【初恋よりも甘い恋なんて】本編完結・番外編中💖

悠里

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未来

「真斗の推し」*奏斗

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 それから一時間後。
 シャワーを浴びて、真斗の服を借りて、並べて敷いた布団に、二人で寝転がった。
 しばらくは、バスケのこととか、他愛もない話をしていたのだけれど、ふと、真斗がオレを見つめた。

「……なー、カナ」
「ん?」
「カナの好きな人ってさ、もしかして四ノ宮さん?」
「――――」

 ぴき。と全身固まるのが分かった。

「何で?」
「あの人が、カナの隣にいてくれたらいいなって思ったから。半分願望込み」
「てか、そこまで知らないでしょ」
「まあそうなんだけど。……オレさ、四ノ宮さんと電話で話したことあるんだよ。少しだったけど」
「四ノ宮が電話に出てくれた時?」
「そう。あん時、オレ、カナって心配なとこあるのでお願いしますって言ったんだよね。はっきり、大丈夫、て、言ってくれてさ」
「――――」

「なんかさ。その大丈夫、がすげえ安心したというか……」

 はは、と笑って、真斗がオレをじっと見つめる。

「違うの? 四ノ宮さんじゃない?」

 嘘ついてもしょうがないか、とオレはため息をついた。

「好きって、言われて……オレも、好きだと思ったんだけど」
「じゃあ、両想いじゃん」
「でも、断って、今はもう、会ってない」
「は? 何で?」

 嬉しそうな顔をした真斗は、眉を顰めて、首を傾げた。

「住む世界が違いすぎて。あとオレ達、出会いとか色々がちょっと特殊すぎて」
「はー? よくわかんね。別に特殊だっていいじゃん」
「オレも、もう良く分かんないけど」
「すげーもったいない気がする」

「……言わないでよ」

 は、とため息をつくと、真斗は苦笑い。

「後悔してんなら、カナから行けば?」
「――――無理。後悔は、してないし」
「後悔してなくても、もったいないとは思ってる?」
「もったいない、っていうか……」

 適当な言葉が、見つからない。なんだろう。

「もっと、普通に出会ってて……四ノ宮がもともとゲイで……あんな、ドラマに出てきそうなお金持ちの跡取りじゃ無かったら、よかったなーて思うけど。でも、そこは変えられないから、もう絶対、無理なんだよね」

 真斗は、うーん、と唸っていたけど。

「跡取りかぁ。反対されそうってこと?」
「……いや。……お父さんが、二人が本気なら考える、とか言ってくれて」
「え、じゃあ良いじゃん。うちの親父みたいに、難攻不落だったら、厳しいけど」

 はは、と笑いながら言って、真斗は、じっとオレを見つめた。

「カナはさー……多分、カズくんのことがあったから、色々考えすぎなんだよ。ていうかもともとな気もするけど。いいじゃん、考えないで、好きだって言っちゃえばいいのに」
「……そうできたらいいのにって、思ったよ」

 枕にぽふ、と沈み込む。すると、仰向けになった真斗が、んー、と唸りながら。

「出会いと、もともとゲイじゃないのと、跡取りってことがダメなの?」
「……うーん……そこ、おおきいよね?」
「んー……まあ、そう、なのかな」

 そう返した後、真斗はちょっと黙ってる。

「ああ、でもあれか、カナ」
「ん?」

「四ノ宮さん自身は、好きってこと、だね」

 ぐ、と言葉に詰まる。

「真斗くん」
「……ん?」

「……まっすぐに、それだけつきつけんの、やめて」
「――――めんどくさいなぁ、カナは」

 苦笑いとともに、大きなため息をつかれる。

「好きなら好きでいいじゃん。それで付き合って、ダメになったらダメになったでいいじゃんか。好きな人には、好きって言った方が絶対いいよ」
「うわー。……なんか、眩しい、真斗……」

 オレの弟ってば、キラキラして見えますけど。
 そんな風に言われてしまうと、オレがバカみたいに思えてくるけど。

「オレは、四ノ宮さん推しで」
「……もー。真斗が、四ノ宮と直接近くで会ったのって、最初の時だけじゃないっけ?」
「そーだよ」
「……顔覚えてる?」
「んー。超カッコよかった気がするけど。後は観客席で遠くから見たかな。見れば分かると思う」
「……あだ名、王子だよ」
「分かる」

 真斗は、クスクス笑ってから、不意に真顔になった。

「オレの応援にまで来てくれるとかさ、普通しないよ」
「……まあ、あの時は色々事情があった、っていうのもあるけど」

 最初は、あの、ホテルでやらかした翌日だったんだっけ……。

「あんな風に応援してくれてさ。嬉しかったから。やっぱり、オレは、四ノ宮さん推し」
「――――」

 弟のまっすぐな言葉に、なんだか言葉を奪われてしまう。



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