487 / 556
番外編
【全部って】真斗side 6 終
しおりを挟む少し考えてたカナが、オレを見て、あ、と口を開いた。
「もしかして、四ノ宮にも聞いた?」
カナはオレに聞いたのだけど、四ノ宮さんが、クスクス笑って代わりに応えた。
「うん。聞かれたから、話したよ」
「……変なこと言ってない?」
「後で教えてあげる」
からかうようにニヤニヤ笑う四ノ宮さんに、カナは、むむ、と眉を顰めながらも。ふ、と笑った。
「どこが、かぁ」
んーと考えた後、あ、と楽しそうな顔をしたカナが笑顔で言ったのは。
「ご飯、美味しいとこ」
「え」
カナがニコニコしながら言ったのは、それだった。
「それが一番?」
「ん? あ、うん。そうかな」
四ノ宮さん、気を悪くしないのかな、と思ったけど、四ノ宮さんは、ちら、とカナを見て、ふ、と微笑む。
「オレもトイレ行ってくる」
笑みを含んだ声で、そんな風に言いながら、四ノ宮さんは立ち上がって歩いていってしまった。
「つか、ご飯が一番って。四ノ宮さん怒んない?」
「うん、多分そんなのでは怒んないかな」
ふふ、と笑いながら「……ていうか、ご飯ていうかね」と言って、カナはオレを見つめる。
「なんか、美味しくしようとか、綺麗に飾ろうとか、頑張って作ってくれる感じがしてね。料理ができるのはそうなんだろうけど……気遣ってくれる感じがすごくするっていうか」
「――――……」
「そういう風な四ノ宮がすごく良いな、と思ってて、つい出ちゃったんだけど。でも」
はは、と笑ってから、カナはオレを見つめる。
「真斗にこんなの言うのは、恥ずかしいんだけどさ……」
「何? ていうかもう今更って感じ。はっきり言っていいよ」
オレがそう言うと、すごく照れた顔をしたカナが。
「全部」
「ん?」
「……今は、もう、全部、好き」
「――――」
カナも、全部って言った。
全部好きって、そんなことマジで答える人、本当にいるんだなあ。ていうか、今実際二回も聞いてしまったけど。
「嫌いなとこ、ないの? 嫌なとことか」
「んー……今思いつかない、かな」
しばらく考えてたカナがちょっと困ったみたいに、そう言った。
本気で思い当たらないらしい。
その表情を見ていたら「分かった。もう、十分」と、笑ってしまった。
「あ、でも色々言ってる時もあるから、そん時は何かあるのかも。なんか四ノ宮ってオレのこと、からかうの好きみたいな気がするし。だから、なんか、文句言ってる時もあるけど」
「ああ。なんとなく分かる……」
「あ、分かる?」
「うん」
さっきも、からかうみたいな顔、してた気がするし。
……まあでも……カナのことが可愛いんだろうなって感じだった。
「でもなんか、今、嫌なとこ、とか考えても出てこないかなって感じ」
「じゃあいいんじゃねーの?」
クスクス笑ってそう言ったら、カナも、ん、と微笑んで頷く。とそこへ。
「話、終わった?」
笑いながら四ノ宮さんが戻ってきた。
「うん。なんとなく」
カナが四ノ宮さんを見上げて、ニコッと笑う。
……嬉しそうに。
そんなに全部好きってなってて、もしまた別れたりした時、カナは平気かなあ……と、一瞬心配がよぎってしまうのは、前の時に、やばかったカナを見てたからなんだけど。
「奏斗こそ、変なこと、言わなかった?」
クスクス笑いながら、四ノ宮さんがカナの隣に腰かけて、カナを見つめた。
「全然。言ってないよ」
「ほんとに?」
「うん。……多分」
「多分って」
四ノ宮さんの苦笑に、ふふ、と笑い返すカナ。
目の前でやたら仲良しな二人についつい。
「――――どっちも、結局、全部好きだって」
そう言ってやると。
二人は、え、と顔を見合わせて。それから、カナはぱっと視線を外して、明らかに照れてるし。
四ノ宮さんは分かりにくいけど、多分照れてるみたいで、前髪を掻き上げながらカナから視線を外した。
……まあ、当分は、大丈夫そうな気がする。
恋人いらない、を、どうやって乗り越えたのか分かんねーけど。
ひたすら大事にしてるっぽい、四ノ宮さん。この感じで、どーにかしてくれたんじゃないのかなと、予想。
カズくんの時とは違うのは、カナが、隠そうとしていないところ。少なくともオレに、四ノ宮さんの全部が好きとか、言えてるし。
四ノ宮さんも、別にバレても、カナが幸せならいいって言いそう。
……良かったな。
二人を見てなんだか安心して、店の前で別れた。
なんとなく、オレが見送る感じで。少し離れて振り向いて、バイバイしてくるカナに、小さく手を振り返す。
――――……。
オレも、「全部好き」とか言える相手。
真面目に探してみようかな。
なんて、ちょっと柄にもないことを、考えた。
150
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡
感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷
投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。
Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡
感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷
投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。
Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵
お気に入りに追加
1,681
あなたにおすすめの小説
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる