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番外編
【当たり前に】奏斗side 2
しおりを挟む結局あの後、映画館にやってきた。
「早く帰りたかったのに」
四ノ宮がふざけて、最後にもう一度言ってからは、いつも通り。
何がやってるかは全然見ずに、一番面白そうなのを見ようって言いながら映画館に来たら、前にオレの家で四ノ宮と一緒に見た映画の続編がまだやってたので、即決。チケット売り場が結構混んでて、列の最後尾に並んだ。
「この映画一緒に見た時、奏斗、ボロボロ泣いてたよね」
「オレ毎回泣くから。ていうか、この場面が来るって思うだけで泣けるから」
そう言うと、四ノ宮はクスクス笑う。
「四ノ宮は泣いてなかったね」
「そんなに素直に泣けないし」
四ノ宮はオレを見つめて、ふわりと微笑む。
「奏斗はものすごーく、素直だよね」
「るさい」
「誉めてるよ?」
むむ、と睨むけど、なんか見つめてくる瞳がやたら優しいので、何も言うことなく、列の先に視線を向けた。
「……なんかさ」
「ん?」
「オレの部屋で映画見た時は、こんな風になるなんて、思わなかったよね」
「んー……そう、だね」
言いながら四ノ宮を見上げると、四ノ宮はオレを見て、ふ、と笑う。
「ボロボロ泣かれてほんとびっくりしたけど、今思い出すと、すげー可愛い。あん時の奏斗に、キスしたい」
「……四ノ宮、変」
「変て言わないでよ」
苦笑いの四ノ宮。でも、瞳が、優しい。
四ノ宮と付き合い始めて、日々感じること。
……なんか、すっごい、優しい。てこと。
冷めてるのかなとかクールなのかなとか。裏表良く分かんないとか思ってたとこは、ただ、気持ちを出さないようにしてただけ、みたいな気がする。
今は、何か全部口に出してくる気がするけど。
……なんかずっと、優しい。
「奏斗?」
ぽん、と背中に触れられて、前が進んでたことに気づいた。一緒に進みながら、四ノ宮がオレを見つめる。
「奏斗、何か食べる? ポップコーンいる?」
「うん、食べる」
「味は?」
「何があるかな?」
少し遠くの、メニューの看板を見上げる。
「キャラメルと塩バターと抹茶とかコンソメ、かな。奏斗、どれがいい?」
「えーと……」
「塩バター?」
何で分かるんだろうと思いながら「うん。それ」と言うと。
「ほかに食べてみたいのある?」
「んー。抹茶食べたこと無いなぁ」
「ハーフ&ハーフが売ってるから、それにしよっか。ふたりでいっこで良い?」
「うん。てか、四ノ宮は? 選ばなくていいの?」
「オレほんとになんでもいい。決まりね」
クスクス笑ってそう言う四ノ宮に、何で塩バターって言ったの?というと。
「なんとなく。バター好きじゃん?」
ふ、と笑ってオレを見つめる。うん。好きだけど。と頷くと、「抹茶、オレも食べたこと無い。どんなだろうね」なんて言って笑ってる。
オレ達の順番が来ると「オレ、買っちゃうね」と言いながら一歩先に進む。「あとで払う」と言うと、ん、と頷いて、そのまま四ノ宮がぽちぽち押してチケットの購入画面を進んでく。
「席、一番後ろでもいい?」
「うん。どこでもいいよ」
言った後で、一番後ろ? と思ったけど、特に何も言わず、四ノ宮が一番左後ろの席を取るのを見守る。
「ポップコーンと飲み物、買いに行こ」
背に触れられて、一緒にまたその列に並ぶ。
「映画デート、初めてだね」
ふ、と嬉しそうに笑って、囁いてくる。
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