【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
487 / 557
番外編

【全部って】真斗side 6 終

しおりを挟む

 少し考えてたカナが、オレを見て、あ、と口を開いた。

「もしかして、四ノ宮にも聞いた?」
 カナはオレに聞いたのだけど、四ノ宮さんが、クスクス笑って代わりに応えた。

「うん。聞かれたから、話したよ」
「……変なこと言ってない?」
「後で教えてあげる」

 からかうようにニヤニヤ笑う四ノ宮さんに、カナは、むむ、と眉を顰めながらも。ふ、と笑った。

「どこが、かぁ」

 んーと考えた後、あ、と楽しそうな顔をしたカナが笑顔で言ったのは。

「ご飯、美味しいとこ」
「え」

 カナがニコニコしながら言ったのは、それだった。

「それが一番?」
「ん? あ、うん。そうかな」

 四ノ宮さん、気を悪くしないのかな、と思ったけど、四ノ宮さんは、ちら、とカナを見て、ふ、と微笑む。

「オレもトイレ行ってくる」

 笑みを含んだ声で、そんな風に言いながら、四ノ宮さんは立ち上がって歩いていってしまった。


「つか、ご飯が一番って。四ノ宮さん怒んない?」
「うん、多分そんなのでは怒んないかな」

 ふふ、と笑いながら「……ていうか、ご飯ていうかね」と言って、カナはオレを見つめる。

「なんか、美味しくしようとか、綺麗に飾ろうとか、頑張って作ってくれる感じがしてね。料理ができるのはそうなんだろうけど……気遣ってくれる感じがすごくするっていうか」
「――――……」
「そういう風な四ノ宮がすごく良いな、と思ってて、つい出ちゃったんだけど。でも」

 はは、と笑ってから、カナはオレを見つめる。

「真斗にこんなの言うのは、恥ずかしいんだけどさ……」
「何? ていうかもう今更って感じ。はっきり言っていいよ」

 オレがそう言うと、すごく照れた顔をしたカナが。

「全部」
「ん?」
「……今は、もう、全部、好き」
「――――」

 カナも、全部って言った。
 全部好きって、そんなことマジで答える人、本当にいるんだなあ。ていうか、今実際二回も聞いてしまったけど。

「嫌いなとこ、ないの? 嫌なとことか」
「んー……今思いつかない、かな」

 しばらく考えてたカナがちょっと困ったみたいに、そう言った。
 本気で思い当たらないらしい。
 その表情を見ていたら「分かった。もう、十分」と、笑ってしまった。

「あ、でも色々言ってる時もあるから、そん時は何かあるのかも。なんか四ノ宮ってオレのこと、からかうの好きみたいな気がするし。だから、なんか、文句言ってる時もあるけど」
「ああ。なんとなく分かる……」
「あ、分かる?」
「うん」

 さっきも、からかうみたいな顔、してた気がするし。
 ……まあでも……カナのことが可愛いんだろうなって感じだった。

「でもなんか、今、嫌なとこ、とか考えても出てこないかなって感じ」
「じゃあいいんじゃねーの?」

 クスクス笑ってそう言ったら、カナも、ん、と微笑んで頷く。とそこへ。

「話、終わった?」
 笑いながら四ノ宮さんが戻ってきた。

「うん。なんとなく」
 カナが四ノ宮さんを見上げて、ニコッと笑う。
 ……嬉しそうに。

 そんなに全部好きってなってて、もしまた別れたりした時、カナは平気かなあ……と、一瞬心配がよぎってしまうのは、前の時に、やばかったカナを見てたからなんだけど。

「奏斗こそ、変なこと、言わなかった?」
 クスクス笑いながら、四ノ宮さんがカナの隣に腰かけて、カナを見つめた。

「全然。言ってないよ」
「ほんとに?」
「うん。……多分」
「多分って」

 四ノ宮さんの苦笑に、ふふ、と笑い返すカナ。
 目の前でやたら仲良しな二人についつい。

「――――どっちも、結局、全部好きだって」

 そう言ってやると。
 二人は、え、と顔を見合わせて。それから、カナはぱっと視線を外して、明らかに照れてるし。
 四ノ宮さんは分かりにくいけど、多分照れてるみたいで、前髪を掻き上げながらカナから視線を外した。

 ……まあ、当分は、大丈夫そうな気がする。

 恋人いらない、を、どうやって乗り越えたのか分かんねーけど。
 ひたすら大事にしてるっぽい、四ノ宮さん。この感じで、どーにかしてくれたんじゃないのかなと、予想。
 
 カズくんの時とは違うのは、カナが、隠そうとしていないところ。少なくともオレに、四ノ宮さんの全部が好きとか、言えてるし。

 四ノ宮さんも、別にバレても、カナが幸せならいいって言いそう。

 ……良かったな。


 二人を見てなんだか安心して、店の前で別れた。
 なんとなく、オレが見送る感じで。少し離れて振り向いて、バイバイしてくるカナに、小さく手を振り返す。

 

 ――――……。


 オレも、「全部好き」とか言える相手。
 真面目に探してみようかな。



 なんて、ちょっと柄にもないことを、考えた。









しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

処理中です...