らしい。
……確かにダメみたい。せっかく綺麗に拭いてくれたのに。
ふ、と笑ってしまいながら。
ゆっくりと、唇が触れて、四ノ宮の重みが体にかかるのを感じて。
目を閉じた。
番外編【当たり前に】
Fin
◇ ◇ ◇ ◇
(2024/2/13)
前回も書きましたが、もいちどお知らせ。
準備ができ次第、ムーンライトノベルズさんに、改めてこのお話を転載します。去年も9月ごろに30話くらいのせたんですが、完結を優先して、止まってしまってまして💦
完結してから、色々読みやすくしてみたのと、1ページの文字数をかなり長めにとって、投稿していきます。
もし垢をお持ちでしたら、良かったら、そちらでもお読みいただけたらと思ってお知らせです(っ´ω`c) 読みやすくなってるはず……。また公開できたら、お知らせします。
↑ なので次の更新は、このお知らせになります。今週末か来週末位かな。
作品の更新じゃないので、必要なかったら更新の通知はスルーしてください♡
すみません。よろしくお願いいたします。
色んな番外編も考えているので。
またその内に……(っ´ω`c)💛
「あ。目、覚めた?」
「うん……」
なかなか開かない目を、一度ぎゅ、と閉じてからゆっくりと開き、起き上がる。散々乱れたところは綺麗に拭かれていて、肌がサラサラしてる。
ちょうどオレにTシャツを着せようとしてた所みたいで、自分で腕を通して着てから、四ノ宮を見上げた。
「ごめん。ありがと」
「ごめんて言わなくていいよ」
優しい笑いを含んだ声でそう言って、四ノ宮はオレの隣に座ると、ちゅと頬にキスしてきた。
「きつかったよね。こっちがごめん」
こっちこそ。謝んなくていいのにと、首を振ると、四ノ宮はクスッと笑った。
「ていうかさ。ああいう時に名前で呼ぶの、逆効果だよ……」
「……」
早く終わらせてほしくて、聞いてくれるかなと、ちらっと思ったんだけど。
……確かに激しくなっちゃっただけな気は、していた。
「それとも、その方が良かった?」
「……っ違うし」
なんか顔が熱くなりそうで、むっとして眉を顰めたまま、オレは、四ノ宮に近づいてその胸に埋まった。顔を隠したまま、すり、と前髪で四ノ宮の顎を擦る。
「――――」
むぎゅ、と抱き締められて、何だかやたら顎で、頭にすりすりし返される。
「……かわいい」
むぎゅ。と抱き締めてくる。
「んー……な、喉乾いた……」
「あ、はいはい」
用意されてたみたいで、少し動いた四ノ宮に、水のペットボトルを渡される。水を飲んで、ふ、と息をついて、四ノ宮を見上げると、四ノ宮がオレを見つめて微笑んだ。
「なんか感動する」
「……?」
感動? と、不思議に思って見上げると、すり、と頬を撫でられる。
「奏斗がここに居るってことがね。感動」
返す言葉がとっさに浮かばない。
そんな、感動するほどの奴じゃないけどな……と、またちょっとそんな言葉も浮かぶし。一方で、そんなのオレだって、四ノ宮がここに居ることに感動するって思う気もするし。
なんて返そうかなと考えてから、ふと思いついた。
「四ノ宮がさ」
「ん」
「オレと居て、幸せなら」
「うん」
「オレの時間を、全部、あげてもいいよ」
「――――……」
あれ、返事がない。
……変なこと言ったかな? 時間全部とかありえないかな?
「まあさ、勉強したり、その内仕事したり、他の人にも会うだろうし、付き合いとかもあるだろうから、本当に二十四時間全部、とかは無理だと思うけどさ」
「……」
「必要なのを除いた、オレの時間は、全部……欲しいなら貰ってって思ったんだけど。へんなこと言った?」
何とも言えない顔をしてオレを見つめているので、思わず、最後の方は不安になりながら聞くと、途端にぎゅっと抱き締められた。
「つか。幸せに決まってるし、欲しいに決まってるじゃん。もし、みたいな言い方しないで」
四ノ宮は、クスクス笑いながら、オレを抱き締めたまま、オレの頭を、よしよしと撫でた。
「あ。うん。だからとにかくね……感動とか、もいいけど。当たり前、って思ってていいからね」
そう言うと、きつく抱き締められたまま、少し時間が経って。
四ノ宮がクスッと笑った。
「――つかさ。その、当たり前にいられるのが、感動なんだけどね……」
笑みを含んだ優しい声がして。頬に手が触れる。
そのまま、上向かされたと思ったら、唇が触れてきた。
「……愛してるよ。奏斗」
そんな風に囁く四ノ宮に、深くキスされる。
優しい瞳、優しい声、優しい触れ方。
でも、いつも、熱い。
四ノ宮とこうなるまで。今が幸せなら、それでいいって。思ってたけど。
……このままずっと、一緒に幸せがいいなって。
先のことを願うのも悪くないなと、思う時がある。
「……大翔」
ちゅ、とキスし返したら。
「あ、それもうだめだ、奏斗」
「え? あ」
手首を取られて、ころん、とベッドに押し倒された。
「――――……」
顔を見ると。なんかもうすっかりその気らしい。
……確かにダメみたい。せっかく綺麗に拭いてくれたのに。
ふ、と笑ってしまいながら。
ゆっくりと、唇が触れて、四ノ宮の重みが体にかかるのを感じて。
目を閉じた。
番外編【当たり前に】
Fin
◇ ◇ ◇ ◇
(2024/2/13)
前回も書きましたが、もいちどお知らせ。
準備ができ次第、ムーンライトノベルズさんに、改めてこのお話を転載します。去年も9月ごろに30話くらいのせたんですが、完結を優先して、止まってしまってまして💦
完結してから、色々読みやすくしてみたのと、1ページの文字数をかなり長めにとって、投稿していきます。
もし垢をお持ちでしたら、良かったら、そちらでもお読みいただけたらと思ってお知らせです(っ´ω`c) 読みやすくなってるはず……。また公開できたら、お知らせします。
↑ なので次の更新は、このお知らせになります。今週末か来週末位かな。
作品の更新じゃないので、必要なかったら更新の通知はスルーしてください♡
すみません。よろしくお願いいたします。
色んな番外編も考えているので。
またその内に……(っ´ω`c)💛
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