472 / 555
未来
「見つめ合うと」*奏斗
しおりを挟む唇を離して、そのまま、見つめ合う。
「かなと……?」
「……あの」
言うのに、ものすごく、躊躇う。
ほんとにいいのかなって、まだ思ってるけど。
でも、その気持ちよりも、今はもう、言いたい気持ちの方が強い。
「オレ、四ノ宮と、ずっと居てもいい?」
「――――」
驚いた顔をされて、思わず俯く。
どうしよう。これ、言っていいんだろうか。……でも。
四ノ宮に言いたい。
「……いっぱい、気になることあるけど、オレ、この世で一番、四ノ宮に泣いてほしくない。……笑っててほしい」
「――――」
「四ノ宮が幸せになれないなら、離れたくない。……四ノ宮が、オレと居て幸せなら、オレ、お前と居たい」
俯いたまま、全部一気に言い尽くすと。
四ノ宮が、ちょっと顔見せて、とオレの顔に触れて、上げさせた。
見つめ合っていると、浮かんできてしまうのは、ずっと気になっていた、オレには絶対してあげられないことばかり。
それを、オレは、言ってみることにした。
「オレとじゃ、普通の幸せは無理だと思う。結婚して、子供とか、そういうの。……潤くん、すごい可愛くて……四ノ宮に似てて――――オレじゃ、そういう幸せはあげられないんだけど……」
「――――」
「……それでも、いい? ……ってよくはない、と思うんだけど……」
ああもうすでに何言ってるか良く分からない。
どうしたいんだ、オレ。
そう思った瞬間。
「それはさ、奏斗」
ぐ、と、二の腕を掴まれる。四ノ宮が眉を寄せて、オレをまっすぐに見つめてくる。
「それは、オレだってそうだよ。オレと付き合ったら、そういうのはしてあげられない」
「でも、四ノ宮は、もともとは」
「もともとどうとか関係ない。オレ達、お互い、それはあげられないってのは分かってる」
「――――」
「それでも、オレは、奏斗に好きって言ってる。奏斗と居たい」
まっすぐな、四ノ宮の瞳。
じっと、その瞳を見てたら、オレが持ってる、強い不安の意味が突然分かった。視線を落として、一度唇を噛みしめた。
それからゆっくり四ノ宮を見上げて、唇を解く。
「……オレ、四ノ宮と住む世界が違うとか色々思うし……四ノ宮は、オレと離れた方が幸せかもって、思う気持ちもあるし……言ってたこと全部に、嘘は、ないんだけど……」
そこまで言って、少し、黙って、考える。
四ノ宮が、そっとオレの頬に触れた。促されるみたいな優しいその触れ方と瞳に、ふ、と心の中の頑なな気持ちが溶けるみたいで。
何を言っても、四ノ宮なら聞いてくれる気が、して。
ちゃんと言いたいって、思った。
「でも……オレ、まだ、トラウマも、あったんだと思う」
もう一度唇を噛んで、それから、まっすぐ、四ノ宮を見つめた。
「……いつかまた、男じゃ無理って……四ノ宮にも言われるのが怖いって気持ちがあったのかも」
「――――」
「それで、離れようって言った、のかも……って……今、なんか急にそう思った……」
黙ったまま、じっとオレを見つめる四ノ宮。
今までどんな時も、ずっと、オレをまっすぐ見つめてくれてた瞳。
最後に別れた時、初めて逸らされて。すごくすごく、胸が痛かった。
「……ごめん、四ノ宮」
オレは、四ノ宮を、見つめた。
数秒見つめ合って――――四ノ宮は、ふっと瞳を緩めた。
「ごめんって何? ……何で謝るの?」
「いつか、無理ってお前に言われるの怖くて、逃げたんだと思う、から……ごめん」
そう言うと、四ノ宮は、ん……と考えて、オレを見つめた。
「……大丈夫だよ」
「……?」
「オレと居れば、そのトラウマ、絶対なくなるから」
四ノ宮は、ふ、と笑って、そんな風に言う。
(2023.11.14)
235
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡
感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷
投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。
Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡
感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷
投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。
Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵
お気に入りに追加
1,673
あなたにおすすめの小説
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中

もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる