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番外編
【当たり前に】奏斗side 6
しおりを挟む映画グッズのショップの前で「パンフ買いたいな」と言うと、四ノ宮はいいよ、と頷いてくれる。
外で並ぶと、身長差を実感するんだよなー。
あと、とにかく目立つってことも。
もうちょっと背が低かったら、ここまで視線集めないんだろうけど。
人より飛び出たとこにある顔が、こんな感じだと、どうしても見ちゃうんだろうな。……分かるけど。
四ノ宮は今は、店内をキョロキョロ見回しているので、オレが見てるのは横顔。その四ノ宮を見てる人の視線を、オレは感じるけど、四ノ宮はやっぱり全然気にしてない。
あれ。ちっちゃい女の子まで、四ノ宮のこと、見てる。
どんな視線なんだろ。あれ。カッコイイなあとか、思ってるのかな。
ちっちゃいから全く遠慮が無くて、おもいっきりじーっと見つめてて、なんかすごく、可愛い。
四ノ宮も、少し歩き進んだところで、下の方から自分を見上げて、固まってるちっちゃい女の子に気づいた。
「……?」
四ノ宮は少し首を傾げてから、オレを見つめて、オレが、くすっと笑うと。四ノ宮はオレに笑い返したそのままで、女の子に笑いかけた。
「どうしたの?」
笑いかけられたその子は、わぁぁ、ととびきり笑顔になって、ママー!!と走り去っていった。
「え、オレ、不審者?」
四ノ宮は苦笑いだけど。
「違うでしょ」
めっちゃ笑顔だったじゃん、と思ったところで。
「ママ―!! イケメンがいたーーー!」
まだ舌足らずな声の叫び声が聞こえてきて、ショップの中が、そこに居た人の笑いでざわつくという。
「……おもしろ」
クックッと笑ってる四ノ宮。
イケメンだってさ、とオレに笑いかけてくる。
まあもうそれはそうだと思うけど。
「あんなちっちゃい子も思うんだね。すごいと思う」
「オレは奏斗に言われるのが一番嬉しい。つか、奏斗からだけでいい」
「――――」
「ていうか、奏斗だって超イケてるじゃんね」
囁かれる言葉。
……返す言葉が見つからないので、べ、と舌を見せたら。
「キスするよ」
そんな風にまた囁かれて、もう恥ずかしいので、そっぽを向いた。
「ちっちゃい子で思い出したけど、潤が奏斗に会わせてって騒いでるらしい」
「あ、ほんと。オレも会いたいな」
「……」
「え?」
「浮気だめだかんね」
「――――嘘だろ……」
とっさに出てきた、とても静かなトーンの自分の言葉に、自分でおかしくなってしまって、ふ、と笑うと、四ノ宮は、「冗談じゃないしー」と言ってくる。
「え。冗談じゃないの?」
と、またも、冷えるオレの言葉に、四ノ宮は、むむ、と眉を寄せた。
「あいつあのまま大きくなったら、絶対奏斗んとこ、迫りに来るかんね」
「……絶対無いよ、何個離れてんの。えっと……十七ことか?」
「そうだけど」
「潤くんが二十の時、オレ、三十七?八? もう、おじさんじゃん」
「奏斗の三十七なんて可愛いと思うけど」
「……」
ちょっと無言。
「……うーん」
「ん? 何?」
「まあ。四ノ宮と、いるなら。……可愛く? いや可愛くはないか。それなりに。良い感じで年取りたいけど」
「あーほら! そうやって、可愛いこと言いながら可愛く育ったら、絶対あいつ、来るかんね!」
「可愛く育ったらって……ちょっとお前さ、おかしいから、言ってること」
「あーやだやだ。三歳児に目を付けられるって何な訳」
「ていうか、四ノ宮だって、さっきの女の子、それ位じゃん」
「オレがあの子とどうかなる訳ないじゃん、犯罪だよ」
「いやいや、おんなじこと言ってるって分かんない?」
「潤は、姉貴の子だからね。もー絶対強いから」
あーやだやだ。と苦笑しながら四ノ宮が言ってる。
「可愛い甥っ子でしょ」
「可愛いけどさ。今はね?」
「ずっと可愛いって。潤くん、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
「あーだめだめ、そうやって、可愛がってると、もうほんと……」
「もー……」
本気なのかな、こいつ?? とちょっと思いながらも。
「オレが、他の奴んとこ、ふらふらいくと思う??」
「――――」
ん。という顔で、オレを見る四ノ宮。
「そんな簡単に、誰かんとこに、ふらふらーて行くと思うの?」
「……思わない」
四ノ宮は、何だか急に嬉しそうに笑ってそう言った。
「じゃあ、そういうことで」
「……そだね」
うんうん、みたいな嬉しそうな四ノ宮には。
なんだか最近、耳と尻尾が見える時がある。
可愛い犬じゃないけど。どう考えても、大型犬だけど。
幻が見える。
でもって、そういう時の四ノ宮が、オレは、愛しくてたまんない。
……っていうのは、言ってないけど。
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