【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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未来

「推し」*奏斗

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 四ノ宮は頬をすり、と撫でて、じっと見つめてくる。

「これ、ほんとに嫌味じゃないけど……わりと経験はあるのに、なんでそんなに反応がウブなんだろね、奏斗って」
「オレで遊ばないでよ」
「だって可愛いんだもん」

 オレの手からタオルを受け取ると、髪を優しくわしゃわしゃしてくれる。最後に、顔を覗き込まれて、ふ、と笑われる。

「まあ、あれだよね。セックスだけしてた時は、こんな反応してなかったでしょ」
「――――ぅん」

 確かに、赤面するとか、無かった気がする。
 なんていうか……それだけのために会ってる人で、恥ずかしいとかもないし、ときめくとかも、なかったし。むしろ、心の中は冷静だったというか。

「オレも、遊んでただけの時は、こんなに可愛いとかそういうの思えなかったから、多分一緒だね」

 オレの髪を拭いたタオルもかごに放り、四ノ宮は、ちゅ、と頬にキスをしてきた。

「気持ちが無いセックスは、もうしない。オレも、奏斗もね?」
「うん」
「過去のことはもう忘れちゃおうね。オレが遊んでたのもどっか遠くに捨てて?」

 苦笑いの四ノ宮を見上げて、オレも微笑んで、ん、と頷いた。

「水持って、ベッド行こ。部屋、そろそろ冷えてるだろうから」

 Tシャツが大きいとはいえ、それしか着てないので、それを考えるとものすごく恥ずかしいけど、とりあえず手を引かれるままキッチンについていく。水のペットボトルを一本渡されて、四ノ宮も一本持って、また寝室に向かって歩き始めた。

「……そのカッコ、死ぬほど可愛い」

 四ノ宮に振り返られてそう言われて、かあっと赤くなりながら、「オレは死ぬほど恥ずかしいけど」と答えたら、ははっ、と笑われた。

 寝室はもう涼しくなっていた。
 ……ここに入るの、久しぶり。少し緊張しながら、ベッドに並んで座ってペットボトルの蓋を開けた。
 さっき、バスルームに行った時の四ノ宮だと、もう即、シようって感じだったのに、ちょっと落ち着いたのかな? と思いながら、水を口に含む。
 オレの方はさっきから、めちゃくちゃ心臓が痛いような。鼓動が早すぎて、もう上半身裸の四ノ宮にドキドキが抑えられない位、なのだけど。

「奏斗、少し気になること、話していい?」
「え? あ、うん」

 気になること?
 オレは頷きながら、隣の四ノ宮を見つめた。

「タイミング的に、和希とより戻したいのかなって思ったから、オレ、諦めようと思ったんだけど。……違ったなら何であの時だったの?」
「……ごめん。あの、違くって……偶然和希に会って、オレ、最初は固まってたんだけど……四ノ宮が頭に浮かんできて、さ。大丈夫ってよく言ってくれる声が聞こえた気がして」
「うん」
「そしたら、なんか平気になって……普通に和希と、話せたの。そしたら、それを見てた真斗に、好きな人でもできたの? て聞かれて……その時、オレ、四ノ宮が好きなのかもって、気付いた、というか……」

 そう言うと、四ノ宮は少し考えてから、首を傾げた。

「そこで気づいたなら、何でそのままオレに好きって言わずに、離れる結論に直行すんの?」
「……だから……離れた方が」
「ああ。……オレのためってやつに繋がるのか……」

 なるほど、と呟いてから、四ノ宮は苦笑いを浮かべて、オレを見つめてくる。

「奏斗のそこら辺の思考って、ほんとネガティブだよね……そこはこれから直そうね。まあ、オレと居れば直ると思うし」

 何やら自信満々で笑いながら言って、四ノ宮はオレを見つめる。

「うん。……直す。そういえば、真斗にもいっぱい言われた。カナはめんどくさいって」
「そうなの?」
 四ノ宮が、クスクス笑う。

「……真斗は、四ノ宮推し、らしいよ」
「そうなんだ。嬉しいな……ていうか、うちの家族も皆、奏斗推しだから」

 そう言って、潤だけは別の意味で奏斗推しだけど、と可笑しそうに笑う。

「奏斗と居られるなら、オレも、なんだって頑張るつもりだけど……一番近い人たちは賛成してくれそうな気がする」

 微笑みながら、四ノ宮が手を頬に触れさせてくる。

「覚えといて。オレにとっては、奏斗と居ることが最優先事項だから。その他のことは、どうにでも、なんとでも、するから」
「――――うん。オレも……頑張る」

 頷きながら見つめ返すと、ちゅ、と唇にキスをされる。




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