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番外編
【全部って】真斗side 1
しおりを挟むカナはほんと、めんどくさい。
別に今の時代、ゲイってことをそんなに後ろめたく思わなくていいんじゃないかと思う。偏見がある奴はいるかもしれないけど、その偏見を思い切り表に出すのは、タブーとされてる時代だと思うし。別に、言いふらしたらとも思わないけど、あんなに、悪いこと、みたいに思わなくてもいいのに。
――親父はほんとに頭が固くて。
家族に対してだからか、偏見を思い切り、表に出したけど。
カナが男を好きだろうが、女を好きだろうが、カナはカナで、関係ない。
何でそう思えないんだろうと、オレはずっと思ってたし、言ったこともあるし。でも、ずっと変わらなかった。カナも、分かってもらおうとは思ってない風に見えた。諦めてるみたいな感じ。
少し前、カナが夏休みに帰ってきて、ようやく、少し親父が変わった。
カナも。前とは、全然違ってた。
カズくんと会っても平気になるなんて、もうずっと無いんじゃないかと思ってたのに、駅でカズくんと会った時、こっちが驚くくらい平気そうで、思わず、好きな人が出来たの? て聞いた。
その相手は、四ノ宮さんだった。オレのバスケを応援に来てくれた、カナのマンションの隣人。
せっかく両想いっぽかったのに、離れたとか。
まためんどくさいこと、色々気にして、別れを選んだらしい。
それに関しては、オレが言うことではないけど、なんかほんとにもったいないなーと思っていた矢先。
カナから電話が来た。
「四ノ宮と付き合うことになった」って。
なんか照れたみたいな言い方で言ってたけど。まあ、正直それを聞いたら、ああ、そうだろうな、って感じで思った。
カナはどう見ても、絶対好きだったし。四ノ宮さんだってそうだろうなって感じがしたし。じゃなきゃあんなに、ついてきたり、オレに構ったりしないかなと思ったし。
――――今日は、カナと四ノ宮さんに会うことになってる。
先に待ち合わせの喫茶店に来て、紅茶を飲みながら待っていたら、入り口が開いた。
オレが座ってるところからちょうど、カナと四ノ宮さんが入ってくるところが見えた。
ドアを開けたのは四ノ宮さん。ドアをそのまま支えて、カナが入る。四ノ宮さんを振り返って、カナが多分、ありがととか言ってて、四ノ宮さんが頷いて笑う。
……そこで見つめ合う必要ある? と、心でツッコむオレ。
きょろ、と店内を見回しているので、オレは、その場で立ち上がって手を挙げた。
「あ」
オレを見つけて、笑顔のカナ。嬉しそうに歩いてくる。
……すげーニコニコしてる。
「真斗、お待たせ」
「こんにちは」
嬉しそうなカナと、めちゃくちゃイケメンな四ノ宮さん。
「ちゃんと会うのは初めてかも。四ノ宮さん」
「だね、真斗、とか何回か呼んでるけど」
ふ、と笑う四ノ宮さんは……ほんと顔、整ってるな。
カナが奥に座ると、四ノ宮さんがその隣に座る。
「真斗は、紅茶?」
「そう」
カナに聞かれて答えると、そっか、とカナがメニューを開いて、四ノ宮さんにも見せた。
「奏斗、カフェオレあるけど……朝飲んだから別のにする?」
「ん。ココア飲みたいな」
「ホットでいい?」
「ん」
短いやりとりのあと、四ノ宮さんが店員に注文した。
カナがカフェオレ好きなの知ってるのはまあ当然として。
まだ一緒には住んでないと思うけど「朝飲んだから」とか。「ココアはもう当然ホット」みたいな。
一緒に飲んだのが「朝」だもんな。
ずっと一緒に居るのかなぁと、二人のやり取りを聞きながら、オレは無言。
店員が居なくなると、変な沈黙が少し流れた。
「えっと……」
カナが、ちょっと照れて困ったようにそう言って、テーブルの上で両手を握った。何て言おうか困ってるみたいなので。
「――――良かったね、カナ」
カナが何か言うより早く、そう言ってまっすぐ見つめると。
カナも、まっすぐオレを見つめ返してから、にっこり笑って頷いた。
そのカナを見て、めちゃくちゃ優しく微笑んでる四ノ宮さんも、目の端っこに映ってる。
――――四ノ宮さんは、カナのいっこ下って言ってたけど。
なんか、むしろ年上みたいに見えるな。
カナ、幼く見えるもんな。
……今なんて、ほんと無防備な感じでニコニコ笑ってるから、余計にそう見える。
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