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未来

「幸せ」*奏斗

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「それに、絶対カナも、四ノ宮さんのこと、好きだし」
「……何で」

「だからカズくんのこともふっきれたし、父さんと話す気にもなれたんだろうし。四ノ宮さんが居てくれて、良かったね」
「――――それは……うん。そう思う」

 真斗には嘘がつけず、枕をぎゅーと抱き締めながら、そう言って、頷いた。

「そういうどうしようもないことが気になってしょうがない、カナみたいな人って……何も考えず、突き進んではいけないの?」
「――――もう、付き合えないって断って……突き進むの、やめちゃったからね」

「つか、いいの? それで」
「いいのも何も……それしかないと思ったし」

「いっぱい選択肢あるのに。カナ、自分の気持ち、大事にしなよ」
「真斗って、オレのお兄ちゃんだっけ……」

「カナって、恋愛に関しては、臆病すぎなんだよ。あ、それ以外のところは、なんとなく、カナがお兄ちゃんだよ?」
「なんとなくって……」

 もーいいよ、と苦笑しながら、仰向けに転がった。

「四ノ宮を幸せに、できたら、良かったんだけど」
「……もーカナ!」
「え」

 がば、と起き上がった真斗に、両頬に手を当てられて、ぶにっと潰される。

「ぁにすん……」
「カナが幸せになれることをしてよ。四ノ宮さんをとかじゃなくてさ。……ていうか、カナが幸せで、そしたら相手も幸せっていうようなのが絶対イイから!!」
「――――ん」

 じっと真斗と見つめ合って、言われたことを考える。

 ――――オレが幸せで、そしたら、相手も幸せ、か。

 うん、と頷くと、真斗の手が外れた。二人で布団の上に起き上がると、「カナはほんと、恋愛ももっとポジティブに、だよ」と、ちょっと怒られる。

「イイこと言うね、真斗」

 なんか本当にそう思ってしみじみ見つめてたら、真斗は呆れたように苦笑い。

「もーほんと……かわいそ、四ノ宮さん」
「え?」
「ゲイじゃないに、カナのこと好きになってくれて、好きって言ってくれたんでしょ? なのに、カナの方は好きなのに離れるとか。オレなら意味わかんないし。……あ、まさか好きって言ってないの? もしかして」
「言ってない」

 オレが言うと、真斗はがっくり項垂れて、それから、また仰向けに転がった。

「あのさあ……カナ」
「ん」
「もう今から行って、好きって言って、まだ好きで居てくれたら、付き合っておいでよ」
「できる訳ないし」
「なんでだよ」
「……できないよ」

 膝を抱えて、そのまま、膝に顎を押し付けていると、真斗は苦笑い。

「四ノ宮さんの電話番号教えて」
「無理」
「何でだよ」
「かけるでしょ」
「当たり前!」
「だめ」
「もー……じゃあ自分で言いなよ」
「……言わない」
「何で?」

「……だって、四ノ宮、幸せにできる気がしないから」
「だから……」

 そこまで言って、真斗は、はあ、とため息をついた。

「カナに、幸せになってほしいからね、オレ」
「ん。ありがと」

 ふふ、と笑って、「オレも、真斗に幸せになってほしい」と言うと、真斗は「それはこっちも一緒」と苦笑。

「考えすぎて、幸せから逃げるようなこと、しないようにね」
「――――ん……」

 ほんとどっちが兄かわかんないなと、オレは苦笑しながら、頷いた。





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