【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

文字の大きさ
上 下
469 / 556
未来

「嫌な理由」*奏斗

しおりを挟む

「ごめん、重かったよね。ありがと」
「平気だよ。オレ力はあるから」

 言いながら、開いたエレベーターに乗り込む四ノ宮。続けて乗り込んで、四ノ宮の後ろに立つ。四ノ宮が階数ボタンを押してから振り返った。

「ふらふらしない?」
「平気」
「顔赤いのもとれたかな?」

 顔を見られて、「大丈夫そうだね」と笑われる。
 近くで顔を見ると――――ドキ、とする。

 好きな気持ちは、なかなか消えなそうだなと、もう諦めが入ってきた。このまま、諦められるまでは、心の中だけで好きでいれば、いいかな……なんて思う。

 エレベーターを降りて、四ノ宮の部屋の前。
 久しぶりに話せて良かったな……もう少し話したかったなと思いながら。もうついてしまったので仕方なく、じゃあね、と言いかけた時。

「あ、奏斗。おみやげ、貰ってって」
 四ノ宮にそう言われた。

「え。いいよ、おみやげなんて」
「奏斗のために選んで来たんだから、それ位貰ってよ」

 鍵を開けて、中に入りながら、ドアを開けてくれている。

「玄関で待ってて。すぐ持ってくるから」

 仕方なく、玄関の中に足を踏み入れると、四ノ宮が靴を脱いで部屋に入っていく。少し待っていると、何やらたくさん抱えて戻ってきた。

「何その量……」
「お菓子とか、美味しかったコーヒーとか、ナッツとか、あと、いい香りのハンドクリームとか……向こうで使っててよかったもの、買ってきた」

 あれこれ、次々に渡される。

「何でこんなに……いっこで、いいよ」
「だってオレずっと奏斗のこと考えてたし。これいいなーとか、食べさせたいなーとか全部買ってきた。とりあえず貰って?」

 そんなこと言ったら、オレも、四ノ宮のこと考えて、おみやげ買ったっけ。でもオレはこんなには買ってないけど。買いすぎ……。

「持てないってば」
「紙袋持ってくるから、待ってて」

 オレが受け取りきれなかったものを玄関マットの上に置いてから、また中に入っていく。

 もう。何なの。そう思いながら、俯いてしまう。

 狭い、二人きりの空間が、なんだかすごく、苦しい。

 会わない間に、好きだと思い知らされて。
 さっき顔を見た瞬間に、こんなに好きだったんだと思って。

 さっきから四ノ宮がオレに話しくれてたことは。
 すごく、嬉しいなって感じることで。

 真斗が言ったみたいに。好きってただ言えたらいいのに。
 そうも思うのだけれど、でもやっぱり、たくさん考えて出した結論は、変わりそうにない。

「お待たせ」

 四ノ宮が戻ってきて、オレの手からお土産を受け取って、紙袋に入れていく。

「そんなにたくさんもらえないよ……」
「いいじゃん、おみやげくらい。要らなかったら捨てて」

 ……捨てれるわけないじゃん。
 
「分かった。……もらう。ありがと」
「うん」

 紙袋を下に置いて、さっき置いていったおみやげも中に入れてる四ノ宮を見ていたら。
 最後にこれだけ言いたいな、と思って、オレは口を開いた。

「あのさ、四ノ宮」
「ん?」

「オレ、和希のこと、そういう意味で好きじゃないよ」
「――――」
「その勘違いは、ちょっと嫌、かも……」

 これだけ言って帰ろう、と思って。
 だって、すごくすごく、嫌だったから。この先もずっと、オレが和希を好きって、四ノ宮に思われていたくなかったから。
 そう言った。
 
「――――それ、何で嫌なの?」

 四ノ宮が、下を向いたままそう言った。
 ……何で嫌か。何で……?

「……誤解、だから?」
「別にいいじゃん。オレが誤解してようが。奏斗にはもう関係ないでしょ」
「そう、だけど」
「奏斗が和希を好きでも、だれを好きでも、オレにも関係ないよね?」

 その言葉に、何も返せず、詰まる。
 確かにそう、だけど。
 そう、なんだけど。

 だって、四ノ宮に、そう思われていたくなかったから。

 でも……そっか、これ、言っちゃダメなやつか。
 
「そう、だよね。今の言わなくて良かったかも。ごめん」

 関係ない、と言われた言葉が、何だか心に突き刺さって。
 涙が出そうなんだけど、なんとか堪える。

 ……泣かない、絶対。オレが、これを選んだんだから。泣く権利なんかないし、四ノ宮にバレる。


 静かに息を吸う。




しおりを挟む
🧡💛💚💙💜💚🩷🩵
お読みいただき、ありがとうございます♡
🩵🩷💚💜💙💚💛🧡

感想やリアクションが、色々な意味で、作品への後押しになります。
なにげないひとつの「ぽちっ」が、私のやる気も後押ししくれています(´∀`*)ウフフ
いつもありがとうございます🩷

投稿サイトが増えてきて全部でお知らせとかが大変なので、
Xでまとめてすることが多いです。

Xノベルとか、短いBL創作とか、これから色々していこう~と思っているので、
フォロー&応援お願いします🩷 
🩵「悠里のX」こちら✨です🩵

感想 331

あなたにおすすめの小説

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

どうやら俺は悪役令息らしい🤔

osero
BL
俺は第2王子のことが好きで、嫉妬から編入生をいじめている悪役令息らしい。 でもぶっちゃけ俺、第2王子のこと知らないんだよなー

悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、自らを反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)

【完結】捨ててください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。 でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。 分かっている。 貴方は私の事を愛していない。 私は貴方の側にいるだけで良かったのに。 貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。 もういいの。 ありがとう貴方。 もう私の事は、、、 捨ててください。 続編投稿しました。 初回完結6月25日 第2回目完結7月18日

処理中です...