【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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未来

「愛しい」*奏斗

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「ありがと……」
 
 その言葉を言ってくれる、四ノ宮のことは、好きだと思う。
 でも。

「でもね、その、怖かったのは……あの時のオレで……」
「……ん」

「……今、考えると、少し違う風に思えてる、かも」
「うん」

「付き合ったら、別れることはあるかもしれないけど……でも別れてもオレ、前みたいにはならないと思う。怖がって一人でいるより、離れようってならないように……大事にしたいって、思う」

 オレは、四ノ宮を見上げて、右手で、その頬に触れた。
 
「四ノ宮のこと、今……オレが、幸せにしたいって――――思っちゃってるんだけど……いい?」

 最後の方は、少し……いや、かなり、勢いが落ちながら、言ったら。
 ふ、と四ノ宮が笑った。

「いいに決まってるし。――――言ったよね。オレ、奏斗が笑っててくれれば、幸せだって」

 嬉しそうに笑う四ノ宮。
 久しぶりに見た気がする、全開の笑顔に、胸がきゅ、と締め付けられる。

「奏斗」
 四ノ宮はオレを腕の中に引き入れて、抱き締めた。

「奏斗がオレを、幸せにしてくれるの?」

 触れてしまいそうなくらい至近距離で、じっと、見つめられる。

「――――……」

 これに頷いたら。今までの、離れる決意とか、馬鹿みたいに無駄になるし。
 四ノ宮の、「普通の幸せ」は、やっぱり叶えてあげられないし。
 オレだって、あんな、世界の違うところに入ってくには、相当、覚悟がいるわけだし。 

 ……でも。
 さっきの泣き顔とは打って変わって、すごく嬉しそうに、オレを見つめて笑う四ノ宮の顔。 

 愛しいって、思ってしまう。
 ……ていうか、いつからかずっと、そう思ってたのかもしれない。気持ちに、気付かないように、してきただけで。

 ドキッてしたり。可愛いって思ったり。
 ずっと。愛しかったのかも。

「うん。する。……幸せに、したい」

 言った瞬間、重なってきた唇。
 何度か触れては離れて。
 見つめ合ったまま。

 鼓動がどんどん速くなって。
 体温が、あがってく感じ。

「……っふ……」

 柔らかいキスでしかないのに、少し震えて声が漏れた。きゅ、と瞳を閉じると。

「奏斗」

 笑みまじりの声で、四ノ宮に呼ばれる。瞳を開けると、まっすぐ見つめてくる瞳が、優しく緩んで。

「……奏斗」

 嬉しそうに呼ばれて。胸がきゅう、となった瞬間、ゆっくりキスされる。
 舌がオレの舌に触れると、いきなり深く絡んできて、また、ぎゅ、と瞳を閉じる。

「……っん、ふ……」

 ――――……四ノ宮のキス、だ。

 嬉しくて。
 涙が、滲む。


「……奏斗」

 は、と熱い息が漏れる、その唇の間で、四ノ宮がオレの名前を囁く。

「……っ、ん……」

 見上げて、視線が絡むと。
 胸が。苦しい。

 ――――しばらくキスされて、それから、ゆっくりと唇が離れた。

「奏斗……」

 四ノ宮の手が、オレの頬にかかる。至近距離で、まっすぐ見つめられる。

「他の難しいことは全部どうにかするから。家がとか、この先がとか、全部なしで……今、オレのこと、好き?」

 そんな風に聞かれて、何度か瞬きをして、四ノ宮を見つめる。


「うん。――――……大好き」

 ……やっと、言えた、言葉。

 胸が詰まって、自分で言った言葉に、なんか苦しい。

 見つめ合って数秒。四ノ宮は、ぎゅっと瞳を閉じた。と思ったら、そのまま、四ノ宮の頭が、オレの肩にぽふっと沈む。

「……超、嬉しいんだけど」
「――――」

「……嬉しくて死にそうとか……ほんとに思うんだね」

 ……ていうか、オレは、そんなことを言う四ノ宮が可愛くて。愛しくて。

 もうなんだか、胸が痛くて。


 でも、幸せで。
 ――――……オレも、死にそう。




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