上 下
495 / 551
番外編

【当たり前に】奏斗side 8

しおりを挟む
 少しして落ち着いてから、外はダメだよ、と四ノ宮を見上げると。
「ちゃんと見てからしたよ」と言う四ノ宮。

「でもどこから見えてるか分かんないし。外ですんのは無し」
 そう言うと、四ノ宮はクスクス笑って考えてから、少し首を傾げた。

「無理だよ。可愛いんだもん」
「無理とかじゃなくて」
「そもそもオレは別に、誰にバレても困んないし」
 そんな言葉に、オレは四ノ宮を見上げる。

「困るでしょ、色々」
「何が困んの? それが原因で引いてく奴は最初からいらないかなぁ。なんも困んない気がする」
「――――……」

 四ノ宮の言う言葉は、かなり極論な気がするんだけど。

「いつかもうオープンに、しようね」

 ふ、と笑う四ノ宮。
 ……ちょっとまだそこまでは頷けないけど。

 なんかいつか四ノ宮のこの感じに押されて、そうなるかもしれないとか。
 それが怖いような。怖くないような。なんかよく分かんない気持ち。
 オープンにするかもなんて、今までの人生で考えたことすらなかったのに。

 ……絶対知られたくないと思ってた。誰にも。
 でもなんか、今は……少し前と、大分違う。

 四ノ宮が居てくれるっていうのは大きいかもしれないけど。
 もし、四ノ宮が居なくなっても、オレはオレ自身のそれを、別に恥じなくてもいいのかなって。拒否られるかもしれないけど受け入れてくれる誰かは居るって、なんか少しだけ、思えるようになってる。……かも。

「奏斗、悩んじゃった?」
「ん。悩んでないよ」
「そっちは追々考えるとしてさ、とりあえず他人のことより先に……家族に会いに行こうね」
「でも、そっちも急がなくていいよ。今みたいに一緒に居られればいいし」
「うんまあ。そうなんだけど」

 四ノ宮はオレを見つめて、んー、と考えてから。

「でもやっぱり、一緒に住みたいな」
「でも、もうちょっと今のままで様子見た方がいいかもだしさ」
「何で?」
「しばらく居たら、やっぱり違ったってなるかもしんないし」

 どうかわかんないじゃん? と言ってみると。
 四ノ宮は、予想通り、む、と目を据わらせる。

「それって、違ったってどっちがなると思ってるの? 奏斗がなる?」
「オレじゃなくて、四ノ宮が、かな」
「――――それなら、無いから大丈夫」

 途端に上機嫌になったので、あれ? と見上げると。

「奏斗はなんないんだなーと思ったら嬉しい」

 楽しそうに笑う四ノ宮。

 ……なる訳ないと思うし。
 毎日毎日。好きだなって、オレ、思ってるし。

 四ノ宮を否定しようとしてた時も惹かれてた位だから。そうそう嫌いになったりできる気がしない。
 そう思っていると、四ノ宮がクスクス笑いながらオレを見つめた。

「いまさら、奏斗にちょっとやなとこがあったからって、嫌いになんかならないよ」
「――――……」
「てか、嫌って思わないし、奏斗がしてると、全部可愛い」
「……病気?」

 苦笑しながら言ったオレに、んー? と少し笑ってから。

「そかもね。恋は病っつーでしょ」
「――――」

 何言ってんだろと思うけど。
 でも、四ノ宮のことを考えると。

 ……ちょっと分かる気もしてしまうから。オレも病気かもしんない。
 





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉

あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた! 弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...