466 / 551
未来
「四ノ宮の背中」*奏斗
しおりを挟む「向こうで家族と二週間、色々話してさ。オレが本気で奏斗を好きだったのは、皆、分かってくれたんだけど……まあ、でももう振られたけど、って言ったらさ。一度振られた位で諦めるのかって聞かれるの。ていうか、うちの家族、いくらなんでも理解ありすぎて逆に不思議でさ……」
四ノ宮がそんな事を言いながら少し笑う。
「親父に、反対しない理由を聞いたんだよね。何でそんななのって。そしたら、奏斗といるオレが、今までで一番素直で楽しそうだったから、とか言われて。……あと、葛城にも聞いたら、側に居るだけで自分を出せて安らげるとか、そういう出会いはめったにないと思う、みたいなこと言われて……特に大翔さんは、とか、言うんだよね……」
クスクス笑ってる四ノ宮に、なんて答えていいか良く分からないまま、聞いていると。
「姉貴も母さんも賛成してて、母さんは、あんなに可愛い息子ができるの?って喜んでたし。つか、振られたけどって言ってたんだけどね、オレ。――――うちの家族ばっかり、その気で……ちょっと笑えたけど」
苦笑しながら言った後、「あ、でも」と可笑しそうに、四ノ宮は笑う。
「一人だけ反対してるんだった。あのね、潤は反対なんだよ。ユキくんは潤のだもんって言ってた。意味分かってんのか知らないけど……オレ達、ライバルらしいよ」
笑う四ノ宮の声が、優しくて。背中から、笑う震動が伝わってきて、なんだかすごく、心に響く。
何で四ノ宮の家族は、そんな風に言ってくれるんだろ。
ほんとにそんなのいいって言ってるのかな。……そんなの、いいわけないのにって、どうしても思ってしまう。
「奏斗があの時言ってたことなんだけどさ――――始まりからおかしくて、変に関係持って、一緒に居すぎたから勘違いしたって言ってたじゃん? あれね、色々違うんだよね。オレが奏斗を意識したのはもっと前でさ」
何だろう。もっと前。
あれより前ってなると、全然絡んでなかった頃になるけど……。
「随分前に、ゼミ室で奏斗が相川先輩達と話してるのを聞いちゃったんだけど……オレのこと、ほんとに王子かって疑うみたいなこと言ってたんだよね。何でそんなに話もしてもないのにバレたんだろうって、ほんと驚いてさ。……それから、奏斗のこと、ずっと気になってて」
ああ、それ……聞かれちゃってたんだ……。
心地よく揺られて、重くないかな、なんて思いながら、四ノ宮の声を聞き続ける。
「それから、奏斗のゲイがバレたホテルね。これ、ずっと言えなかったんだけど。……ひかないでね?」
「……うん?」
「あの時、ほんとはクラブを出るところで奏斗を見かけたんだよ。それはほんとに偶然だったんだけど……奏斗をっていうか、すごく奏斗に似た奴って思って……それが男と並んで出て行くのを見て、オレ、わざわざついて行ったんだよね。偶然ホテルの部屋の前で会ったんじゃなくて、クラブから後をついてって、その二人が取った隣の部屋を取って、急いで後を追ったんだ。あん時は、オレのことを疑うような先輩が、男とホテル行くとか信じたくなくて。違うって確かめたくて、ついてったつもりだったんだけど……」
言って、四ノ宮は、クッと笑った。
「おかしいよね、普通そんなんでついて行かない。……今思えば、やっぱりオレ、奏斗のことが好きだったのかも。ホテルで会った後、協定結んだ時もさ、素のオレのことを四ノ宮らしい、とか言っちゃうしさ。……オレにとっては、多分最初から特別だったんだと思う。だから、別に、一緒に居たから勘違いして、特別になった訳じゃないんだよ」
四ノ宮は、ホテル、オレについてきたの? 偶然、じゃなくて……?
――――何だか、考えがまとまらない。
「――――……」
……四ノ宮の背中は。
こんな気持ちの時でも。
……すごく安心する場所で。
つかまる振りで少しだけ、四ノ宮の服を握り締める。
100
お気に入りに追加
1,593
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そばにいてほしい。
15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。
そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。
──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。
幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け
安心してください、ハピエンです。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる