【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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未来

「そんな風に」*奏斗

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 オレが、後ろで俯いていると。
 四ノ宮は、静かな、優しい声で話し続ける。

「最初はオレはゲイじゃないと思ってたし、手を出したりしちゃだめだって思っててさ。奏斗が薬を飲まされて連れてったホテルだって、結構長いこと我慢してたんだよ。我慢しないと、ヤバかったし」

 ……ほんとそれ、ごめん。なんて謝ったらいいかすら、よく分からない。
 もう、消え入りたい気持ちで、何も言えずにいると。

「言っとくけど、こうなったの、そのせいじゃないからね。きっかけだったかもしれないけど、オレが奏斗を抱くって決めた時は、もうずっと居るって決めてたし。それだけの気持ちはあったから」

 ずっと居るって。決めてたって。
 ……なんか本当に、胸が痛い。

「恋人が出来たら引くって線を引いたのは、奏斗が、誰ともそうならないって言ってたってからだしさ。……あの時、好きだから抱くなんて言ったら、奏斗、断固拒否したでしょ? それに、オレの好きも、はっきり自覚したのは結構後だったし……――――だからね。偶然とか勘違いとかじゃなくてさ。オレは、奏斗が思ってるよりずっと、奏斗のことばっか考えて、ここまできたんだよ。たまたまが重なったとか、勢いで抱いて勘違いしたとかじゃ、ないよ」

 優しい声。……そんな風に、思っててくれたんだ。
 ……思わず、ぎゅと瞳を閉じる。 

 四ノ宮は一度立ち止まって、オレを背負いなおした。
 
「あ。重い、よね……降りるよ」
「平気。さっきふらふらしてたし、マンションまで行く――――でもごめん、もうちょっと、前に腕まわしてくれる? その方が楽」
「……」

 おぶってもらってるオレが嫌がるのも変だと思って。そっと、四ノ宮の前で、腕を組んだ。
 抱き付いてるみたいで。――胸が、うるさい。

 そのまま、少し黙ったまま、揺られていたら。

「でもオレ、奏斗のこと、ちゃんと、諦めなきゃって思ってる」
 
 不意に言われた四ノ宮の言葉に、オレは硬直。
 うるさかった胸は、急に、強張った気がした。

 なんだか、キーンと耳鳴りがするみたいな感覚。……何これ。つか、今更なのに。
 諦めるも何も、オレはもうとっくに断って。ずっとそのままで。もう終わったことの筈なのに。

 血が冷えて。……冷たく震えそうな手にきゅ、と力を入れる。

 頭の中が真っ白になる。

 自分が離れようって言ったくせに。
 諦めるって言われて、ショックを受けるなんて。意味が分からない。


「――――奏斗、和希と、より戻した?」

 え。

 和希と? 和希とよりなんか戻さないけど。
 なに、言ってんだろ、と、引き続き頭の中は真っ白。

「和希に会ったって日に急に、オレに無理って言ってきたからさ。――よりを戻すつもりか、戻さなくても、やっぱり好きだって思ったのかなって。だからオレ、諦めなきゃって、思ったんだけど」

 
 ――――四ノ宮、そう、思ってたのか。
 それで、あの時も、ひいてくれたのかな。






 

 
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